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全員元気で勝ち獲るぞ!ACLならではの熱中症問題とその対策

今回は"ACLならではの"熱中症対策について。

2022年、ベトナムで行われたACLを現地観戦。
その際に熱中症を起こした記録を書いたつぶやきがSNS上では流れてしまったので、改めて記事にして記録しておこうと思いました。
水や塩分などの物質的なこともそうですが、調べれば出てくることを書くことはせずサポーター心理的な部分にフィーチャーして書いてみます。

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私が熱中症を起こしたのはベトナムに来て3日目の2試合目。
この年のACLはコロナ禍に於ける特例レギュレーションにより、予選はベトナムでの集中開催だったので、いつものACLよりも長期の滞在でした。

【症状】

ホテルに帰ってきてから応援の疲れもありつつ、しばらくは元気に過ごしていた。日本の友達と音声を繋いで雑談をする余裕も。

複数名での通話を一人抜けて、シャワーに入っている最中に急変。
目の前がクラクラして目の前が白くホワイトアウト。
まばたきしても視界は変わらず。
この日の試合終了後、応援で熱くなった直後にバス待ちで豪雨に遭い身体は冷え切っていたので逆に温まりたいほどで、でも身体の芯は熱い変な状態。
立てないのでシャワールームに座って泡を流す。吐き気すごい。

ひとまずキリのいいところまでシャワーを終わらせて髪も乾かさずにベッドに。最悪意識がなくなった状態で見つかっても良いように服を着て。
嘔吐とホワイトアウト由来のめまいがひどく、お手洗いとベッドの往復をしながら隙をみてコンビニへ。
ポカリスエットと水、氷を調達して、寝て、なんとか次の日回復。

【なぜ熱中症になったか】

日本と気候が違いすぎる

日産スタジアムとトンニャットスタジアムでは気候も湿度も何もかもが違う。
ベトナムの湿度は91%。これは最高湿度ではない、平均湿度だ
だけど加減が出来なかった。加減の仕方なんて知らないし、目の前に頑張っている選手がいるから熱くなってしまう、周りも頑張っている。

ただ、これが良くなかった。
応援の圧を高めるために席は広いけれど密集していた。
だから湿度に加えてみんなの汗も体温も集まって、正直スカイスパのサウナのロウリュウ直後より暑かった。
ここで日本と違う分、応援も調整できたら…と思うけれど、加減を知らない…というか温存するやり方みたいなノウハウが自分の中になかった。
「夏の日用の応援」は用意していてもあくまで日本の夏でベトナムの夏用にデザインされていない。
試合中が一番キツいけれど、その時はハイになっているから倒れない。緊張の糸が切れたり、小さなストレスがフッとかかるとその瞬間にガクッとくる。

街歩きも遊び換算ではなくて体力使ってる換算に入れなきゃいけない

20:00キックオフ、「ナイトゲームなら涼しいから大丈夫」と一見思ってしまうが「昼の疲れが残っている上に、夜も大して涼しくない」のである。
幕を張るのも、列に並ぶのも、アップ時も、いつだって暑くて湿度90%。

また、コロナ禍を経て初めての海外がこのベトナム。
街を楽しみたくてなるべく観光をしようとしてしまった。

他の人が動物園や離れた遺跡に行く中で自分はのんびりコースだったのだけれど、それでもジワジワと体力が奪われていたらしい。
「街歩きって遊びだから」と自分の中で休みと同等に換算していたけれど体力を使っていることには変わりない。

さらに「ベトナムに行ったら買い物じゃなくて⚪︎⚪︎を見に行かないと」といった文章に(そうだよな、遊んでばっかりいちゃダメだよな)と行く予定もなかったのに行程を無理やり追加してヘトヘトになってしまったのも大きい。
その頃「人の言葉は自分に向けられても受け取らない自由がある」といったバウンダリーを設けるのが苦手だったので完全に自分由来のミスであるが、その当たり前すら気づけない人が多くいるのも分かる。
「⚪︎⚪︎べき」なんてない。
あるとしたら「自分の行きたいところに行くべき!!」
、以上!

