エディ・ヴァン・スカイク氏(元アヤックスU12,13コーチ)インタビュー
1月 12日(水)日本時間22:30~23:45で
元アヤックスアカデミーコーチのヴァン・スカイク氏と
Zoom での交流会を行います。
今回のテーマは
「アヤックスから学んだ近代的なアカデミー構造と8〜19歳までの選手育成」
です。
アカデミーの構造
選手育成の基本
8~12歳、13〜16歳、17-19歳の練習で注意すること
参加費は無料です。
ラフレサ公式LINEからお申し込みください。
開催前にZoomリンクをお送りします。
ラフレサ公式LINE
https://page.line.me/277lgefj
ヴァン・スカイク氏
オランダ・アヤックス 在籍時にU12 ,13を担当し、フレンキー・デ・ヨング、ファン・デ・ベーク、マズラウィ、ベルフワインなどを指導。その後、アカデミーコンサルタントとしてアヤックの#育成 メソッドを熟知し、他クラブへのアドバイザーとして活躍。
Zoom 交流会の前にヴァン・スカイク氏にインタビューを行いました。
アヤックスでの仕事
私はアヤックスアカデミーのU12のトレーナーコーチでした。これは2007、2008、2009のことで、私は1996-98年生まれの選手担当でした。U13のチームは2つあり、上のチームはフランク・デ・ブールが担当でした。彼は指導者を始めたばかりでした。もう一つのチームはまだ1年目の指導者で、彼はデニス・ベルカンプでした。この3人でU12,U13のプログラムを考えました。クラブ内の専門知識を活用して97年生まれのグループが一番タレントがあると言われました。96年組は国内でも平均的、97年は平均以上、98年組は平均以上だが97年組ほどではありませんでした。
特別だった1997年生まれの選手たち
97年組はよかったです。アブドゥルハーク・ヌーリがいました。その後、プロでの合宿中の試合で不幸がありました。今はマンチェスター・ユナイテッドでプレーするドニー・ファン・デ・ベークもいました。スパーズでプレーするステーフェン・ベルフワインもいました。アヤックストップチームのマズラウィもいました。ヘルタ・ベルリンのゼーファイクもいました。
他に4-5名が、今オランダのリーグでプレーしています。一番高いレベルではないですが、プレーは続けています。フレンキー・デ・ヨングは後から入団しこの97年組に加わりました。
高い質の選手が多く、既にこの世代は特別だと思われていました。このようなタレントには怪我をしないように、保護者が適切な期待をするように大輪の花を咲かせるように、育成しないといけません。
このような選手と仕事をするのは嬉しかったです。正直なところ、彼らに多くを教えなくてもよかったのです。彼らはすでに自分たちで教え合っていたのです。質の高い選手を集めると、練習中に自然とお互いを高め合います。「学び」はすでに練習の中に多くあり試合はそれを「お披露目する」場だったのです。私の仕事は「彼らのハッピーな状態を維持すること」でした。
よって、97年チームはそれほど難しくありませんでした。
アヤックスU 12のプレーモデルについて
明らかだったのはフットポールのスタイルです。「1 - 4 - 3 - 3」の10番がいる形です。2名の守備的ミッドフィルダーの前にクリエイティブな10番がいます。これがその時のモデルでした。
もう一つ重要だったのは、例えばドニー・ファン・デ・ベークは右利きの選手で非常に有能でしたが、我々は彼をU12チームの左サイドでプレーさせ左足のプレー向上を目指しました。今のアヤックスは選手が平均以上の場合、上の年代のチームでプレーさせ利き足ではない足の向上はせず、年上の選手との環境の中でチャレンジさせます。
当時のメソドロジー(方法論)はウォームアップ、テクニカル練習、タクティカル練習を行い、5vs5, 6vs6, 7vs7, 8vs8のミニゲームでどう表現できるかを見ていました。ゲームの大きさはその時にいた選手の人数によります。
これは同時の練習の内容です。
今はそれが変わっていて1週間の中でより多くのメソドロジーを使っています。ある時は試合、練習、試合、またある時はフィジカル練習、テクニカル練習、試合、テクニカル練習、試合このように順番を変えます。それは子供が110%を出すための刺激やインスピレーションが必要だからです。
アカデミーとトップチームのフィロソフィー
まず先にフィロソフィーが固まるのはトップチームです。
トップチームが1-4-3-3の10番ありでプレーしていれば、11人制で試合をするアカデミーのチームは全て同じフォーメーションを使います。私がいた時は10番がいるフォーメンションでしたが、2年後にクライフがクラブに戻ったタイミングで、ブスケツのような6番がいる逆三角形の中盤になりました。
