幼少期振りに観た映画、『E.T.』
小さい頃、両親は良く私を映画館に連れて行ってくれた。観る映画は決まって、父が観たい物。物心つく前から、何度も映画館へ行った記憶はあるのだが、実際には何を観たかなんて何も覚えていない。
だがその中で、スティーブン・スピルバーグ監督の「E.T.」だけは観たことを覚えている。勿論、当時まだ言葉なんてろくに喋れない私は、内容など全く理解していなかった。だが、あのE.T.というキャラクターだけは鮮明に覚えていて、子供ながらに、スクリーン越しに友達を見つめるような感覚を味わっていたことは記憶している。
その後、不思議と改めてちゃんと見ようと思ったことはなかった。何故だかわからないが、結末が悲しい物語だと何処かで認識しており、変に大泣きしてしまうような物なら観たくなかったから。私は、悲しいストーリーがあまり好きではない。
先日たまたまテレビを付けた時、BSで「E.T.」をやっていた。しかも始まってまだ2分。私は、折角だからちゃんと観てみようと思い録画した。そして今朝、丁度それを観終わった。
子供の時の記憶通り、E.T.は正しく画面越しの視聴者全員の友達であり、最後は悲しかった。だけど、とても愛情のこもった良い意味で。
以下、ネタバレになるので、今後作品を観ようと思われている方は、これ以上は読み進めない方が良いかもしれません。
オープニングシーン。
夜、草むらから街の灯が映される。モゴモゴという声が聞こえ、宇宙人らしきシルエットが草むらに隠れているのが確認できる。
宇宙人が隠れる草むらの近くに、いきなり明々とライトを照らした数台の車が突っ込んで来る。男たちの一行が車から降りてきて、懐中電灯で辺りを照らし、何かを探している。
宇宙船が停泊している。突然奇妙な叫び声が聞こえる。御一行が動き出す。隠れていた宇宙人は逃げ回る。宇宙船の扉が閉まり、草むらの宇宙人は乗り遅れてしまう。
新たなシーン。
少年たちが、リビングで何かのゲームをしている。この家の長男マイクは、弟エリオットに、注文したピザを玄関外に取りに行ったら、ゲームの仲間に入れてやると言い、取りに行かせる。
宅配人からピザを受け取ったエリオットだが、何かの音に気づく。音が聞こえて来る裏の物置へ確認に行く。
物置の様子から、何かがいる事を確信したエリオット。怖くなり、家の中へ逃げ戻る。皆んなにこの事を話し、一同全員でそれを確認に行く。しかし誰も居ない。
だがエリオットはどうしても気になり、夜中、物置に隣接する畑へ向かう。地面には未知の生物の足跡が。
恐る恐る懐中電灯で照らしながら、畑の奥の方へ進んで行くエリオット。すると、茶色で手の長い、横長の頭に大きな目と口の付いた変な生き物、E.T. と遭遇。二人はお互いを見て驚き、どちらも大声を上げる。
そして E.T. は逃げる。翌日、エリオットは明るい時間帯に、マーブルチョコをあちこち撒いて、昨晩の茶色い宇宙人を探す。
夜食卓で、母、兄、妹に自分が見た不思議な生き物のことを話すが、誰も真剣には取り合わない。因みに、この妹役をやっているのは、小役時代のドリュー・バリモアさんだ。
昼間 E.T. に遭遇できなかったエリオットは、今度は夜中、懐中電灯を持ったまま、外のガーデンベッドで体を毛布に包んで待機する。そして遂に、E.T. が再びエリオットの前に現れる。
短い足でゆっくり、一生懸命に彼の方へ近づいて来る。E.T. は、自分の手から、昼間撒かれていたマーブルチョコを取り出し、エリオットの足元に落とす。
再度マーブルチョコを使って、今度は E.T. を室内に誘き寄せるエリオット。手話のようなハンドサインで、徐々にコミュニケーションを取り始める二人。
冒頭で宇宙人を探していた男たちが再び現る。彼らは、宇宙船が飛び立った時、一人地球に残された個体がいると信じ、その一人、つまり E.T.を探し回っている。
夜中外で E.T. 待ちをしていたことが祟り、翌朝熱を出し寝込んでしまうエリオット。E.T. は上手いことクローゼットに隠しているため、母親が部屋に入ってきてもバレない。
エリオットを残し、母親と兄弟は仕事、学校へと外出する。その間、エリオットはE.T. をクローゼットから出し、共に時間を過ごす。エリオットは食事を取りに行こうと部屋を出るが、その時うっかり飼い犬のハービーに見つかってしまう。だがハービーは、直ぐに E.Tの存在に慣れる。
そうこうしているうちに、兄のマイクが帰宅。彼に「絶対に秘密だからね」と部屋に匿っている E.T. を紹介するエリオット。兄はあまりの驚きに言葉が出ず、ただただ立ちすくす。
