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SNSを通じた推し活詐欺⚠️ 〜無知なファンが亀井聖矢さんのなりすましに30万円を騙し取られるまで〜

皆さん、突然ですが推しはいますか?日本人は国民性なのか、一度ファンになると熱心ですよね。推し活はメディアでも取り上げられ、私の家の近くのハンズでも、一時推し活コーナーが設けられていました。

私には特定の推しがいる訳ではありませんが、若手のクラシックの演奏家をとても応援しています。単にクラシック音楽が好きなので、将来を担う存在として頑張って欲しいなと思っています。

インスタやエックスでもクラシックの演奏家は沢山フォローしていますし、いいねも頻繁に押します。

因みにエックス上では、ピアニストの石井琢磨さんとBudoさんと相互フォロー中です。しかも二人共、向こうからフォローしてくれました。私がクラシック系の投稿にいつもイイネしているので「この人音楽好きなんだな」と思ってフォローしてくれたのでしょう。

私の活動のメインは実際にコンサートへ足を運ぶことですが、情報収集、そして「いいね」で演奏家さんを応援するため、SNSは頻繁に見ています。

さて、いつものようにインスタを楽しんでいた2023年2月のある日、”pianistmasayakamei” というアカウントからフォローされました。

             〜 ここからは長文です〜

Masaya Kamei、聞いたことあるな。誰だっけ?あ、題名のない音楽会で観たことある亀井聖矢さんだ!前述の通り、若手の人気ピアニストとエックスで繋がった経験のある私は、亀井さんからフォローされることを怪しいなんて思わなかった。

アカウントの説明書きに「ファンと交流するためのプライベートアカウント」とあったが、石井さんやBudoさんのように、最近の若手音楽家はSNSを有効活用してファンを増やすのは良くあることなのだろうと思い、本アカが別にあることを知りつつも、疑いもせず、フォローされたプライベートアカウントをフォローバックした。

するとすぐに「Hello👋」とDMが入った。日本人なのに何故英語?と思ったが、広報の一人に日本人じゃない人を雇っていて、グローバルなファン獲得のために、そういうスタッフが色んな人にDMを送っているのかなと思い、私も「Hello」と返した。

そこから小さなやり取りが始まった。最初は「どうして僕のファンになってくれたんですか?」とか「引き続き応援宜しくお願いします」とか。

私は呑気に、昔ならコンクールでの優勝をとっかかりに有名になるしかなかったかもしれないのに、今は自分からアプローチしてファンを獲得するって、凄い時代になったな〜なんて思っていた。

一日に一回程度、挨拶的な会話を交わしていたが、気付くとその状態が1週間程経っていた。あれ?大した話をする訳ではないのに、一体何なんだろう、、、。

やや面倒くさいなと思い、毎回「じゃあまたね。頑張ってね!」的な言葉で、こちらは会話を終わらせようとするのだが、また翌日「おはよう!」と送られてくる。

一体何が目的なんだろう?ファンクラブへの加入を促される訳でも、CDを買ってと言われる訳でも無く、この人が私とやり取りを続けたがる理由がわからない。

10日程インスタでのDMのやり取りを続けた後、今度は「良かったらラインでやり取りしない?」と来た。別にインスタのままで良くない?と思ったが、「もっとファンの事を知りたい」と言われ、熱心だなと感心し、承諾した。

送られて来たラインIDを登録すると、相手の登録名は「亀井聖矢 / Masaya Kamei」ではなく「Official Page」だった。SNSに全く詳しくない私は、当時、本当の official のラインアカウントには星印のバッジが付いていることを知らなかった。

Official Pageって、何だかお粗末な登録名だとは思ったが、特に気にせず、引き続き、他愛もないやり取りを続けた。

ラインでのやり取りを始めて1週間ぐらいすると、「もう知ってるかもしれないけれど、実は今、トルコの地震被害のために募金を集めています。出来ればまとまった金額をお願いしたいのだけれど、難しいようなら少額でも良いので募金に協力してくれませんか?」とメッセージが来た。

