野球IQとは
野球IQと聞くと、皆さんはどのようなことを思い浮かべますか。
考える野球のこと。
データを活用した野球スタイルのこと。
それとも、ベースランニングが上手い事、中継プレイが上手い事、ヒットエンドランが得意なひと?
もしくは、投げ方が綺麗な人、スイングが綺麗な人の事??
など、パッと想像できることは幾つかありますが、「これだ!」思い浮かぶものはないのではないでしょうか。
本記事では、これまで考えることや、想像したりすることが少なかった野球IQについて考えていきたいと思います。
IQの意味
そもそもIQという言葉を正確に認知している方はどれくらいいるのでしょうか。
IQとは?
英語で言うと、 Intelligence Quotient
日本語で言うと、知能指数
IQは数字で表した知能検査の結果の表示方式のひとつです。(Wikipedia参照)
IQを測定できるIQテストもあり、IQが高い人ほど、頭がいい、天才と言われることが多く、逆に低いと知的発達が遅れていると判断されることもあります。
実際にIQは点数化され、以下のように点数によって、分類されます。
・IQ110以上:知的発達が進んでいる
・IQ90〜110:普通
・IQ90:知的発達が遅れている
などがあると思います。
上記で一般的なIQの意味が、ある程度わかったと思います。
野球IQとは
改めて野球IQが高いとはどういうことなのかを紐解いていきます。
一般的なIQの意味から、
速い球を投げることや、打球を遠くへ飛ばすといった能力は野球IQが高いという意味に当てはまらないことがなんとなくわかると思います。
速い球を投げる、打球を遠くへ飛ばす、強肩、足が速いなどは身体的能力で、ミート力がある、選球眼がいい、グラブさばきが上手い、スイングフォームが綺麗などは技術的能力になります。
野球IQについて話す前に、この問題を考えてみてください。
正解は、後者です。
投球が大暴投になり、ランナーが余裕で進塁できる場合は無理してボールを打ちにいく必要はないです。またはランナーがピッチャーのモーションを完全に盗み、進塁ができる場合は無理にバットを振りにいく必要はありません。
そもそもヒットエンドランで、完全にモーションを盗むということはあまりないと思います。
実はこれも野球IQが高いかどうかに繋がる話です。
ヒットエンドランの場合、バッター優先になり、ランナーは盗塁する気持ちでスタートをする目的のサインではないからです。
試合状況によって、サインの内容や出すタイミングなどが変わってくるので、ベンチ側の采配に伴う意志やそのサインの意図なども野球IQに関係し、野球IQが必要になってきます。
さて、この問題の解説で少しわかったかもしれませんが、
野球IQとは、状況を理解し、次に何をすべきなのかを無意識のうちにできている人が野球IQが高いと言えることになります。
※野球IQを発揮するのは試合に限ります。(実践形式の練習も含む)
先ほどの問題では、主にランナー(走塁)と打者についての野球IQでしたが、打撃、守備、走塁のそれぞれで野球IQが高いといえる内容についてブレークダウンしていきます。
野球IQが高いと言われるには、全ての項目において、IQが必要です。
打撃における野球IQとは
まずは打撃IQからみていきます。
優れた打者になるには、1試合の全ての打席の中で、相手へ影響を与える全ての要素を認識し、打席に立つ必要があると考えます。
また、常に意識すべき要素もいくつかあります。
特に打撃はランナーがいるときにIQが試されます。
例えば、ノーアウトランナー三塁で前進守備の状況で考えてみましょう。
三振と内野ゴロを避けたいという状況の打席では何を考えるべきでしょうか。(今回はわかりやすくするために、イニング、打順などのその他の要素は除外します)
打席の中で1点を確実に入れたいと考えた時に、外野フライ(犠牲フライ)を打つか、内野の頭をこえるヒットを打つかと考えます。
上記を打つために、まずは追い込まれるまでは低めを捨てます。そして、速球系の内角の球は捨てます。
なぜなら、低めはフライが打ちづらく、ゴロになりやすい、速球系の内角の球は詰まる確率が高く、内野をこえるヒットが打ちづらいという理由からです。
