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四十九日に無知を正される
火葬場から遺骨と共に葬儀場に戻ると葬儀社の人から位牌だのなんだのといろいろ手配のことを聞かれ、カタログのようなパンフレットのようなものを見ながら説明を受けた。
葬儀もせずに直葬という選択もあったのだが、父は小さくてもするものと思ってたようだったので、結局葬儀社に頼んで身内だけの家族葬をしたのだった。
まあ直葬となると遺体を運ぶ車をどうするとか、火葬までの遺体の保管場所とか、火葬の申し込みだとか自分達でやらねばならないから、業者に頼むのが面倒くさくなくていいかという意識で。
葬儀のエピソードはこちらをどうぞ。
そんな具合だから位牌とか四十九日とか考えてなかったのだが、妹が「お父さんが、四十九日と一周忌やったらもうしなくていいからって言ってた。ってことはしてほしいってことだよね?」と言う。わたしは、そうなのか?しょうがないなあって感じで不承不承、業者の話を聞いていた。
父は老人ホームに入居しているし妹は嫁いでいるし、となれば四十九日まで遺骨は独り身のわたしのところに来るわけで、しかし伝統的な抹香臭い陰気な木の位牌を置く気にならない。パンフレットのようなものをめくっているとガラスのオシャレな位牌が目に入った。金額も普通の位牌とさして変わらない。これならば部屋の中にポツンとあっても気にならない。
で、四十九日の法要をどこでするかって話に。業者のセレモニーハウスで頼むとなるとまたお金がかかる。
「位牌だけじゃダメなの?」とわたし。
「魂入れをしないと位牌の意味がないので」と業者。
魂入れ?仏壇、お墓、位牌、あっちコッチに魂入れるんだ?なんか入れられる方(この場合、故人となった仏さんのことだが)も嫌じゃないのか?(これは魂抜きという言葉からの連想)
と、わたしはつい嘲笑した感じで口に出してしまったのだった。
それを聞いた業者の人が「最近はこだわらない人もいますので、どうしてもしなければならないということでは…」と言い淀んだ。
実はそんなやりとりが葬儀の日にあった…。
さて、四十九日法要の当日である。法要は妹の家に坊さんを呼んでする事になった。
葬儀の時に来ていただいた坊さんにお経を読んでもらったあと、妹が設営した祭壇を背に坊さんが、
「今日はどうしてもお話しておきたいことがあります。」と宣った。
無論、厳かに耳を傾けるわたし、父、妹夫婦の4人。
「魂入れとは、もとはわたしたち坊主の隠語でした。それがいつしか巷でも使われるようになったが為に元の意味からズレた使われ方をする人も現れてしまいました。」
「四十九日とはお位牌に、あの世とこの世を結ぶ道を作る儀式なのです。」
へー!つまり出入口を作るのね。
魂入れの入れは入口の入りなんだ。(とわたしは解釈)
「この道を通って故人の魂が自由に彼方と此方を行き来できるようになるんです。」
自由に…。
こっちで勝手に魂を抜いたり入れたりするわけじゃないのね。
位牌に括り付けるってことじゃないんだ!
わたしは魂もあの世もあるものと思ってはいないのだが、イメージとして魂もあの世もある世界を受け入れている。
だから亡き母が好きなところへ自由に行けるようなイメージを与えられて、わたしはほっとした。
どこでも好きなところへ行って、
飽きたら転生でもなんでも好きなようにしてね、お母さん。
追記
法要のため取っていた休暇明けての出勤の道すがら、「あの坊さん、ちょっと嫌味ではあったな」とニヤついてたら、ふと脳裏に蘇るものが…。
そういえば、お盆の時父方の祖母の家の仏間で、歳下のいとこ達とふざけて遊んでいたら、伯父か祖母の兄弟である大おじの誰かが、祖父の仏壇の前で位牌の方を指して
「この向こうからじいさんがやってくるんだぞ」
と言ってなかったっけ?
すっかり忘れてたけど、あれは小学2、3年の頃だった気がする。ずっと仏壇の扉を開けるのがなんとなく怖かったんだけど、その事が記憶の底にあったせい?
坊さんが言ってたな。
「東北の震災で遺体の見つからなかったご遺族が位牌だけは作る方が多かったそうです。位牌があれば魂が家族のもとに戻ってくることができるからと。」
父方の祖父は戦争で南洋の海に沈んだので遺骨がない。墓もあったが仮の墓で遺骨も無いからと墓参りには連れて行かれたことがない。
祖母の家に行くと仏壇の位牌の前にはいつ行ってもお供えがしてあった。祖父の方の親戚とは縁が切れていたから、あれは祖母と祖母の実家の親戚たちが信心深かったんだろう。
孫のわたしはこんな体たらくで申し訳ない。ご先祖様には、これも時代だと思って諦めてもらいたい。
父方の祖母や大おじたちのエピソードはこちらをどうぞ
さらに蛇足
位牌は父が持つことになった。だったら別に伝統的な木の位牌でもかまわなかったのでは?
サ高住の1人部屋は狭いからガラスのお位牌の方がやっぱり陰気臭くなくていいか。父がどう思ってるかはわからないけど。
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もうすぐお彼岸だなあ。