カモミールとアーウィン・ショー
もう4年も前になるのか、『風に吹かれても』のリリース。
カップリング、青空とMARRYの『波打ち際を走らないか?』は、秋になれば必ず聴く曲だ。
夏から秋に変わるように、あの盛り上がりが嘘のように全て過ぎ去ってしまったようで、1年前の秋は例年よりも一段と寂しいものであった。
あれから1年経って、すっかり、櫻の木は街に馴染んできた。
欅の木はもうそこには無い。目を閉じて、想像するしかなくなってしまった。
それでも、櫻越しに空を見上げる人がいることを、私は喜ぶべきだと知っていた。
その青空が違うものであっても。
欅坂46の最年長、渡辺梨加。
欅坂46の副キャプテン、守屋茜。
私の中でぺーちゃんは柔らかなピンク、ねんさんは深い赤のイメージがある。どちらも暖かな色だ。
その暖かさは時にグループを包み込み、時に和ませ、時に華やかさを与えた。強くて、脆くて、美しかった。
いつ失うかも分からない美しさが、当然のようにそこにあること。2人は安心感や安定感をも併せ持っていた。いつだってそこで、当たり前かのように咲いていた。
LARMEの時のぺーちゃんがすごく可愛くて素敵だったな。ananのあかねんがめっちゃ綺麗だったの忘れられない。
新しい写真が上がる度に、溜息が出るほど美しい2人を見ることができて。
画面の割れたスマホで何度もその姿を眺めては、大切に保存した。
饒舌な眼差しで訴えかける、深い海の底のような、無限に広がる星空のような、静かに心に入り込むメッセージ。
力強く訴えかける、ゆらゆらと燃える炎のような、眩しい陽の光のような、いつの間にか潜在意識にまで刷り込まれているメッセージ。
ぺーちゃんはね、やっぱり『キミガイナイ』のパフォーマンスが好きかな。『エキセントリック』のMVで踏切に立ってるシーンも印象的で好き。『徳山大五郎を誰が殺したか?』の演技も。
ねんさんは、『不協和音』の時のパフォーマンスが好き。『世界には愛しかない』のセンターも好きだけど。『二人セゾン』のMVの落ちサビ前の表情も好き。『誰がその鐘を鳴らすのか?』ももちろん大好き。
今はもうここにない足跡だ。海も炎も星も太陽も、不変ではいられない。姿を変え、場所を変え、また新たな美しさを刻むのだろう。
メンバーを笑顔にしてくれる2人が大好きだ。
けやかけ。ぺーちゃんのエスカルゴの食レポ、ツッチーとのアテレコのくだり、セゾン期の連帯責任ゲームでのビリビリボールペン。ねんさんがチームのリーダーを務めた大運動会、リレーで負けて大号泣、アイドルらしい笑顔を見せる流れで映った真顔。
常にキャラクターが崩れることなく、期待にちゃんと応えてくれる。
2人がいたからいつもどこかほっとした気持ちで観ていられたし、楽しそうなメンバー達を見られた。
でも少し油断をし過ぎていた。初めて見た時、思わず息を飲んだその美しさと、キラキラした感情と、ドキドキとしたトキメキを。
走れば、思い出すだろうか。
波打ち際を走らないか?きっとこの砂浜に来れば、いつだってあの頃と変わらないまま、大好きだって分かるから。
カモミールは買ったし、アーウィン・ショーは返した。
だからもう、いつでも送り出せるよ。
ぺーちゃん、あかねん、今までありがとう。
これから先も、その綺麗さと素直さを感じられますように。