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「新しい学び方を通して世界の見方が変わる」小島一浩さん

私たちが2015年から毎年開催してきた「Creative Leadership」。職種や組織、地域を超えて、のべ1000名もの多種多様な方々に受講していただきました。これまで受講されたアラムナイ(同窓生)の方々に登場いただき、受講のきっかけや見つけたクリアボイス※、受講後の変化についてお話を聞いていきます。

今回は2018年に「Creative Leadership」を受講した小島一浩さんにお話を聞きました!

※クリアボイスとは
「クリアボイス」とは、リーダーとして自分はどうありたいのか、 内側から湧き上がってくる想いに向き合い、言語化すること。「迷いなき“クリアな声”」に由来してネーミングされています。クリエイティブリーダーシップのプログラムでは「クリアボイス」を見つけていく過程で、人々が内省を深めながら、自身が背負う「べき論」と「本音」を識別し、例え心地悪くとも「本音」に徹底的に耳を傾け、自分の信念を見つけ、そこから発せられる「クリアボイス」を見つけていきます。

今回は2018年に「Creative Leadership」を受講した小島一浩さんにお話を聞きました!


●お話を聞いた方

小島一浩さん
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 イノベーション人材部 デザインスクール事務局 事務局長 兼 人間拡張研究センター 研究員。専門はシステム工学、デザイン論、デザイン教育。東日本大震災後、復興支援を行う産総研絆プロジェクトに参加。宮城県気仙沼市に住みながら市、NPO、市民、企業との連携により集いの場創出から地域雇用創造事業まで、多くのプロジェクトに従事。自身の“My Will”は、「世界を変えることができると信じ行動できる人をデザインの力で増やすこと」。

●研究者向けのデザインスクール立ち上げのために

私は現在、国立研究開発法人 産業技術総合研究所の中で「デザインスクール」を立ち上げ、事務局長をしています。2018年ごろ、私がデザインスクールを立ち上げるときに「カオスパイロット※が参考になるのでは」という話があり、まずは自分で受講してみようと思ったのが「Creative Leadership」を受けたきっかけです。

※カオスパイロット(KAOSPILOT)とは…
「世界で最も刺激的なビジネスデザインスクール」と呼ばれる、デンマーク発のスクール。「Creative Leadership」はカオスパイロットによる育成プログラムで、日本ではカオスパイロットの協力のもと、株式会社Laereが主催しています。

私が立ち上げたデザインスクールは、研究や技術開発を仕事としている人たちを主なターゲットとしたスクールです。
私ももともと研究開発を仕事としていて、ロボットとインターネットの通信、SNSの分析、ロボットの安全など、システム関係の研究開発を行っていました。研究は本来、企業と手を取り合って研究・開発をし、できあがったものを企業に買い取ってもらうのが理想ですが、企業で事業化される可能性が薄そうだなと感じながらも、研究開発を進めることはよくあることでした。

そのようなモヤモヤしている折、東日本大震災が起こりました。デザインスクール共同設立者の上司が、復興支援プロジェクトをやるというので、参加しました。復興プロジェクトでは、インフラ(電力や下水など)自立型トレーラーハウスを企業と急ピッチで作り、それを宮城県気仙沼市に設置し、当時一般にも普及し出したIoTでの見守りや、ロボットによる健康支援で孤独死対策を目的としました。現地では、NPOや市役所、仮説住宅の自治会などと連携する必要がありました。復興支援プロジェクトでは、結果的に1年間、先ほどのトレーラハウスに住みながら、関係者に「自分は何もので、何故ここにいるのか。何をしたいのか。」を語り、信頼関係を形成、復興のビジョンを共有、持っている資源を共有する連携の仲間に入れてもらい、協働するという体験をしました。最後は、連携のコアメンバーとして活動することをメンバーから期待されるようになりました。

この経験から、「研究所の中での研究開発だけでは、社会に役立つモノ・コトは創り出せない」「関係者を繋ぐ役割を研究者や技術者が行っても良いのではないか」と考えるようになりました。

では、どうしたらこの考えを実行できるのか?と色々な分野を調べた結果、「現状をよりよくしていく」という広い意味でのデザインに到達し、2018年に研究者や技術開発者がデザインを学べるデザインスクールを研究所に共同設立しました。そこでは、「Creative Leadership」で学んだことをベースに、“共創型リーダー”を育む教育プログラムをデザインしています。

