米国長期金利の上昇がもたらすもの
米国長期金利の上昇が継続しております。10年物国債が昨年8月に0.5%台のボトムを付けた後、2021年の年明けには1%台を回復し、3月初めには昨年2月以来の1.5%台に乗せております。バイデン政権誕生だけではなく議会も含めトリプルブルーとなり、1.9兆ドルの財政出動の予算案を下院議会で通過させ、3月中旬にも上院でも承認してしまう勢いです。需給ギャップを大幅に上回る財政出動で、市場がインフレを懸念し出した現れ、IT企業を中心に株式市場は大揺れです。
2021年2月分の雇用統計で景気回復が確認されたとはいえ、景気拡大時においては必ず金利上昇が伴いますので、それほど懸念する必要はないと言われております。野口悠紀雄先生もツイートしていますように、重要なのは「これが実質金利の上昇なのか、それとも期待インフレ率上昇に伴う名目金利の上昇なのか」の区別です。後者なら株価に中立的なはず、実質金利の上昇なら、株価を下落させる。
そもそも巨大IT企業群の株価は、「全面在宅勤務」で極めて楽観的でした。2月中旬のピーク時の株価からすでに10%前後下げておりますし、あと5-10%程度調整があれば前年程度のバリュエーションにまで戻すことになりましょう。過熱感が和らぎつつあるのです。
気になるポイントは新型コロナ対策、等で積み上げてきた連邦政府債務残高の急増です。米連邦政府の2020年度の財政赤字は3.1兆米ドル(@108円=340兆円)と、トランプ政権初期の2016年度の5倍(2019年度の3倍)にまで膨らんでおります。GDP比の債務残高は第二次世界大戦直後の水準まで積みあがってしまいました。バイデン政権になり拍車が掛かる見込みですので、米連邦政府としては積み重なる政府債務を帳消しにできるインフレ誘発は歓迎でしょうから、米連邦準備制度理事会の金融政策が新型コロナからの「景気回復」重視で、今は「インフレ退治」を二の次にしているのは、やや懸念材料と言えましょう。そろそろ政策転換が必要なタイミングになってきたかもしれません。
米連邦政府の積み重なる債務に対する嫌気が原因なのか、量的金融緩和で金余りが原因なのか、暗号資産に対する投資が活況を呈しております。一方で米国はまだまだ新型コロナ感染者数は日本に比べて大変多い状況であるにも関わらず、感染対策/経済回復のステージが日本よりも速いテンポで前に進んでいるのは、すでに米国では予防ワクチン接種が幅広く普及しているためかもしれません。友人・知人はすでに2回目の接種をしたとか、ファイザーよりモデルナは高い確率で副作用があるとか、ミリタリーは50%超が接種済であるとか、予防接種できるという気配を未だ感じない日本から比べると天と地の差がありそうです。日米差を考えれば、為替相場で調整できるステージも何れ終わりが訪れ、日本の金利上昇が景気回復する前に経済情勢を腰折れさせはしない、筆者は懸念しております。
(本記事の内容は筆者個人の分析・見解です。)
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