その時はより進歩的で、今のアヤックスは10番のいる中盤にまた戻っていますが、その理由の一つが相手ボールの時にプレスを掛けるタイミングを10番が決められるからです。10番の動きを起点に、他の選手も連動します。もし攻撃的MFが2人いると2人の間で「どちらが先に行くか」の決まり事が必要になり適切なプレスのタイミングが遅れる可能性があります。今は10番の中盤に戻っていますが、クラブの歴史やDNAを考慮すると、よりフィットしていると思います。
「スタイル・オブ・プレー」はトップチームによって決まりますが、「スタイル・オブ・トレーニング」はアカデミーが決めます。アカデミーには長い成功の歴史がありますので、それぞれの年代に適した練習が確立されており、年代が上がるごとに進化していきます。
主部はどの年代も同じで、テクニカル練習、パス&コントロール、ポジショナルプレー、ヘディング、シュート練習、攻撃vs守備練それぞれが連携をしていることが大事です。
フットボールのスタイルの確立も大事です。もしある右サイドバックが良い選手で上のチームに上がったとします。試合はよりフィジカルで速くなりますが、上のチームで求められることは同じです。コーチが彼にどうプレーするか説明する必要はありません。この2つがアカデミーで重要な要素です。若い年代から上の年代への一貫性とそのなかで成熟させるスタイルです。
相手のハイプレスがあると学ぶのに難しいシステムですが、そしていつも結果が付いてくるシステムではないですが、我々の意見では選手個人の成長にはベストのシステムだと思います。選手の能力内でのベストの選手になりますし、クラブの外に出ても活躍できると思います。
当時のU12を指導していた時に強調していたこと
最初はテクニカル練習を強調しました。ボールコントロールをマスターすれば、下を向くことがなくなり顔が上がりフィールド全体を見れるようになりより良い判断が出来るようになります。
そして良いパスをすることにフォーカスしました。フィールド上で一番速く動くのはボールですから。パスが出せないのであれば、スキルとスピードを駆使して相手との1対1になります。選手がU 12、13の時はフィールドのどの場所でも、これを強調します。選手にリスクを取り、コンフォートゾーンから抜け出してその状況の中でどのようなプレーが最適か我々に見せて欲しいのです。選手にコンフォートゾーンでプレーして欲しくありません。
フレンキー・デ・ヨングを例にすると彼はボールを受けて、ターンをして右に左に展開します。その時は無難なプレーを選びますが、試合の結果に直結するようなプレーでしょうか?ファイナルサードで彼がどれだけ効果的な選手でしょうか?非常に限られています。我々は彼がまだ若い時に「もっと付加価値を出す」ように、試合の結果を変えられるような何か特別なプレーをするように言いました。
私は継続的にリスクを取るように選手に話し、彼らに具体的な目標を与えました。例えば右にウィングであれば、前半に3つのセンタリングをする目標です。10番の選手であれば、枠内シュートを2本打つこと。選手個人の目標を明確にしチームのコンセプトもありますが、選手のプレーを引き出し、ハーフタイムに前半の目標を達成出来たか話をします。
U12の時に平均的な選手が、トップチームまで昇格する可能性
ヘルタ・ベルリンのゼーファイクはプロになるという強い意志がありました。彼は毎日我々コーチに「どうしたら上手くなれるか「コーチ教えてください」と言うような選手でした。その時点で成功するにふさわしいキャラクターを持っていました。
ドニー・ファン・デ・ベークは優しい人間でした。彼は学習能力が高かったので、彼に何かを見せれば、彼のハードディスクに保存してより良いものにする能力がありました。練習がある時はどう練習が良くなるか、コーチに提案するような選手でした。
マズラウイは非常に興味深いケースでアカデミーの中では平均的な選手でした。色々なポジションでプレーしてプロの選手になるかどうかは、分からない選手でした。彼はリーザーブチームに上がりましたが、全選手の中の1名という扱いでした。彼が幸運だったのは、シーズン途中でリザーブチームのコーチがトップの監督になったのです。そのタイミングで彼もトップに上がりました。このようなコーチと出会うことのような運も時には必要です。
ベルフワインは非常に自己中心的でしたが、ゴールを決めるという強い意志がありました。彼はチームプレーヤーではなく自分のことばかり考えていました。
我々は彼にこう言いました。
「断固としたり自己中心的でもいいが君にパスを出すのはチームメートだ。だから彼らとは友達になった方がいいよ。」
子どもは皆違いますし、ポジションでも違いますすが、我々が出来るのは彼らを最大限助け、「ユニークさ」を出来るだけ引き出すのです。多くのアカデミーでは、利き足でない足を強化したり弱点を補う練習をしています。アヤックスのアカデミーでは「ユニークさ」をより頻繁に出せるようにします。ヘディングや利き足でない足などは練習をしますが大切なのはユニークさを伸ばすことです。これがアヤックスアカデミーが成功している要因の一つでもあります。
インタビュー動画①
アヤックスアカデミーのコンサルタントとは?