そこに妹ガーディーも帰宅。エリオットの部屋に急に入ってきて、いきなりE.T.に遭遇し発狂。E.T.も発狂。結局、そこにいる全員発狂。
続いて母も帰宅するが、彼女には知られてはいけないと咄嗟に判断した兄マイクは、E.T. をクローゼットに隠す。
その頃、また例の宇宙人ハンター達が、E.T. を探し回っている。
秘密を共有する兄弟たちは、こっそりエリオットの部屋に色々な物を持ち込み、E.T. に地球のことを教えようとする。「花」であったり、自分たちが住む場所を地図で示したり。
また、E.T. に宇宙図鑑を見せ、ここは「地球」だと写真を指で差す。すると E.T. は、その図鑑に示されている星の位置になぞらえ、粘土で出来たボールを星に見立て、宇宙パワーでそれらを空中に浮かせてみせる。ついでに枯れた花も生き返らせてみせる。子供達はそのパワーに魅了される。
家族全員が学校や仕事に出払っている間、冷蔵庫を物色する E.T. 。中身が何なのか分からず、ビールを飲んでしまう。そしてそれが気に入る。
この頃、E.T. とエリオットのマインドはリンクしており、E.T. がビールを飲んだ瞬間、エリオットも授業中にゲップをしてしまう。そして、E.T.にアルコールが回り始めると、エリオットもウトウトし始める。E.T. は倒れ、エリオットも倒れる。
ビール6本を飲み干した E.T. 、完全に酔いが回ってしまい、エリオットは学校で実験用のカエルを全て逃したり、女の子にドラマティックなキスをしたりと、色々やらかす。
ビールを堪能中、TVを観たり、子供用のスペリング学習機械で遊んでいたE.T. 。一日で、少しずつ言葉を発することが出来るようになる。
学校から戻ったエリオットに、「エリオット」と呼びかけてみせる E.T. 。エリオットは E.T. に「E.T. 」(= extraterrestrial = 地球外生命体)と発音させ、二人は喜び合う。
E.T. は「デンワ」や「ウチ」という言葉も学んでおり、窓から空を指差し、「E.T. 」、「ウチ」、「デンワ」と発する。
またまた例の宇宙人狩りの御一行。ワゴン車にレーダーを付けて、走りながら色んな家の会話を盗聴している。そして、丁度エリオットの家の前を通り、彼らの会話にじっと耳を傾ける。どうも、この家に注目しているよう。
「ウチ」に「デンワ」したいと言う E.T. のため、エリオットはガラクタの破片を集め、E.T. に渡す。それらを使い、彼は宇宙に通じる電話を自分で作ろうとする。
ハロウィーンの日。仮装という体で、E.T. に白い布を被せ、彼を堂々と外に連れ出す兄弟。エリオット、E.T. を自転車のカゴに乗せ、森へ。だが道はガタガタ。すると E.T. が、宇宙パワーで二人の自転車を宙に浮かす。あの名シーンだ。
森に着いた二人。E.T. は、自分で組み立てた宇宙用電話を取り出し、早速試してみる。
遅くなっても戻って来ない子供達を心配し、母は車で探しに。その隙を見て、例の宇宙人ハンター達が家に侵入。
一方 E.T. とエリオットは、宇宙への「デンワ」に成功。だが迎えが来ない。結局夜が明ける。そして E.T. は消える。
まだ戻らないエリオットを捜索するため、家には警察が。母は彼らに色々と質問さる。だが急に、エリオットが戻ってくる。
高熱のあるエリオット。彼は兄マイクに、森へ E.T. を探しに行くよう頼む。自転車に飛び乗るマイク。車に尾行されていることに気づき、尾行者を巻く。
例の森に到着するマイク。E.T. を探し回り、ようやく彼が川の側で衰弱し倒れているのを発見する。
帰宅したマイク。母をエリオットの部屋呼ぶ。まるで化石のように白くなり、床に横たわるE.T. 。
未知の生き物に「ママ」と言われ、思わず手に持っていたコーヒーを床にこぼす。エリオットは母に、「僕たちは病気なんだ。多分もう直ぐ死んじゃう」。(We’re sick. I think we’re dying)と言う。
状況を把握できない母は、子供たちをE.T. から引き離し、エリオットを1階へ連れて行く。妹ガーディーを連れて1階に降りた兄マイク、玄関の扉を開ける。
するとそこには、宇宙服を着た男が。他にも同じ格好の男が何人も現れ、エリオットに近づこうとする。
宇宙服の男の一人が、2階の E.T. のところへ。家の外には警察の車や、F.B.I.捜査官らしき男達がゾロゾロと近づいて来る。
家の前にはテントやビニールのトンネルが張られ、完全に国レベルで E.T. を捕まえに来ている。防護服を着た人々に色々と尋問される家族。