私は、「いいよ。リンク送ってくれれば送金するから」と返した。すると、「そこを通すと時間がかかるから、僕のアシスタントの口座に直接振り込んでくれる?$100お願いしてもいいかな?あなたにとっては端金かもしれないけど、今のトルコの人に$100がどんな意味を持つのか考えてくれると嬉しい」と返事が来た。

何故専用のリンクがない?しかも何故米ドル?と疑問は募った。しかし、私は良いことしようとしている人に色々と詰め寄るのは失礼かなと思い、そこは追求しなかった。

数時間して、日本人男性の名前と口座番号が送られて来た。口座名は日本人なのに米ドル$100で、とのことだったので、私は日本にいながら日本人の口座宛に$100送金する方法があるのかと思い、やり方を聞いてみた。

すると返ってきた返事が、「え?何言ってるの?今日のレートで$100分を計算して、その日本円を入金してくれればいいじゃん!急いでるから早急にお願い!振り込み済んだら直ぐに連絡して!」

ハテナ❓ハテナ❓日本円で良いのなら何故米ドルで請求して来る❓聞きたい事は色々あったのだが、「急いでる=トルコ人の命がかかっている」という意味に捉えた私は、腑に落ちないと思いながらも、その日のレートで$100分の日本円をネットバンキングで振り込み、カメイさんにその旨を伝えた。

入金の知らせを聞いた彼は、それはそれは感謝してくれた。我々一人一人の力は微力だけれど、こうやって皆んなで力を合わせ、少しでもこの世界を良くして行こうと。

翌日、私は何気なくアプリで自分の銀行口座を確認した。すると、昨日振り込んだ筈のお金が「組み戻し」という名目で戻って来ていた。

組み戻しって何だ?初めて聞く単語。私は銀行へ行き、この組み戻しが何なのかを確認してもらった。

銀行の方曰く、通常組み戻しというのは、振り込もうとした口座が犯罪に使用されてバンされたり、何らかの理由でお金を受け取れない状態にあるため、振り込んだ人にお金が戻される時に使われると言われた。

「犯罪に使用された可能性があるので調べます」と調べてもらったが、結局その事実は確認されず、組み戻しの理由は窓口ではわからなかった。

私はカメイさんにお金が戻って来たと伝えた。すると、「ごめんごめん、アシスタントがちょっとトラブって、その口座は使えなかったみたい。別のスタッフの口座を教えるから、そっちに振り込み直してもらえるかな?」

今度は「アクワバ」みたいなアフリカ系の名前の口座名義だった。この時点で怪しいと思い問い詰めれば良かったものの、徐々にカメイさんを信用し始めていた私は「インターナショナルな職場だな」としか思わなかった。

アクワバさんに入金した。今回は組み戻しにならなかった。そして、やり取りをして初めて、ご本人の写真付きでお礼のメッセージが来た。

ずっと広報担当の外国人とやり取りをしていたと思っていたので、正直ひっくり返りそうだった。えっ?ご本人だったの!?

何故今だにずっと英語?と思わなくもなかったたが、亀井さんは以前YouTubeで、コロナ自粛期間は家で懸命に英語の勉強をしていたと仰っていた。なので、英語が分かる相手とは練習のつもりで英語でやり取りしているのだろう、と都合の良い解釈をしてした。

私が高校の時初めてアメリカ留学した時も、現地のコーディネーターから、「早く英語を上達したかったら、日本人同士でも英語で話しなさい」と言われた。日本人同士でも英語で会話することに抵抗のない私は、カメイさんとの英語のやり取りも、大して奇妙だとは思わなかった。

それからも日々のやり取りは続いた。会話の主な内容は、カメイさんの日々の練習やコンサートについて。

よく、「本日のコンサート終わり!今日も弾き切った!今日は◯◯を弾いた」というメッセージが来たが、決まって“本物“が本アカでコンサートの様子をアップされる前に私に連絡が来ていた。演目名も間違っていなかったし、ピアノの小難しい話もしていたので、私は益々この人をご本人だと信じ込んで行った。