仕事の内容はアヤックスアカデミーのブランドを他の方々に届けることでした。ワークショップ、プレゼンテーション、トレーニングキャンプやサマーキャンプでアヤックスで行われていることを紹介することで、参加者がどのような反応をするか見るプロジェクトでした。
あとはクラブと連携して、大きな先行投資なしで組織編成をする提案をし、クラブに関わる方々がより効率的に、また楽しんで活動が出来るようにアドバイスをしていました。選手、指導者、マネージメントが楽しむことが、これが本来あるクラブの形だと思っています。
フットボールは脳の手術のように一度失敗したら終わりではなく、関わる方々がハードワークはしますが、常に笑顔がある環境が好ましいと思います。これはアヤックスアカデミーだけでなく、オランダ全体のクラブが忘れないように努めていることです。「このスポーツを楽しむ」ということです。
オランダで言う「トレーナー」と「コーチ」とは?
マンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソンはトップチームの監督でしたが、練習を指揮することは出来ませんでした。彼にはトレーニングを仕切る他の指導者に任せ、戦術、戦略、モチベーションで力を発揮していました。彼は試合日担当で、週の間は4-5名のスタッフが練習を行なっていました。時には練習場にいましたが、いない時もありました。よってファーガソンは素晴らしいコーチでしたが、トレーナーとしては他のスタッフの助けが必要だったと言えるでしょう。
他の例では、グラウディオラは両方の能力を持っていると言えるでしょう。彼は良いトレーナーであり、良いコーチでもあります。モウリーニョはそれほど良いトレーナーではないかもしれませんが、戦術、戦略に長けていたコーチと言えるでしょう。
よってこの2つには違いがあり、現代の育成では指導者をこの2つのタイプに分ける傾向にあると思います。あなたの強みはフィールド上なのか、それ以外なのか。フランク・デ・ブールも自身が良いトレーナーであり、コーチタイプではないと分かったのだと思います。
時間はかかりますが、自分が得意ではないことを認めることも必要だと思います。「トレーナー」と「コーチ」の違いを知るのは重要だと思います。
アカデミーレベルでも「トレーナー」と「コーチ」を分けるべきか?
E:オランダではシーズンの半ばに選手の強みと向上する点を評価する時期がありますが、これは指導者も上司と一緒に行われます。強みは何なのか、サポートが必要なことは、どのよな指導コースが必要なのか、マスターしたいことは何なのか、アカデミーへの付加価値は何なか。
私はシモン タハマタというテクニカルトレーナーに1vs1に特化した練習はお願いしていました。彼は代表例もある元選手でだったので、彼以外に適任はいませんでした。このようなことをクラブのマネージメントと正直に話し合います。パーフェクトな指導者この世の中にいませんので、マネージメントは各指導者の正直な意見を評価すると思います。
11-13歳を指導している指導者はキャリアの最後のフェーズではありませんので、戦術や戦略に関しての能力は18-20歳を指導する時と比べてそれほど重要ではありません。この年代ではより指導者個人の能力にあったポジションを与えキャリアを築いていくべきですが、 12-13歳を指導する時は指導者も色々なポジションを体験して、適切な役割を見つけるのも良いと思います。
ヴァン・スカイク氏はどういう指導者なのか?
指導者は週の間はトレーナー、試合の時はコーチの役割を担いますが、携わっている子供たちにとって時にはメンター、時には父親、時には友達の役割をしなくてはいけません。状況によって違った帽子を被りながら、子供たちが快適で、ハッピーであり、恐怖を感じず、彼らが最大限成長できるようにしなくてはいけません。個人的には私はコーチタイプであり、トレーナータイプではないと思っています。アヤックスの中にもトレーナーだけを担当し、コーチになりたがらない能力のないスタッフもいます。
アヤックス在籍時にスペシャリストが私に十分な知識がない部分を診断をしてもらいました。誰にもストロングポイントと向上しなくてはいけないポイントはありますが、組織の中でそれを明確にしサポートする体制が必要となり、子供たちの夢を叶えるサポートが可能になるのです。我々はそれぞれ知識とノウハウがありますが、全てを知っているわけではありません。そこで助けを求めますよね。それは選手に対しても同じです。選手が柔軟性に対してのサポートが必要であれば、その専門家がいます。攻撃面でのヘディングの練習をしたいということであれば、その選手のカテゴリーの指導者以外でヘディングのサポートをする専門家がいます。大事なことはトレーナーやコーチを中心に考えるのではなく、選手中心に考えることです。
8- 12歳の選手の育成で貢献できること
私はJリーグを設立時から注目しています。私の多くの同僚が中国で仕事をし戻ってきていますが、可能性に関してはあまりポジティブな話は聞きません。個人的に韓国には行ったことはありますが、可能性には限度があると思っています。アジアの中では日本が一番の可能性を秘めていると思います。構造、規律がしっかりしており、ヨーロッパで既に活躍している選手もいます。8- 12歳の選手の育成で私に何かできることはないか興味があります。この年代でクリエイティビティ、自己責任感、大人とのコミュニケーション能力、練習へのフィードバック、彼らの殻から抜け出せるような指導者とのコミュニケーションを強化できれば素晴らしいですし、私が関われれば非常に良いチャレンジになるでし、この年代の選手がどう関わるか見てみたいと思います。日本には世界のトップレベルになり得る潜在能力を持っていると思います。