2ストライクに追い込まれるまでは、高めに絞り、振り遅れや詰まらないタイミングで待つように意識することが重要です。
このように状況を理解した上で自分が何をすべきか、どのように考えるべきかを無意識にまたは意識的にできていることが野球IQが高いといえるのではないでしょうか。
守備の野球IQとは
次は守備のIQをみていきます。
本来は各ポジションごとで、役割や考え方が異なるので、一つ一つ見ていきたいのですが、かなり長くなってしまうため、今回は部分的にみていきます。
改めてになりますが、捕球するのが上手い、送球が良いというのは技術的スキルなので、IQとはあまり関係がありません。
優れた守備能力を発揮するためには、相手チーム、相手の打者データを頭に入れておく必要があります。
事前に入れておきたいデータ項目
更に細かいデータ項目になると
+アルファで入れるなら、球場の大きさや形でしょうか。
ここまでくるともうプロ野球の世界になってきますが、アマチュアでデータ量が少ない状況でもある程度は入れておきたい項目でしょう。
ここから例をあげていきます。
ランナーなしの状態で、ショートを守っているとします。三遊間に深いゴロの打球が飛んだ時、送球をしてもアウトかセーフのギリギリのタイミングの時は、1塁手の身体が一番伸びやすい低い送球をしないといけません。
また、ギリギリのプレイをした時はボールがしっかりと握れていない時があるので、その場合は無理にノーバウンド送球をせず、ワンバウンドで早く正確なスローイングをする必要があります。
このように一瞬で判断をして、プレイをしないといけないため、事前に想定しながらプレイができないと、優れた選手になれないでしょう。
野球をわかっている選手だと、当たり前で基本中の基本ですが、スローイングのカバーリングなどの動きは野球IQの指数に反映されるべきでしょう。
強豪チームでプレイ経験がある選手は動きが染み付いてるので、カバーリングができていますが、そうじゃないチームの選手はたまにカバーリングに入ってなかったり、中継プレイでも動きがわかっておらず、自分が守っていたポジションにいたままで動かないという光景をよく目にします。
特に草野球だと理解してない方が多いように思います。
送球のバックアップで野球IQが最も高いと思ったプレイをご紹介いたします。
元ニューヨークヤンキースのデレク・ジーター選手のプレイです。
ぜひ動画でチェックしてみてください。
野球IQが必要な挟殺プレイ
挟殺プレイ時も野球IQが試されるシーンです。
ここで問題です。
まず、三塁ランナーを本塁へ返さないことです。
そして、次に一塁ランナーをできる限り、一塁または二塁までに留めないといけません。
そうなった場合、三塁手のあなたはすぐにタッチをして、アウトにする必要があります。
簡単にタッチアウトできればいいですが、走者の足が早く、追いつけないとなった場合(ここでも走力を頭に入れておかないといけません)、すぐに本塁側、キャッチャーに投げる必要があります。(本塁側への追い込みが長くなると、失点と一塁ランナーが次の塁に行く確率が上がるからです)
三塁側に追い込みながら、一塁ランナーの動きも注視し、すぐにタッチしてアウトができるタイミングで送球する必要があります。
三塁手のあなたはすぐにタッチができるように捕手が送球するギリギリのタイミングでランナーに近づくように走り出し、タッチをする。
すると、一塁ランナーを二塁で止められ、次の失点確率も下げることができます。
このラリーが多くなる、または本塁側での追い込みが長くなると、一塁ランナーも三塁まで到達する可能性が高くなるので注意する必要があります。
本番でこのプレイができるようにするためには事前にプレイを想定し、イメージしておくことと、実際に挟殺プレイの練習が必要だと思います。
もう1つ例を挙げます。
打者のスイング軌道、タイミングを実際の試合で見ることです。
できれば、ネクストバッターズサークルから動きを見てほしいです。
この打者は、前の肩や、腰の開きが早いなとか、どういうことを意識して素振りをしているのかなどです。
それによって、ポジショニングを変えたり、一歩目が切りやすくなったりします。
