Ladyknows gallery 第三弾展示「私たちの解放区」
こちらの1本目のnoteでも記載した通り、当該本を設置することが、この展示で届けたかった思いやLadyknowsが掲げる理念に反すると判断した理由を明確にしておきたいと思います。
今回の展示を通してLadyknowsが届けたかったことは、他人のからだへの過干渉、他人のからだを勝手にジャッジ、コントロールしていいものだという現代社会の風潮に対する課題提起でした。本来、さまざまな個人のからだは「ただそこに在る」はずなのに、見た目からくる偏見や無自覚な決めつけ、「こうあるべき」というジェンダー規範によって、断りもなく意味づけされ、私たちは生きづらさを感じてきました。
また個人のからだへの向き合い方を強制するような昨今の流れにも疑問を抱いており、からだを愛する/無理に愛さず今の感情を大事にする、悩みを解消する/悩みと共存する など、自分のからだとの向き合い方は、個人が決定すべきことであり、社会や他者が強制するものではないと考えています。
そしてこういった他者のからだに対する干渉・強制の姿勢は、無自覚の差別意識を生みかねず、トランスジェンダー差別を含むあらゆる差別にも紐づくものと認識しております。しかしそういった認識を持ち、トランスジェンダーに対する差別に反対していながらも、当該本(この書籍の問題点に関して別途3本目のnoteにて注意喚起とともに公開致します)を展示の一部として公開してしまったことは、やはり不適切かつあまりに無責任な行動であったと、深く反省しております。
以下より、問題となっている当該本の設置場所を含めた展示の詳細をご覧いただけます。今回の問題についてのあらゆる事実・状況を明らかにすると共に、私たちがこの展示を通して本来届けたかった思いや、課題提起の意志が伝われば幸いです。
展示概要/開催日時
Ladyknows gallery第三弾展示「私たちの解放区」について
女性の健康・社会課題に焦点を当てるプロジェクト「Ladyknows」は、昨年大阪心斎橋にて常設展として『Ladyknows Gallery』を開始しました。3~4ヶ月に一度テーマや展示内容をリニューアルする形で、これまで様々なメッセージを掲げジェンダーギャップへの課題提起を行ってきております。
その第三弾として2022年7月末からスタートした当展示を「私たちの解放区」と題し、5組のクリエイターとコラボした作品を制作/展示する運びとなりました。
本展示は、社会にあふれる膨大な抑圧や視線から解放され、他者から干渉されず各々が自分のからだと向き合える展示空間を目指しており、「ボディニュートラル」を軸にからだにまつわる主体的な意志をアート作品や読み物など様々な形で表現した作品が並びます。
そして、暑さが増しルッキズムや容姿にまつわる眼差しが加速するこの時期だからこそ、今回の「私たちの解放区」を東京の方にもお届けしたいという思いで、2022年8月6日・7日の2日間に渡って東京でのサテライト展示を実施しました。本展示は、展示を通じて1人でも多くの方に、からだにおけるルッキズムについて考えていただける場になればと、費用は自社の持ち出しで、お客様は無料で見ていただける展示になっております。(現在展示は既に終了しております。)
展示詳細/書籍設置含めた展示内の説明
展示ステートメント
展示の導入文
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展示① クリエイターさんコラボ作品
アンチキャスティングにより募集したモデルさんにタトゥーシールを貼って頂き、主体性のある女性像/自分の身体の愛おしい箇所を見つめることを写真を通じて表現した作品群。
赤い下着跡に花束のタトゥーシールを添えたり、ほくろやしみに天使が寄り添っていたりします。社会のさまざまな視線やジャッジによって干渉され、意味づけされた私たちのからだ。それらから”解放”され、ただそこにある私たちのからだのありのままを祝福する作品。メディアや広告では無かったことにされるしわや毛、からだの歪みもそのまま、ありのままで展示しています。
掲載コピー
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展示② クリエイターさんコラボ作品
「自分の身体とどう付き合っていく?」というテーマでエッセイを公募し、Ladyknowsが選出した5本を展示。
コラボ先のメディア内で通常の募集の際にかかっている年齢制限の仕様を、今回のコラボ公募企画では撤廃してもらい、年齢問わず声を募集。多種多様な視点から綴られた、それぞれのからだにまつわる想いや葛藤が5本のエッセイに詰まっています。
<エッセイ募集時のステートメント/ビジュアル>
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展示③ Ladyknows運営チーム作品
Ladyknowsの概要説明の為のポスター作品を展示。
#KuToo で可視化された、装いとしても縛り付けられている私たちの身体。誰かの声や社会からの抑圧により抱えざるを得ない痛みを脱ぎさり、解放されていく様子を可視化した作品です。
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展示④ クリエイターさんとのコラボ作品
自分との対話のきっかけ、セルフラブへのヒントや気づきなど、日々の暮らしの中で自分を受け止めるための様々な問いをハガキサイズのカードにして設置し、一人一問持ち帰ってもらう作品を展示。
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展示⑤ クリエイターさんコラボ作品