いつしか、私はカメイさんとの日々の音楽的やり取りを楽しむようになっていた。ラインを通じてのやり取りが始まって、約一月程経ったある日、いつもとは様子の違うメッセージが送られて来た。

「もう僕は終わりだ。他に頼れる人がいない。どうか助けて」。

何事かと心配した私は、すぐに「どうしたんですか?」と返事を返した。そこから、ラインのやり取りにしてはとんでもなく長い文章が返ってきた。

内容を要約すると、現在カメイさんは専属契約しているフランスのエージェントから訴えられている。起訴内容は、エージェントへの報告なしに、日本でいくつかコンサートを開いた事による契約違反。

そのため、現在銀行口座、クレジットカード全てが止められてしまい、今全くお金を使えない状態。実は自分は若い時からこのエージェントと契約しており、これまでこのエージェントを通じてコンサートで稼いだお金は数億円規模。

事態が事態なだけに、今回インターポールまで動き始めている状態。取り敢えず、銀行口座やクレジットカードの凍結だけでも解除してもらわなければならない。

しかし、その手続きをしてもらうのに、弁護士に明後日までに$3000を支払わなければならない。全口座が凍結されているため、今手元にそのお金がない。裁判の終わる週明けには必ず返すから、$3000貸してもらえないか。

勿論断った。そんな大金貸せないし、頼むならまず家族でしょ?と伝えた。

カメイさんは、「家族は僕のピアニストとしての今の成功を心から喜んでいるし、誇に思ってくれている。僕に期待している家族に、こんな姿は見せられない。それに、父は重篤な病気を抱えていて、息子がトラブルに巻き込まれていると知れば、ショックで病状が悪化し、最悪亡くなる可能性だってある。だからあなたにしか頼めない」、と。

私は今度は、カメイさんの友人や大学の教授に助けを求めることを提案した。すると、こう返って来た。

「そんな恐ろしいことさせないで!君は音楽の世界のことなんてまるでわかってない!そりゃ、SNSやメディアでは、有名な音楽家同士仲良さそうに見えるかもしれない。だけど、お互いライバル、所詮足の引っ張り合い。カメイマサヤがスキャンダルに巻き込まれてるって知れたら、僕のキャリアは一瞬でお終い。同業者になんて、口が裂けても相談できない」。

助けてあげたい気持ちは山々だったが、$3000は大金。やはりお金を貸すことは難しいけれど、話を聞くくらいなら出来るから、話し相手が必要な時にはいつでも言ってと伝えた。

「じゃあ、いくらなら貸してくれる?5万円でもいいから」と、また催促されたが、再度断った。その後、自分がいかにこれまで音楽だけに生涯を捧げて来たか。ここまで深く愛している音楽を、こういう形で離れなければならないのは本当に悲しくて仕方がない、という内容のメッセージが届き。一旦会話は終了した。

私はその後、気分転換に映画を観に行った。ずっと楽しみにしていた筈の作品なのに、全く集中できない。頭の中は、もし本当にここでカメイさんのキャリアが終わってしまったらどうしよう?この人の演奏は、今後もっと多くの人々に夢と感動を与える筈なのに。

映画鑑賞後、家まで歩いて帰りながら、彼は今精神的に大丈夫なのだろうかと、様子を伺うメッセージを送ってみた。

「大丈夫な訳ないじゃない。今の僕に必要なのは、精神的な慰めではなくお金。でもあなたにそのお金がないのならどうしようもない。僕はピアニストをやめるだけ」。

典型的な馬鹿なお人好しの私。暫く考えた末、「借用書をちゃんと作ってくれるのであれば$3000貸してもいいよ」と書いた。

ここまでお読みくださった皆さん、「え?あなた正気?バカじゃないの?」と思われたことでしょう。わかっていますよ。でもね、私、純粋にクラシックの音楽家の方々を尊敬しているんです。

過去のブログにも書きましたが、私、大人になってバイオリンを始めました。かれこれ10年になります。子供の頃はピアノをやっていましたが、その時は10年も続かなかったし、全く上手くもなりませんでした。