水だけではダメ、塩分も!

その頃私はジムから食事制限の指導を受けながら5ヶ月で8kg落としていた。
だからこそポカリスエットの糖分が気になってミネラルウォーターで乗り切ろうとしてしまった。というか癖で水を選んでいた、ポカリはジュースの認識だったのだ。(無意識)

このツイート。後で気がついたが水分こそとっているものの、全部真水なので電解質などが補われていなかったのだと思う。
塩タブレットを配ってくれる仲間がいて救われたが、自分で持ってこないと「それ、あと2〜3個ちょうだい」とか落語に出てくる図々しいやつみたいでちょっとお願いしづらい。くれる側は「気にしなくていいよ」と笑ってくれるだろうけれども、これはもう受け取る側の性格の問題。自分で用意が一番気兼ねないのである。
この経験以来、観戦時は日本でもポカリかソルティライチを持っていくようにしているが、ポカリが命の水ではなくてジュースという認識の人は多いと思う。
万が一糖分が気になるならば、市販のものでなく糖分を抜いた作り方もあると思うので積極的に摂ってほしい。
「ダイエットを優先するなんて」みたいに言われることもあるけれど、それも体調管理の一環だと分かるのでここでは"自分にあったやり方で""無意識のチョイスがあるならそれに気づいて"を強調します。

マスクと一瞬の切り取りで判断される世界

コロナ禍真っ只中。マスクありでの声出し応援だった。
日本ではまだ声出しの解禁がされていないからテレビで中継を見守る人も、現場にいる人もドキドキしていた。
しかし、マスクありで湿度90%。
その頃はサッカー界だけでなく日本に於いて「熱中症とマスク」の危険性についても知られていないほどにリモートやステイホームの記憶が新しい時期。マスクを一瞬外すだけで白い目で見られるようなピリピリ感だった。

実際、数日前にマスクをしない姿で写っていたACL現地サポーターについてSNS上でも議論が交わされる場面があった。
だからこそ2戦目は何も言われないようにしよう!と必要以上にマスクに対して敏感になる現地のサポーターがいた。
結果、DAZNで抜かれた際の一瞬でもマスクが外れていないように、鼻のハリガネ部分を強くつまみ、チャントで口を通常の会話より大きく開けても動かない密封状態を作り上げてしまった。

感染対策としては素晴らしいこと。
しかし熱中症対策としては最悪であった。

この時、世界全体でも未知のウイルスに対して何が効果的で何が感染源になるか分かっていなかった。
マスクや手洗いは有効な衛生対策であるには違いないのだけれど、
"一瞬の映像の切り取りで判断し広める"、これについては再考の余地があると思う。

現地:
クラブを困らせよう、と行動するサポーターは一人もいなかった。
むしろ現地で受けるPCR検査があるし、選手と(触れ合うわけではないにしても)近くにいる立場。絶対に罹らない・移さないと全員気を引き締めていた。
ニュース番組で毎日感染者数の発表をしている中で海外からの集団感染が起こったら愛するクラブ名を出しての報道、のち世間から叩かれるだろう恐怖もあった。自分が叩かれても良いけどクラブが標的になるのは避けたい。

テレビ前:
おそらく重箱の隅をつつきたいとかではなくクラブ愛ゆえに「それで大丈夫?迷惑かからない?」の気持ちが出てしまったのだと思う。
クラブ愛以外にも「海外にお邪魔している日本人の行動が失礼のないものではないか」とかそういった目線は多くの人が持っていると思う。
悪いことをしている人が仲間にいたら止めようとする責任感もきっと大事なこと。
過去にあったバナナ事件を覚えているサポーターも多いから他のクラブよりも「止めよう」の気持ちや自浄作用が出やすい気質だと思っている。もうあんなことは起きてほしくない、関わる人たちや対戦相手も含めて嫌な気持ちをさせたくない、その心ゆえだと思う。

ましてや異国の見えない状況。「現地と日本では状況が違う」と文化的な背景のつもりで返した人が「現地に行かれる恵まれたアピールか」と金銭的・生活状況の文脈で返されて混戦してしまったケースもあった。