白雪姫の有名なシーンをオマージュした漫画作品。「この世で一番美しい人」は、果たして誰かが決められるものなのだろうか、という有名なストーリーへのカウンターとして、美しさの”基準”や固定観念を問い直す作品になっています。年齢が若く白い肌を持つこと(=白雪姫)を美の象徴とし、より年齢が高いお妃様がそこに嫉妬する、という分断/二項対立の構図ではなく、なぜお妃様がそのように悩まなければならなかったのかという背景に切り込み、「美しさは人の数だけ」という作品タイトルとともにお妃様らしさもまた美しさのひとつであるというエンディングを作品に盛り込みました。
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展示⑥ クリエイターさんコラボ作品
「全員違うという当たり前を、知る」をテーマに描いていただいたイラスト作品と、イラストを元に作成した立体作品を展示。
社会からは無いもの・隠すものとされてきた、からだのお肉やしわや傷、毛など、出来るだけ多様な悩みに光をあてることで、人の数だけ違ったからだと悩みがあることを可視化し、人と違うことで孤独感やコンプレックスを感じている方に「みな等しく違う」という作品のメッセージを通して、少しでも安心感を持って頂けたらという願いが込められています。そして、当たり前に人それぞれ誰もが持つからだの「違い」を、隠したり修正すべき「悩み」だと呼びかけてくる社会の視線や声に対するアンチテーゼとして、ユーモラスな作風のイラストを用いてそれぞれの違いに愛おしさを見出せるような作品に落とし込み、多種多様なブロックで展示しました。
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展示⑦ Ladyknows運営チーム作品
前回展示テーマ「世代を超えるシスターフッド」にて制作した、主に女性に対して使用される偏見を集めた「偏見単語帳」。「年齢に関する違和感」をテーマにアンケートを募集し、集まった10代から60代までの計230名を超える声を元に違和感を感じる偏見の声をまとめ、「女性が歳を重ねるということ」に対するステートメントと共に展示しました。
年齢を理由に「あれを着ろ/これを着るな」「メイクはまだ早い/化粧はマナーだ」「そろそろ結婚をしろ/子どもはまだか」など、様々な抑圧や偏見が社会や周囲からむけられがちな現状に、Ladyknowsとして改めてNOを表明し課題提起をしていくこと。そして、「女性は歳を取ると価値が下がる」と言わんばかりに加齢をネガティブなものとして扱ってくる社会に対し、年齢を重ねていくことの意味や喜びを再解釈し届けていくこと。そんな意志と思いを込めて制作した作品です。
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展示⑧ Ladyknows運営チーム作品
からだと美しさに関するムーブメントの歴史と、ムーブメントを受けて起こった社会や企業の変化/アクションなどの事例を時系列で紹介する展示。
私たちのからだが他者によって制限、ジャッジされ続ける社会に疲弊しながらも日々を生きている私たちが、少しずつながらも着実に動いてきた価値観の歴史を共にたどることで、社会の変化や前進、連帯できる声の存在に少しでも希望をもてるようにという思いを込めて制作した作品です。また、「声を上げたところで意味なんてない」と冷笑したり矮小化する揶揄に抗うべく、歴史を紐解くことで様々な社会運動や市民が上げた声たちが実際に社会を変え、前に進めてきたことの可視化をしていく展示でもあります。
さいごに
本noteで改めて今回の展示を通してLadyknowsが届けようとしたメッセージや思いを振り返らせていただきましたが、それらを鑑みても、当該本はトランス差別反対を掲げている Ladyknowsの理念と反するものだと改めて感じています。そして、今回の展示に限らず、1本目のnoteでも記載した通り、運営メンバーそれぞれのアイデンティティやトランス差別に反対する意志や思いの上でも、そしてこれまで代表辻が各種メディアで表明してきたトランス差別への反対の意を鑑みても、それらに反する書籍であることは明らかだと考えています。 にもかかわらず、そのような書籍を今回の展示内で査読せずに置いてしまったこと、そしてそれに対するご指摘への応対の中で多数見受けられた、トランス差別や誹謗中傷を助長するようなコメントを生むきっかけを作ってしまったことは紛れもなく重大な問題であり、その責任をチーム一同重く受け止めております。
また、図書館司書に国家資格が必要であるように、選書というものの難しさを痛感すると同時に、社会の不均衡から生まれるひとりひとりの痛みに向き合い寄り添う展示を開催/運営していく団体として、その責任の重さを再認識した次第です。繰り返しになりますが、Ladyknowsとして選書フローの問題や当該本の影響を反省するとともに、当該本に対する指摘ツイートに反応する形で発生したトランス差別や誹謗中傷を助長するようなコメントが発生する原因を作ってしまったことに対して、心から申し訳なく思っております。
これまで、代表辻のメディア/SNSでの発信や、今回の一連の中でも何度かお伝えをしている通り、私たちはトランス差別に対し明確に反対であり、トランスジェンダーを取り巻く現状について団体内での講習会並びに書籍などを通じた学習を継続していきながら、今後も一貫して差別の撤廃のために声を上げ、働きかけていく所存です。
繰り返しになりますが、ここに改めてトランス差別に反対する意を表明させていただきます。
#トランス差別に反対します
#TransRightsAreHumanRights