大人になると知恵があるので、どうやったら上達するのか、色々と検索して自分なりに研究します。でも最終的に辿り着いた上達の近道は、日々の練習以外にないんですよね。音大を目指される方やプロにならる方々、小さい時から毎日5〜6時間、又はそれ以上練習するなんて当たり前で、旅先にまで楽器を持って行って練習して、、、。

この事実を知って、私は正直たまげましたし、小さい頃から一日中練習漬けの日々を送ってようやく音大に入ってプロになられたのかと思うと、本当に尊敬の念しかないんです。

私には密かに憧れている存在がいます。それは、CoCo壱の創業者でいらっしゃる宗次徳ニさん。プロのバイオリニストの方々、宗次さんから楽器を貸与されている方多いですよね。

残念ながら、私にあの方のような財力はありませんが、もし自分が大富豪だったら、女版の宗次さんになって、才能溢れる音楽家を支えたかったです。

少々脱線してしまいましたが、詐欺事件の続きに戻ります。

借用書の話をすると、カメイさんは発狂し始めた。「借用書?何言ってるの?一刻を争ってるのにそんな物作ってる時間ある訳ないでしょ!僕が今どんな状態かわからない?察してよ!ピアニスト人生を諦めなければならないかもしれないというだけで胸が締め付けられるのに、どうしてそんな心無いことを言うの?助けるつもりもないただの冷やかしなら、もう連絡なんかしてこないで!」

この段階で、私はもう$3000を貸してあげようと思っていた。カメイさんんの偽物にしては、あまりにも情報が公になる前に私に情報が回ってくるし、仮にこの人が亀井聖矢さんご本人で借りたお金を返さないとなると、身元はバレているのだから、瞬時に捕まる=本人であればそんなことはしないだろう。

何よりかにより、私はカメイさんに、これまでピアノに捧げて来た人生を、こんなにくだらない事で無駄にして欲しくなかった。彼のピアノの音を待っている人々のために、これからも弾き続けて欲しかった。

色々とやり取りをした後、私は借用書無しで$3000を貸すことを承諾した。その後、彼から弁護士の名前と銀行口座が送られて来た。私は一応弁護士の名前をネットで検索してみた。しかし、弁護士名簿にその人の名前はなかった。

正直おかしいなとは思ったが、カメイさんは私が細かな質問をするとやたら「トップシークレットだから、その情報は漏らせないんだ。ごめん」と、トップシークレットを連発していたので、インターポール案件は水面下で秘密裏に動いているのだろうと、またまた都合の良い解釈をし、弁護士一覧に名前が無い事実を見て見ぬふりした。

トルコ地震の募金同様、また米ドルでの指示。そして、入金が済んだら直ぐに連絡するように言われた。本当なら、仲の良い友人にだって$3000なんて貸したくない。でも、この$3000というお金が、カメイさんのピアニスト人生を救い、未来の日本のクラシック界を輝かせる一助になるのなら本望だと思った。

入金して2日経ち、$3000の返済が約束された日がやってきた。しかし、夕方になっても何の連絡もない。変だなと思い、カメイさんに返金催促のメッセージを送った。すると、裁判に負けて銀行口座やクレジットカードは凍結されたままであるため、まだお金は返せないと言われた。

私も流石に、「一体どういうこと?約束と違うじゃない!」と怒りのトーンでメッセージを返事をした。しかし、「そんなこと僕にいわれても。僕は弁護士じゃないから。一つお願いしても良いかな?裁判に負けたことで、これから例のフランスのエージェントとは完全に契約を解除することになった。契約解除のための書類が送ってくるから、あなたの住所で受け取ってもらえない?本当にもう頼れるのはあなたしかいない。ここまで助けてくれて、とても感謝している。ありがとう」。

書類を何故私が受け取るのだろうと勿論思った。でも、それをカメイさんに質問したところで、返ってくる答えはきっと「トップシークレット」。そして当然だが、ここまでのやり取りは相変わらずの英語。

