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おすすめクラシック8

恋に落ちて素敵な時間を過ごしたものの病気で死に別れる、と言う筋は昔から人々の好む話だ。オペラでも何度も手を変え品を変え出てくる。たとえば、ラ•ボエームだ。
詩人ロドルフォとお針子ミミの恋。貧乏だけど、楽しく、甘く、悲しく、生きる喜びのような、ものがたくさん詰まっている。
プッチーニはとてもユーモアにあふれた作曲家で、音楽での表現がとても具体的で笑ってしまう。楽しい中に突然何か不穏なパッセージが一瞬過ぎたとおもったら、大家さんが家賃を取り立てに来たシーンだった。繊細な心理描写を音楽で表現できるのがプッチーニだ。
何度もやってきたこの曲のリハーサルの最後の方まで来て、私はすっかり集中力を切らした。
最後はだんだん音楽は暗くなってくる。ミミは恋人に看取られながら結核で死ぬのだ。
隣で弾いている同僚に、「ねぇ、そろそろミミ死んだかな。」と聞いたら「今死んでる所だな。」と言う。
直後、明らかに天に召されたとわかるバイオリン4本のソロ。
あ、死んだ。
この作品は死に際の描写が短い。
ヴェルディの椿姫なんぞは三幕の冒頭から死にそうだが、死ぬまで随分かかるのだ。三幕丸々、死にそうだわ、やっぱり愛してるわ、死ぬわ死ぬわ、と30分くらいやっている。往生際が悪い。

ラ•ボエームよくヨーロッパではクリスマスにも上演されるので私たちのような劇場勤めの人間は季節を感じる作品でもある。
キラキラした青春と冬に始まるラブストーリーを楽しみたい人にはぜひ、ラ•ボエームをお勧めします。

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