意識するだけで全然変わってきます。2ストライクから、タイミングの取り方を変える選手もいますので、そのような選手は2ストライクからはコンタクト率を上げるようなタイミングの取り方をしてきますので、外野手は前進する意識を持つといいでしょう。内野手は低い打球、ゴロの打球を意識をすると良いかもしれません。もちろん絶対はないので、あくまで想定や意識を持つことという意味です。
※2ストライクに追い込まれたら、足の上げ幅を変える選手が多いです。
巨人の坂本選手やカブスの鈴木誠也選手がそうしてます。他にもたくさんいると思います。
たまに、バッテリー間のサインが終わった後に守備位置を変える二遊間の選手がいますが、打者から気付かれて、投げようとしているコースや緩い変化球系と気付かれてしまうので注意が必要です。
私が打者の時にそのような動きをする選手は野球IQが低いなと思います。
走塁の野球IQとは
さてここからは走塁についてみていきます。
打撃、守備と同じように優れた選手と言われるには走塁力も重要です。
そして、同じように事前にデータを頭に入れて整理しておくと良いでしょう。
事前に入れておきたいデータ項目
あとは状況によって、走塁の判断が変わってくるので、アウトカウント、イニング、点差は必ず頭に入れておかないといけません。
走塁で最もIQが必要になるのは打球判断ではないでしょうか。
その次に、野手からボールが離れた時、スローイング、ボールを弾いた距離だと思います。
打球判断で特に難しいのは外野フライで自分の背後に打球が飛ぶ時でしょう。
野手の追い方が見れない、打球に追いついたかどうかも自分の目で見るのが難しいので、打った瞬間の打球速度や角度を見て、行く行かないを判断したり、相手の守備位置と打球を見ながら判断していく必要があります。
※目視はできる限りする必要があります。
仮に打球をしっかり見て判断してしまうと本塁まで行けた打球でも三塁止まりで1点がとれなかったということが出てきます。
まさにこのような判断がIQの差に繋がるように思います。
※ここについては経験からくる感覚論も必要だと思います。
その他だと、例えば進塁時に次塁のカバーが入ってない場合も一瞬の状況判断で、進塁するかどうかを決めていきます。進塁できるかどうかで、得点期待値を上げることになり、最終的な勝敗にもつながってくるので、とても重要です。
野球を長く経験されてきた方は当たり前の知識かもしれませんが、
野球で流れを変えるプレイはホームランか、走塁です。
好走塁は流れを大きく変えられます。逆にいうと、走塁ミスをすると相手に流れを与えることになり、試合全体に影響します。
「暴走と好走は紙一重」という言葉を聞いたことがあると思いますが、積極的な走塁をし、成功させるためには上述したデータを事前に把握しておくのと、その都度の状況を一瞬で判断をしていくための次のプレイの想定をしておくと良いでしょう。
まとめ
さて、ここまで、打撃、守備、走塁に分けて例を挙げていきましたが、頭を使ってプレイするシーンが野球にはとても多いです。そして、頭を使って判断をするのは一瞬です。
判断をする前のプロセスの精度を上げるためには、野球の全てのことを理解をしておかないといけません。
プロセスの精度、野球の理解を深めるためには仮説思考や仮説を深掘りするための根拠となる経験と活用できるデータが必要だと思います。
状況判断や相手選手、自チームを「見る力」「観察眼」がある選手ほど、野球IQが高いと言えるのではないでしょうか。
私が最後に言いたいのは、野球IQ上げる為には
「とにかく野球の試合を見ましょう」
ということです。
プロの試合、アマチュアの試合を見る回数を増やし、そこで感じたこと、考えたことを、実戦で発揮できるように練習をしていきましょう。
故人になりますが、元ヤクルトや阪神で監督されていた野村克也氏や、元サッカー日本代表のオシム監督はプロ、アマチュアの試合をとにかく見て、状況判断能力を上げていったそうです。
そして、練習では意味のある実践形式の練習に時間を費やしたとのこと。
最後までお読みいただきありがとうございました。
著者紹介
今尾和真
京都成章高校→明治大学の体育会硬式野球部にてプレー。
新卒で大手IT企業⇨RPA⇨SaaS スタートアップ 自身の会社も兼業している。