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「本当にきっちり怖いホラー映画作品」として、完成度は恐らく原作より高い サユリ(映画版) ネタバレ感想

(画像は基本的に公式Xアカウントから引用しています)

本作について結論を言ってしまうと「普通に超怖い! もう嫌!」と言いたくなるしっかりきっちりホラー映画であり、かつエンタメ映画でもあって、映画作品単体として見た場合の完成度はかなり高く、お暇だったら是非ご覧ください、という感じ。
それ以外にも「主演の南出凌嘉さんが押切蓮介作画男の子の実写版として素晴らしい完成度」「ヒロインを演じる近藤華さんが恐ろしく可愛い」「根岸季衣さんに抱かれたい」故に見ろ! という感じでもある。
ただし原作と比べて変わっている点もあって、原作ファン的にこれは許せねえ! となってしまう人がいるのも、それはそれでわかるんだよなあ。

というのは簡単過ぎるので順番に振り返って行こう。

原作は何回も読んでいるので、どうしても「さて映像化にあたっての変更点はどこだろうか」「それは何故そう変えたのだろうか」との意識が心の中にあって、無心に楽しむというよりは分析モードで見てしまった。そもそも無心で見たら怖すぎてリアルに泣きそうな予感があり、自らの心の防衛策として分析モードだった可能性もあるのだが。
原作から変わっている要素については論理的に納得できるものだったので、原作未読の、映画版から本作に触れる方については「納得感」がかなり上がっているだろう。

原作では、「謎は謎のままでいい」というか、展開の疾走感を生み出すために細かい部分は読者の想像に完全に委ねる形で描かれていた部分がいくつかあった。

特に目立ったのは、例えば

  • サユリは何で引き籠ってしまったんだろう?

  • 怨霊サユリのその呪い? 超能力? って結局なんなの?

  • 死体の後処理どうしたの?

  • ばあちゃん何でそんなフィジカル的にも強いの?

  • なんで家族を許したの?

の5点かと思う。

まずサユリの引き籠りについては明確に理由が設定された。本作、基本的に初見の方でも楽しめるようになっているというか、作中で説明可能なことはなるべく説明する、視聴者にとってかなり親切な設計になっている。「何故サユリが引き籠ってしまったのか」との点においてはかなり強い動機付けがなされて説得力は非常に高い。個人的には「生々し過ぎる」との嫌悪感が先に立ってしまったが……。

次に「サユリの能力」。
原作では「幻覚を見せる」「謎空間に取り込む」「電気製品の操作ができる」「なんかモジャモジャ出して攻撃できる」の主に4点だったかと思う。
さて、実は原作においては「まずは曖昧な怖さ重視」のため「どうやってサユリは神木家の面々を殺したのか」は描写されていなかった。恐らく、幻覚で高ストレスを与えてショック死とか、幻覚で行動を操ったりとかなんだろうなー? と読者に推測させる形だ。それでも主人公の弟を実際どのようにヤったのかなど謎というか「それは感じてくれ」にしても限度があったりしたわけなのだが。
映画版では「幻覚を見せる」「幻覚のバールで相手を殴って精神的に殺す(より直接的な死因としては心筋梗塞となる)」「幻覚で相手の行動を操る」「人間を自分に取り込む」「家電製品の操作ができる」「霊体で相手を攻撃する」あたりになり、そらそんなことされたら死ぬわという納得度の高い感じになっている。

死体の後処理についても、原作ではサユリが謎空間に取り込んでいた死体を最終的に返してもらうのだが、映画版では「謎空間への取り込み能力」自体が省かれた。というのも、最低限のリアリティを考える場合に、原作のように最終的にいきなりボロボロの死体がどこからともなく出てきたら警察は大騒ぎになるだろう。
一方で、精神バールでぶん殴られて死に、直接的な死因としては心筋梗塞なら、警察が死体を片付けても特に不自然は無い(非常に苦しい説得力ではあるが、説得しようとする気があるのはプラスに考えたいところ)。
ちなみに、原作でのBBA無双点であるところのサユリを脅す部分について、原作ではそのリターンが「死体の返却」なので、正直弱いのだ(ヒロインの住田についても「オマケ返却感」があったし)。奪還しようとしたのはまだ生きてるヒロインと絞ったのは良かったんじゃないだろうか。

婆ちゃんの「強さ」。原作では精神的な強さが特にアピールされていたが、不意打ちとは言え大人を即昏倒させる程度の戦闘能力を有していたことについて特に説明はない。原作の婆ちゃん、それを読者に不思議に思わせないくらいの存在感があるので目立たないのだが、その戦闘能力は冷静に見ると変である。
原作版のあの存在感を映画でやろうとすると「生身の人間」ではもう不可能な領域なので、強さの理由をつけたくなるのはそりゃそうだよねと思うわけだ。

最後に、サユリがどうして家族を許したのかと言う点。原作では「そもそも最初から恨み以上に愛を求めていた」という理由づけだし押切蓮介の画力でそれを納得させられてしまうわけだが、経緯はともかくとして自分を殺した家族を恨んでいない、というのも冷静に考えればなかなか納得し辛い。
映画版では「引きこもりの理由付け」に関連して、そりゃそんくらい恨むわな、と大きく変更されているし、結局許せるのはそこだけなんだな、ということにもなっている。その辺の説明に回想シーンを5分くらい?クライマックス前に挟むわけなのだが、それによって「恨み」の説得力は大いに増すものの、代償として原作最大の魅力だった「ハイスピードBBA無双感」がかなり低減されてしまったのは事実だ。序に主人公の活躍具合が原作比較でだいぶ上がっていて(そうでないと主人公の見せ場が無いので、ここは大人の事情込みで許容するしかないとは思うのだが)、その結果としてBBAの活躍具合が印象的にちょっぴり下がっている。原作ファンで劇場版がちょっとなー、という評価になっている方は多分この辺が一番デカいんだろうなと推測。

まとめると、単独のホラー映画としてはかなり完成度が高く、なかなか日本ホラー映画にはない展開も込みでちゃんとエンタメもしてる良い映画なのだが、映画としての説得力・完成度を高めるために原作最大の強みを部分的に失ってしまった。多分だけど原作未見の若人の方とかが見るとむしろ非常に楽しめるんではないかと思う。20代までのカップルがデートで見る映画としてはかなりのおススメ具合かもしれん。

(以下、役者感想)

南出凌嘉さん(主人公:神木則雄役)

なんか笑顔の感じとかすごい「押切蓮介の描いた男の子キャラ」感があって大変良かった。3次元化として素晴らしい完成度だったと思うぞ。役者ご本人はしっかりカッコいいし実はもう19歳なのに、演技・表情でもって何とも「等身大の中学生男子っぽい情けなさやくだらなさ」が感じ取れてグッドでした。てかググるまで気づいてなかったけど妖怪ウォッチで主役やってたあの子なんですね。

素で気づかなかったぜ。おおきゅうなって……。

近藤華さん(ヒロイン:住田役)

すごい可愛かった(重要)。ビジュアル的な意味での原作の住田感は正直あんま無いのだがそれを求めるのも酷というか押切蓮介の描く女子ってかなり記号的な要素が強い(偏見)と思っているのでまあいいんじゃないでしょうか。正統派和風美少女だけに数年後に大河ドラマか朝ドラ出てそう、なんとなく。

根岸季衣さん(BBA役)

説明不要の存在感。この役の役柄に力負けしてないってすごいと思うんですよね。

総評として「σ(゚∀゚ )オレ的には全然あり」。
だいたいそんなかんじ。

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