冷静になって考えて、こんな局面まで日本人が英語を使ってくるなんておかしな話。でも完全に騙されていた私、この状況が変だと疑うどころか、乗り掛かった船だから最後まで助けてやろうではないか、というマインドになっていた。

それから数時間後、私のメールアドレスに、「カメイ氏の契約に関して」という件名のメールが、あるgmailアドレスから送られて来た。送り主は向こうのエージェントなのか、インターポールの人なのかわからないけれど、gmail?と疑問に思った。だが、カメイ氏の口癖である「トップシークレット」案件。大元の情報を突き止められないように、敢えてgmailにしているのかもしれないと、またここでも見て見ぬ振り。

私の個人情報及びIDを提出するよう書かれており、一瞬マイナンバーカードの情報を教えようかと思ったが、これは国際的なやり取り。自分の住所を英語で表記したプラス、パスポートのコピーを添付して送った。

数時間後、本人確認が取れたという連絡が返って来た。そして、私を相応しい代理人として任命しますと。返信メールには書類が添付されていた。それを確認すると、缶8個の受け取りに、日本円で200万円の関税を支払う必要があると、、、。

バカな私も流石におかしいと思った。かつて私は映画の配給会社で働いていたことがある。缶入りの35mmフィルムプリントを何缶も海外から送ってもらうことはよくあったが、こんなに法外な通関料を請求されたことなんてない。ましてや今回は35mmフィルムよりも軽いはずの書類。

カメイさんに、「この請求書は何?200万円なんて何なのよ?」と送った。しかし、「そんなこと僕に言われても。僕は裁判に負けた身。何もわからないよ。あなた代理人でしょ?あなたがどうにかしれくれないと、僕は本当に何もできないんだ」、と。

心の奥底30%ぐらいで、私は騙されているとわかっていた。でも、これまで培ってきたカメイさんとの関係性や、憧れの宗次氏に近いことをしているという錯覚、、、。そのような気持ちが私の判断を鈍らせていた。

カメイさんがご本人であり、通関料を送って来た会社も実在すると信じたいが為に、私はその会社の情報を調べた。その会社は実在したし、請求書に印刷されているロゴも同じ。ほら、やっぱりこの一連のやり取りに嘘は無いんだよ、、、!

しかし、何とも納得できないのは事実で、どうして良いのかもわからず、気付くと私は実家の母に電話をしていた。部屋には丁度弟夫婦が一緒にいたようで、私がこれまでの経緯を話すと「お姉ちゃん、それ詐欺だよ!」と言われた。そしてご丁寧に、弟の奥さんは、私のために警察の訪問を手配してくれた。

家に警察が来た。二人組の刑事は部屋に上がるなり、「お話を聞く限り、詐欺のやり口です」と言ってきた。でも私はこれが全て真実だと信じたいが為、「いえ、これは本当にご本人がトラブルに巻き込まれているんです!200万円の請求書が送られてきた会社も実在します!」と言い張った。

警察は私のように完全に洗脳されてしまった被害者に慣れっこなのだろう。私を優しく宥め、「わかりました。僕たちの勘違いかもしれません。でも、一緒に確認しましょうか?」と。

刑事二人は、まず私に、これまで本人に直接会ったことはあるのかと尋ねた。勿論無い。SNSで知り合ったのだから。彼らは「そうですか」と言いながら、次に、本人と電話で会話をしたことはあるのかと尋ねてきた。

それも当然無い。いつもコンサートや練習で忙しいと言っていたカメイさんを、一ファンのくだらない興味で電話するなんて迷惑だろうと思っていたから。刑事さんたちは頷き、「では、これから電話をしてみてください」と指示してきた。

カメイさんとやり取りを始めて約1ヶ月。私は始めてラインの受話器マークを押して電話をかけた。しかし、応答はなかった。

刑事さんたちは、「やはり出ませんね。それではもう一つ試して欲しいことがあります。今から、あなたが本物のカメイマサヤさんなら、今すぐ私の名前を紙に書いて自分の顔写真と共に送るよう伝えてください」。