●今までの経験と異なる、新しい「学び方」を通して

「Creative Leadership」を受講する前は漠然と「デンマークのビジネススクールのリーダーシップ論なんだろうな」と思っていました。でも、実際に受けてみると、まったく一般的なリーダーシップ論ではありませんでした。

今まで自分が40年近く経験してきた「学び方」とは、まず理論を教わり、その理論を元に仮説をたて、仮説を検証する実験を行うという近代科学の方法でした。一方で「Creative Leadership」での学び方は全く手探り。モジュール1で「自分は何者で、どこに向かうのか」を学び、モジュール2で「チームをどのように高みに持っていくのか」を手探りで学んでいきます。あとからそれは「教育学における経験学習なのだ」と知りましたが、それまで自分が習ってきた学び方と違うので驚き、戸惑いも覚えたのも事実です。

しかし、「Creative Leadership」を受講することで、私は新しい眼鏡を手に入れることができました。それは「新たな世界の見方ができる眼鏡」です。受講中はさまざまな人の価値観や大切にしていることを知り、視野が広がりました。それにより、それまで「研究者」や「経営者」といった限定した職業の見方ではなく、より広く世界を見られるようになったのです。

また、参加する人々はそれぞれ目的や価値観が異なり、ある種の衝突や食い違いが起きることもありますが、「Creative Leadership」での体験を通して、衝突を駆動力に変えていくという考え方も身に着きました。

●クリアボイスを明確にするために、感情を大切にする

私は「Creative leadership」で初めて「クリアボイス」という概念に出会いました。人生で、自分が拠って立つ信念こそがクリアボイスだと思います。自分の内側を見つめ、自分と対話しないと出てこない言葉です。

モジュール1と2を受講してからも「自分が拠って立つ信念とは何か?」「私は何が好きなのか?」を考え続け、最終的に見出した自分自身のクリアボイスは「学ぶことが好き」「非効率的なことが嫌い」「チャレンジすることが好き」というものでした。そして、クリアボイスを実現するためのアクションに繋げる「My Will」という概念へと進化させ、デザインスクールで活用しています。

クリアボイスは感情が動いたときに気づけるので、以前よりも自分の感情を大切にするようになりました。それまでは情動的な部分を見過ごしがちでしたが、今は感情の変化を見逃さないように気をつけています。楽しいときは「どうして楽しかったんだろう?」、怒りや憤りを感じたら「どこに怒りを感じているのか?」と振り返って、なんとなくやり過ごさない。それによって、クリアボイスが明確になると感じています。

●「Creative Leadership」は学びのスタートポイント

「Creative Leadership」はチームを率いる人たちにおすすめです。それは「Creative Leadership」が、リーダーが部下の行動を細かく管理・チェックするマイクロマネジメントではなく、一人ひとりを人間として見て、学び続けるチームを作るために適したプログラムだから。多様な人々を巻き込んで進めていくことを考えるために、とくにモジュール2は重要だと思います。

ただ、さまざまなアクティビティを体験しますが、その中で起きたことを注意深く観察していかないと、ただ「楽しかった」で終わってしまうのが難しいところ。自分の腑に落とすためには、知識として再構成することが必要です。私の場合は、学んだことのうち、どれをスキルとして構成できるのかを考えて腹落ちさせました。楽しいアクティビティが多いですが、アクティビティだけに着目してしまうと浅い理解で終わってしまうので、それを通して何を学び、つかみ取るかが大切です。

「Creative Leadership」受講後、そこで得たものをデザインスクールで活用するとともに、私の所属している研究センターがある千葉県の柏の葉キャンパスを中心とした生活者の方々を対象にした「ヤッチャレ」というフェスを開催しています。応募した方々には、これまでやったことのないことに挑戦してもらい、チャレンジを楽しむことを伝えたいと考えています。
それから、今度千葉県の高校で授業を担当することになりました。授業では、使われていない遊水池を有効活用するために、どんなフェスを開催すればよいかを高校生たちと一緒に考えていきます。「Creative Leadership」で学んだメソッドを用いられると思うので、とても楽しみです。

私にとって「Creative Leadership」は学びのスタートポイント。そこで見出したクリアボイスをどんどん人に語ることで、自然と人から声をかけていただく機会も増え、世界が広がっていきます。クリアボイスを見つけることで人生は豊かになるのです。

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Creative Leadershipプログラム開催予定
10月:対面で学ぶコース

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