ホラーに挑む2022 第1回:映画『リング』感想と原作との比較

苦手なホラー作品に挑むと宣言してから1か月半。ようやく今年最初のホラー作品に手を付けました。

ホラー苦手な僕が唯一中学生時代から親しんでいるホラー作品が原作小説『リング』シリーズです。初めて小説『リング』を読んだとき、あまりの恐怖に身動きできなくなりながらも先が気になって読み続けたことを覚えています。

そんな『リング』シリーズの映画版1作目である『リング』は僕がこれまで見た数少ないホラー映画の1つです(もう1つは『オーメン』)。これからホラー作品に挑むにあたり、まずは慣れているところから入った方が良いだろうと、改めてこの映画を観直すことにしました。

僕がホラーに関してとりわけ苦手な点が2つあります。1つは大きな音と共に何かが画面に現れるようなビックリ要素。もう1つは逆に何も現れないのにひたすら不気味で静かな雰囲気です。
前者に関してはホラー作品に限らず、MCUのようなアクション作品でもビビってしまうほど。後者は以前ゲーム『バイオハザード』を途中までプレイした際、これが原因で全然先に進められませんでした。

映画『リング』には前者に当てはまる要素もあるものの、どちらかといえば後者寄りで静かな恐怖を感じました。ここに関しては原作通り、いや実写のビジュアルによって原作より怖くなっているかもしれません。

映画と原作の違いに関しては今さら僕が書くまでもなくあちこちで触れられているとは思いますが、気になった点をいくつか。

主人公の性別が男性から女性へと変更された点については、まあ一般受けしやすくなるでしょうし、アリな判断だと感じました。特に井戸のシーンのクライマックスが美しくなっているあたり、良いですね。

高山竜司の設定・性格変更に関しては、僕が原作での高山竜司というキャラクターを好きなこともあって公平な判断がしづらいところですが、良い点と悪い点両方があるように思います。

良い点としてはまず山村貞子の能力に説得力が生まれること。原作とは異なり、高山に超能力じみた力が身に付いていることにより、あの作中世界にはそういった不思議な力があるのだという納得感が得られます。
また本来時間をかけて浅川・高山両名が推理していかなければならない諸々を超能力でスキップすることにより、映画としての時間短縮とテンポ向上に繋がっているのも良い点でしょう。

しかしこの高山が超能力者になったという変更点は(映画的に仕方ないとはいえ)、原作好きからすればあまり好ましくない点でもあります。というのも、原作における高山竜司という男は(少なくとも表面上では)豪胆である性格も相まって、一見オカルティックな呪いのビデオに対し論理的なアプローチで解決を試みる点が魅力なキャラクターだからです。

この論理でオカルトを解決していく構図は高山竜司のスタンスであると同時に原作小説『リング』のスタンスとも言えると思います。
そしてまた、これは僕が『リング』から得た知見にも繋がっています。すなわち多くの人間にとっては「知らないこと=恐怖」なのです。幽霊や呪いといったオカルトなことに限らず、病気や天災などに対する恐怖はそれらを良く知らないために起こります。

古代の人間はそれらを神や精霊と定義づけることで何らかの対処法を思いつき、近現代の学者は様々な観点からこれらを論理的に研究して解決しようとし、陰謀論者は理解しやすい安易な知識から自分なりに納得いくセオリーを編み出します。
手段は何にせよ、そうして「知る」ことで恐怖には対処し得る。これが僕が『リング』と高山竜司から学んだことであり、この点が表現しきれていない点は映画『リング』において寂しく感じるところではあります。(映画的に仕方ないんですが)

それでもそんな不満点を跳ね除けるほど秀逸なのはテレビから這い出る貞子という独創的な表現でしょう。これを思いついただけでこの映画は100点の出来栄えだと言っても過言ではありません。
単にこの映画における素晴らしい恐怖表現となっただけでなく、貞子は今やJホラーの代名詞となり、『リング』シリーズの名も知れ渡り、ついにはゲーム『Dead by Daylight』にも出演するに至るわけです。
原作小説『リング』では貞子が姿を現さないことを考えれば、これはもうひとえに映画『リング』の采配が素晴らしいとしか言いようがないでしょう。

『リング』は映画自体観たこともあって展開を「知って」いたためか、そこまで怖がらずに観ることができました。(それでも途中で休憩を挟みましたが)
続編である『らせん』の映画版は1998年に『リング』と同時公開されたそうなのですが、原作におけるキーとなる呪いのビデオの内容が映画では変更されていることもあり、小説『らせん』の通りには物語を展開させられないはず。果たして映画ではどのような作りになっているのか、映画『リング』の記憶が新しい内に『らせん』も観ようと思います

ちなみに『リング』は中田秀夫監督の作品。中田秀夫監督といえば、つい先日『嘘喰い』がつまらないと書いたばかりなのですが、『リング』は面白かったですね。

第2回はこちらから!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?