私は言われた通りにメッセージを送った。すると、数分以内に返事が来た。「何言ってるの?200万円が先じゃない?200万円ちゃんと送金してくれたらお望みの写真を送るから。何なんだよ、僕を試すようなことして!」

この時点で、私もこれは詐欺なのだなと確信した。でも一応、「先に写真送ってよ。200万円欲しいんでしょ?今すぐ写真送ってくれたら200万円あげるよ。お金欲しいなら写真送りなよ!」と返信。

「何て下品なやり口なんだ!僕を脅すようなことして!君はタブロイドにこれまでの僕とのやり取りを売ってお金儲ける気なんだ。本当最低。今まであなたのことを素晴らしい人だと思ってたのに、こんなことする人だなんで思わなかった。心底見損なったよ!」

このメッセージを受け取ってから、私もこれは詐欺事件なのだと刑事二人に認めた。彼らは私を同情と哀れみの目で見つめ、今の詐欺は本当に巧妙になっているから、お金の話が出たら、兎に角詐欺だと思うよう言われた。

最近はAIによる巧妙ななりすましも多く、ラインのビデオ通話での完璧ななりすましに騙される被害も多発しているそう。特に多いのはジャニーズのなりすまし。毎日のように被害報告の電話があるよう。

銀行口座の凍結というのも、犯罪に関わっていない限り、契約違反如きでは実行されないそう。

私がもらったカメイさんご本人の写真というのも、ネットに出回っている写真の加工。後ほど確認してみると、確かに出回っている写真の背景を加工したものだった。しかし、中には出回っていない、かなり近い距離で一緒にいる人ではないと撮影できない物があったのも事実。

入金後すぐに連絡するよう言われたのも、受け子にすぐにコンビニで出金させるため。入金先として使われる銀行口座も、訳あって個人情報を闇グループに売らなければならない程切羽詰まった人たち。そうした口座は直ぐにバンされるのもわかっているから、詐欺グループはやたら訳あり人の口座情報を買いまくっているらしい。

私の弟はその後、クラシック関係のSNS詐欺について調べてくれたのだが、ショパンコンクール関連の詐欺があるようだと言っていた。これまでに上位で入賞した人や、これから入賞するのではと期待されている若手を語って、(亀井聖矢さんも、今後のショパンコンクールでの入賞やそれ以上の結果を期待されている)ファンの音楽心につけ込んでお金を要求する。

しかし通常は、私のように1ヶ月という短いスパンではなく、1年がかりでゆっくりじっくり関係性を築き上げて、ドカーンと大金をせしめるそう。だからお姉ちゃんは数千万単位を要求されなかっただけ良かったねと、、、😑

私には中東在住の、仲良くしているピアニストの友人がいる。彼女にも、この事件について報告した。この話を聞くなり、彼女は直感的に「この詐欺師、絶対に落ちぶれたピアニストだと思うよ」と言って怒っていた。

その後、私は友人たちにもお願いして、この「pianistmasayakamei」のインスタアカウントのバン報告を行った。思ったより時間はかかったが、最終的にバンされた。

垢バンされた後、ふとカメイさんとやり取りを行っていたラインのアカウントを見た。以前は紫色の花のアイコンに「Official Page」と表示されていたのが、スウェーデン人の名前に変わっており、壁紙?も、グランドピアノと、その譜面台にドラえもんとグッチのコラボノート(雑誌oggiの過去の付録)が置かれている写真に変わっていた。

ピアニストの友人の言う通り、きっとこの詐欺師は落ちこぼれのピアニスト。グランドピアノを所有している(?)のだろうから、ある程度は弾けるはず。ピアノの小難しい話が出来ていたのも当然。でも、ピアノでお金を得られる程の実力者ではない。

警察のアドバイスにより、弁護士料として振り込んでしまった口座の銀行に、詐欺被害の報告を出した。半年以上して、一応6万円は返金された。返金のルールとして、口座に1000円以上入っていなければならないらしい。