現地はその時々でベストな行動をとるように全員が心がけているが、一瞬の切り取りで誰かを叩き、それが全体へのプレッシャーになるような事態は避けたい。
これも本当に問題があってそれを指摘したい・改善したい時との区別がつきづらく非常に文章化しづらいのが本音だし、大人だから何か言いたい人はご自由に…の気持ちもあるのだが、食い違いの原因は一旦明らかにしておくべきだと思った。世界を戦うのにここで分裂するのは少し勿体無い。

【対策】

結果的にホテル選びが天才だった

症状が出てからすぐ(このままだと絶対に倒れる、5分以内に対策しないと)とコンビニに行った。
歩いてミニストップまで30秒、狙ったわけではないが非常に恵まれた立地であった。

さらにレジデンス型だったので、冷蔵庫を開くと製氷皿に氷が出来ていた。
これをコンビニでもらった袋につめて雑におでこの上に置いた、生き返った。普通のホテルだったら製氷皿はなかったから、これもとても運がよかった。
今回は頼らなかったが、言葉の通じるコンシェルジュがいるとヘルプも出しやすいし、良いホテルで買う安心ってこれだよな…と思う。
旅慣れていない人ほど、少し背伸びしたホテルで安心を買うことはオススメだ。コンビニが近くにあるだけでも強い。

こうすれば良かった

私が倒れる数日前、別のサポーターがスタジアムで同じく熱中症によりダウンしていた。
その時、ハーフタイムなどに風を送っていたけれど、どうしても屋外だとベトナムの生ぬるい風で助けているつもりが追い討ちをかけている状態になるのが申し訳ないやら、どうすれば良いやら。

そんな中でもヒヤヒヤグッズとハンディ扇風機は少し役に立った、

ユニフォームを患者に向けてバッサバッサと手動で送風、
その姿を見た別のサポーターは「アウフグースか?」と聞くほどに滑稽だったが、ハンディ扇風機はモーターなので細かく涼風が送られる。
あと制汗タオルのメントール入りのものも結構効いているようだった。

ライフラインとしての「絆」

具合が悪くなってすぐ、誰かに助けを求めようかと頭を掠めたけれど結局怖くて頼れなかった。
しかも私は到着初日に両替を十分にしていなくて、ベトナムの祝日とかぶって両替屋もクローズしている状況。クレジットカードが使える店も少なくて大騒ぎしてみんなに迷惑をかけている。
1度の遠征で2回も迷惑かけるのはナシだと自分ルールが発動。

しかし、海外遠征でのサポーター同士の繋がりはすごく大事なのだ。
点呼をとるわけではないけれど、チケッティングやニュースなど突然のイレギュラーも起こる。外務省案件だけではなくAFC であったりクラブであったり様々だが、誰が遠征に来ていて、誰がどこのエリアに宿泊しているかくらいの情報は共有していたい。
私自身、普段からサポーター同士の飲み会に参加できなかったり、顔見知りは多いけれど深い繋がりがない孤独サポなので、自分がその場に混ざっても許されるのか躊躇してしまうのだが、馴れ合いをするわけではない安全対策としての繋がりが存在する。
だから変な遠慮や(端っこにいるんで…)みたいなスタンスでいなくてもいいぞ、とその時の自分に声をかけたい。

↑ 本当にこれ。

新体制発表でACL優勝を掲げてからたった4ヶ月でこの舞台。
あの日、社長が話していた"世界で戦えるクラブへ"にはきっとピッチ内の話だけでなく、私たちの視座であったり感覚などのアップデートも含まれていると思う。
もちろんクラブがサポーターの思想までコントロールすることや言及はできないから、私たち自身の"気付き"が必要で、気付きには失敗や試行錯誤の機会が必要、それがまさしく今なのではないか。

応援をしていると自分の無力さを突き付けられることの連続だけれど、その小さな力も集まると大きな後押しになる。
全員元気で、全員長生きしてクラブを永くサポートできるようにしていけたらきっと素敵な景色が見える、はず!

ここまで読んでくださって本当にありがとう! サポートも大変励みになりますのでよろしくお願いします。