簡易的に設けられた治療室で、E.T. とエリオットの治療が始まる。一見、E.T. の敵かと思われた御一行だったが、実は彼らは E.T. を助けようとしていた。
この治療中、エリオットと E.T. の繋がっていたマインドは離れる。そしてエリオットは回復するが、E.T. はどんどん衰弱して行く。
15時36分。E.T. は心臓機能停止が確認され、死亡と断定される。体は遺体保存用の冷凍保管庫に入れられる。
E.T. が連れ出される前、エリオットは彼とのお別れの時間を貰う。お別れの言葉を横たわる E.T. にかけ、最後に「大好きだよ」と言い、保管庫の蓋を閉め、部屋を去ろうとする。
この「大好きだよ」(We love you)が効いたのか、E.T. は王子様のキスで目覚める白雪姫のように、息を吹き返す。
そして「ウチ」に「デンワ」したと、いつもの調子で嬉しそうにエリオットに話す。
エリオットは、E.T. の復活を兄マイクにだけ教え、政府の大人達には秘密にする。そして二人は妹ガーディーに手紙を託し、彼女はそれを母に手渡す。
その間、兄弟は E.T. の保管庫が乗せられた車へ密かに乗り込み、兄マイクの運転で逃走。ある公園で車を止め、車から降りた E.T. と兄弟は、そこで自転車に乗った、協力してくれる仲間たちと合流。
自転車で更に逃走する少年たち。それを警察の車が追いかける。大人達は彼らを何度も捕まえようとするが、この自転車ギャングたちに毎回上手い事かわされ、全く捕まえられない。
そしてとうとうエリオットの前に、ライフルを持った政府の男2名が立ちはだかる。すると E.T. 、お得意の宇宙パワーで、少年たち全員の自転車を宙に浮かす。
大人達はただ茫然とそれを見つめる。
例の森に到着した少年たち。到着と同時に、空から宇宙船が降りて来る。
母親とガーディーも森へ到着。三兄弟は、E.T. の周りに集まり、各自お別れを告げる。E.T. はエリオットに、自分と一緒においでと宇宙へ誘うが、エリオットは地球に残ると言う。
地球のお土産に最後ガーディーから貰った、いつも家にあった花の鉢植えを持って、E.T. は自分の故郷へと戻る。
あらすじは以上。
最後のエリオットと E.T.のお別れのシーン、あれは本当に涙なしには観られない。最後、お互いが単に「楽しかったよ」、「忘れないよ」、「ありがとう」の言葉で終わっているのなら、私はここまで泣かなかったと思う。
あの最後の E.T.の「一緒においで」(come)の一言が、短い期間で育まれたエリオットとの関係性を全て物語り、もう涙が止まらなくなる。だって、「大好きな人とずっと一緒にいたい」。それは、動物であろうと、人間であろうと、宇宙人であろうと、全生命体に共通するとても綺麗な愛の感情。
何故だろう、人間同士の友情物語よりもずっと、この宇宙人と少年の物語は、汚れのない真の愛情や友情を我々に見せてくれているように思える。
監督のスピルバーグさんは年齢的なこともあり、最近は全盛期程、ご自身が監督として映画を撮られることは少なくなった。けれども、こんなに映画作りの上手い、映画らしい映画を作る人は他に居ないと心底思う。
例えば兄マイクが、母の車を家の駐車場からバックで道路際に移動させるシーンだったり、家に残された E.T.が、冷蔵庫から取り出した牛乳をうっかり床に落とし、中のミルクが流れ出してしまうシーンなど。本当に何気ない場面なのに、Mr. スピルバーグの手にかかれば、固唾を飲んでこうしたシーンを観てしまう。
また、彼はアメリカ人家族の様子を描くのが誰よりも上手い。登場する「お兄さん」なんか、大抵大威張りで、弟に平気で罵りの言葉を浴びせかける。それを見た親も一応注意するが、所詮子供の小さなケンカだと、あまり干渉しない。
礼節を重んじる日本では到底考えられない光景だが、そういうのをみると、つくづく「アメリカだな〜」と感心するし、それこそ宇宙人家族の文化でも見るように、その珍しい光景を楽しんでしまう。
さすがハリウッド界の重鎮。私なんて足元にも及ばない。そして、いつか会ってみたい。
映画「E.T.」は、1982年に公開された作品なので、このブログの読者の中には、本作品の名前など聞いたこともない方がいらっしゃるかもしれない。しかし、是非是非観て欲しい。時代を感じさせないCGにはビックリする。そして純粋に、人(生き物)としての優しさや愛情に心底感動できる作品。きっとあなたも、あの愛らしい E.T. が大好きになる。
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