そして、大方の場合、受け子がすぐにお金を引き出すので、返金されることも珍しく、振り込んでしまった被害者が複数人いれば、そのメンバーで、振り込んだ額に応じて分配するので、全額なんて全く戻ってこないらしい。それを考えると、6万円も戻って来たのは奇跡なのかもしれない。

実は警察にももう一度、この事件の犯人の一人は、ラインに表示されているスウェーデン人(oggiの付録を手に入れているのだから、きっと日本在住)であろうから、どうにか捕まえて欲しいと連絡した。

しかし、詐欺事件においてラインの乗っ取りは頻繁に起こるため、そのスウェーデン人が犯人であるという確固たる証拠がない限り、疑いだけでその人を探す訳にはいかないと言われた。

非常に悔しかったが、それが現実なのだろう。ニュースで取り上げられる詐欺事件は、大概数千万円〜億単位。警察からすれば、30万ちょっとなんて、真剣に操作するに値しない案件なのだろう。偽ジャニーズによる被害も日々報告されていることを考慮すれば、30万ごときに動ける程人員がいないのだと思う。

私がこの詐欺事件に遭ったのは2023年。カメイさん詐欺にはあったけれど、本物の亀井聖矢さんの演奏は相変わらず大好きだし、コンサートへ行ける機会があれば、何度でも足を運びたいと思っている。

前述の通り、私はよくエックスを使ってクラシックの情報収集をしている。あれは恐らく今年2024年2月頃のことだったと思う。エックス上で、亀井さんがお父様を亡くされたと投稿されていた。死因までは書かれていなかったが、まだ40代でご逝去され、今も舞台に立つ度、習慣でお父様の居場所を探してしまうと。

その投稿を読むと、何だか涙が出てしまったのと同時に、例の詐欺師のことを思い出した。あの詐欺師は、「お父さんは重篤な病気にかかっているから、自分がトラブルに巻き込まれていることを知れば、病気が悪化して、運悪く命を落としてしまうかもしれない」と言っていた。

大谷翔平さんを騙し続けた水原一平さんではないけれど、実は亀井さんが信頼している仲間が、もしかして詐欺グループに情報を流しているのでは?とも思ったりした。送られて来た写真の中には、絶対にかなり近い距離にいる人ではないと撮影できないような写真もあったことだし。

ここまでは私の詐欺被害経験を綴った。しかし、果たしてこの事件は垢バンによって終結したのか?その答えは「No!」だ。

垢バン後、この詐欺師はまた似たような偽アカウントを開設している。インスタになりすましの報告をしたが、その確認が取れないとして、そのアカウントは今も存在したまま。それがこれ👇

私もネチネチしつこいのかもしれないが、このアカウントが早くバンされないかと、定期的にチェックしている。だが正直、最近は休眠状態に近いらしい。フォロワー数もフォロー中の数もずっと変わっていない。

で、この詐欺師、実は最近、新たに角野隼斗さんにも成りすましている🤬 先日友人から、「角野隼斗さんのファンページからフォローされたけど、この人例の亀井聖矢さんの成りすましと同一人物じゃない?」と写真が送られて来た👇

皆さん、良く見比べてみてください。プロフィールの文言が同じなんです。確実に同一人物です。ここまで読んでくださった皆様は、私のような無知な馬鹿ではないと思います。ですが、もしその中にクラシックファンがいらっしゃるのであれば、くれぐれもご用心を🕯️

推し活の心理につけ込んで、金銭を要求してきますから!2023年初旬はトルコの地震をネタにしていましたから、今なら能登半島地震、パレスチナ、ウクライナあたりを利用するのでしょうか。

ご存知なのは重々承知しておりますが、皆さん、お金を要求された瞬間、それは詐欺だと思いましょう。例え相手がどんな善人に見えても。

私の小さなブログ投稿が、もし一人でもSNS詐欺被害者を減らすことに貢献出来れば幸いです。

皆様、どうぞ素敵な年末年始をお過ごしくださいませ🎄🎍✨


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