ホラーに挑む2022 第3回:映画『リング2』感想と考察 ~なぜあまり怖くないのか~

前回チラッと書いた通り、『らせん』とは違う『リング』のもう1つの続編が映画『リング2』です。原作が無い映画オリジナルの脚本であり、監督も『リング』と同じ中田秀夫監督であるため、ホラー路線から離れていく原作『リング』シリーズから乖離したホラー映画になる……はずだったのですが、ぶっちゃけあまり怖くない
急に大きな音と共に何かが映るようなビックリ要素は怖いですが、全体的には全然怖くない。

なぜ『リング2』は怖くない映画になってしまったのか、なにぶんホラーを観た経験があまり無いので考えてもイマイチよく分からないのですが、今のところの自分なりの考えを整理する目的で今回の感想と考察を書きます。(ネタバレありです)

とりあえずまず本作における最大の欠点として考えられるのが、貞子の呪いが何なのかよく分からない点です。
『リング』では観ると7日後に死ぬビデオ、『らせん』ではビデオを観る等することで体内に発生するウイルスという形で明確なルールが存在した貞子の呪い。
『リング2』における貞子の呪いは川尻さんの話や作中の描写を見るに、おそらく主に人を触媒にして伝染する恐怖のエネルギーといった形に変化している模様……多分。

ビデオを全て観た人間が1週間後に死ぬという点は変わらず、『らせん』のような性質の変化は無いためダビングで死を回避できる点も(おそらく)変わらず。
しかし違う点として、『リング』の冒頭で女子高生・智子が死んだ際にその近くでテレビから現れる貞子を見てしまった倉橋雅美と、ビデオをダビングすることで呪いを回避したはずの浅川陽一にもなぜか呪いの能力が移っています。この点に関してはハッキリとした説明はなく、おそらくビデオに関わった人間の中から貞子の霊媒として適している人間にだけ念写や呪殺の力が移るということ……だと思います、多分。

ビデオを観て死んだ沢口香苗を撮ったビデオによって岡崎が呪われる展開なんかは1週間ルールもガン無視しているし、特によく分からないところですね。
本作における呪いの対象がビデオを観た人間からビデオを観た人間に関わった人間にまで拡張されたということなのか、死んでしまったとはいえ沢口香苗も貞子の霊媒だったのか、映画『リング』における智子のように智子ではない何か(=貞子の怨念?)になってしまったのか……。
まあ、よくよく考えれば映画『リング』の時点で死んだ智子や高山が登場する理由もよく分からないんですが。

ともかくこれまで「考える」ホラーであった『リング』シリーズに属していながら、考えてもよく分からない作品になってしまっているのがこの作品の残念なポイントなのだと思います。
単純に怖くないというのもあるとは思いますが、全体的に怖さよりも「なんで?」という疑問の方が頭を占めてしまうんです。

単純に怖くないといえば、本作における貞子自身の描写は途中まで『リング』を踏襲した髪の長い白い服の女性ないし少女として登場していて結構怖かったのに、ラストの粘土人形と化した貞子はビックリするほど怖くないです。造詣がちゃちい上に、映画版『リング』での恐怖演出であるギョロっとした目まで消失しており、観ていても全く怖くありません。

そんなクレイ貞子が高野舞に放つ「なんであなただけ助かるの?」という疑問に対しては「それは視聴者のセリフだよ」と返したいところですね。

またストーリー全体の流れを見ても主人公である高野舞の行動理由が判然としないので、やはり良く分からないものを見せられている気分になります。
最初の内は高山竜司が死んだ理由を知りたいというようなことを言っているものの、ぱっと見ではふらふらと流れに乗って動いているようにしか見えません。途中で陽一を救う(?)という目的が生まれてからも、具体的になぜ・なんのために高野舞がアチコチへ行っているのかが伝わってこず、結局なんだかんだ話の流れでずるずるとストーリーが終わりへと向かっているように感じられました。

怖いシーンが全く無いわけではないんですけどね。一番怖かったのは現実の部屋の中で呪いのビデオのワンシーンが再現される場面で、ここは画面から目を背けたくなる怖さがありました。
しかしまあ、全体的に見れば『リング2』は怖くないし良く分からない映画といったところ。

ちなみにこの後、マンガ版『リング2』も購入して読みました。映画版に無かった補足説明を求めてのことでしたが、映画にない独自の演出こそあったものの、マンガ自体があまりにも短くむしろ映画より説明不足。映画を観てないと理解すら難しいであろう出来でした。

ただ、あとがきでは脚本家の高橋洋がこのマンガの制作体制こそ「脚本家と監督のあるべき関係」だとか、『リング2』のことだとは書いていないものの「しばしば映画における演出は(中略)脚本の字句すら裏切ってしまう」とか書かれており、どうもこの映画の出来は高橋さんの本来の脚本通りには行かなかった模様。ちょっと調べるとそれをうかがわせる会話もありました(参照:[映画.com ニュース]中田秀夫監督、「リング2」製作時の「貞子より怖かった」体験明かす)。

もしかすると『リング2』はもっと怖い映画になりえたのかもしれませんね。

さて映画『らせん』の続編だという『貞子3D』が怖い作品だと(ホラーに挑む企画趣旨的に)嬉しいのですが、噂によると石原さとみが鉄パイプで量産型貞子をはっ倒す映画らしいですし、もしかして映画版『リング』シリーズってどんどん怖くなくなっていくのかしら?

第4回はこちらから!

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