世の中の金
よくある話だが、老人は不安から意味不明な金融資産を買ってしまう。私の母もそうだ。変な保険とか、外国通貨とか、妙な投資信託とかだ。
お金に関する事は本当に人それぞれで、これといった正解はないが、誰だって損をしたくない。儲けたいはその次の話で、守りたい、というのが一歩目だ。
100円で買えた牛乳パック一本が、来年はコップ一杯かもしれないとしたら人はお金を価値の違うものと交換してしまおう、となる。土地とか純金とか宝石とかだ。古くから人は知恵を絞ってきた。
金融商品もその一部だが、中には知恵を絞り過ぎて、何で儲かるのかわからないようなものがある。儲かるシチュエーションがとても限定的とか、これは老人を騙すために作られてないか?と思うようなものすらある。
数年前まで銀行がすすめる投資信託は大体おかしかった。グローバルでサステーナブルで、AIのなんとか、レバレッジが、コールオプションがなんとか。。老人がわからないようにわざとやってんのか、と私はいつも怒り狂っていた。騙される方がわるいにきまっているが、売りに来た銀行の兄ちゃんも、また素人で、金利の事も理解していない。ノルマをこなしているだけなのだろう。お願いだから、言葉の意味がわからないものは買わないで、と母に何回話したかわからない。
新ニーサで、私がよかったと思った点は変な投資信託を買えなくしたことだ。
妙なデリバティブ取引がついてるものの事だ。これで私がいつも気を揉んでいたカタカナのものが大分減った。手数料やランニングコストが高いのも無くなった。信託報酬3%と言われても、高い!と叫ぶ感覚は母にはない。相場がわかんないんだから。安いのだと0.03%からあるよ、100万円預けたら、三万円払うか300円払うかっていう差だよ。サービスの内容はこう違うよ、今まではこっちはこのくらい利益出してて、こっちはこのくらい。でも今年のことはわからないよ、と具体的に言わないと普通はわからない。
毎月配当も新ニーサでは買えない。毎月配当は給料貰わなくなった人がとても心惹かれる魔法ワードだが、普通に考えて毎月配当が出る会社はないので何か仕掛けがある。大抵数年持つと買った時より価値が下がってしまうし、配当も下がってくる。
毎月配当が欲しいなら、買う株を配当月で選べばいい。六種類買えば毎月出る。手間だが、変な投資信託よりよい。
うまい話というのはない。
資産の運用で儲かるというのは手元に落ちるのは数%だ。10%もあったら仕組みを疑わなきゃいけない。大抵その時しか儲からない。タイミングを読むような投資は素人はできない。プロの金融に勝てるわけがない。
配当は数%でもインフレと同じ速度で元手がゆっくり膨らんでいけば、資産は防衛できていることになる。
USドル、どうしよう、と電話があったのだ。親の歳や為替や金利や景気を考えてアメリカの国債のなんかを買えば?と言ったところで出かける時間になった。
いつ買ったドルなんだろう。今ならそのまま円に変えても買った時より増えているはずだけど。とりあえず、こういう相談をしてくれるようになってよかったと思う。