「愛している」よりも愛のある言葉は「ありがとう」だと思う
夜中に電話がかかってきた。
好きなあなたからだった。
電話の向こう側には
学生時代の友人と今しがた飲んでいて
久しぶりにほろ酔い気分の陽気な声が聞こえた。
ふっと笑った。
「ずいぶん楽しそうじゃない、いいわね」
「いやぁ、酔っちゃったねぇ」
酔うといつもより1.5倍でテンションが上がる
あなたが可愛いからその声を電話越しに聞けて嬉しく思う。
自宅に帰るまでの間、繋いだ電話では
あいも変わらず互いにいろんな話をしていたね。
時々「前も聞いたわよ(笑)」って
トピックも何個かあったりしてね。
その繰り返し話題を重ねるのも
なんだか耳心地が良くってさ。
「それ3度目!」と笑って返すと
ちょっと間をおいてあなたが言った。
ーいつも、ありがとうー
ーほんとうに、いつもありがとうー
1秒くらい間を開けて私もいった。
ーなに急に。
ーでも、こちらこそいつもありがとうなんだよー
私ね、あなたから
「ありがとう」って言われるの、好きだな。
*
私とあなたの間には
好きだとか、愛しているだとか
そんな甘い言葉を交わすことはなくって。
でも、なんか
お互いがお互いを大事に思っていることは
なんとなく伝わっていて。
それが友達としてなのか
それとも特別な人としてなのか。
私とあなたの気持ちもよくわからない。
時々はっきりさせたい衝動にも駆られるんだけど
別に急がなくていいかと、衝動を手放したりして。
そんなあなたが私に返してくれた
その「ありがとう」は
単に私があなたに
何かしてあげたことに対してではなくって
いつもそばにいてくれての「ありがとう」に
聞こえたんだ。
*
「ありがとう」
その響きを聞いた時
思わず鼻の奥がツンとした。
嬉しかった。
嬉しかった。
嬉しかった。
「好きだよ」よりも
「愛している」よりも
「ありがとう」が嬉しいなんて。
私、思いもよらない感情に出会った。
ありがとうがなぜこんなに嬉しいの。
それはきっと
心の奥深くから自然に生まれる
本当の愛情だからだと思うから。
*
好きだよ
愛している
可愛いね
これってさ
自然と言いたくなることもあるけど
でも、どこか一方的な思いにも感じない?
私の想いを君に知って欲しいです。
あるいは、そうやって言えば好きになってもらえる。
なんていう時の駆け引きの材料にもなる言葉。
好きも、愛しているも
相手に想いを与えようとする言葉だよね。
でも本当の好きや愛しているは
言葉にするのではなく、感じるもの
….ではないのかなと思う。
好きや愛していると言葉にした瞬間
なんだかそこに価値がなくなるような
まやかしのようなものにも時々思えるんだ。
もちろん思わず言いたくなるほど
感情が昂ることもあるけれど。
だけどそんな時こそ
実は好きだよとか、愛してるって
なんか言えない…なんてことはない?
でもさ「ありがとう」は言えるよね。
しかもその言葉に絶対、嘘はないの。
本当に思っていなければ生まれない言葉だから。
相手の存在や厚意を受け取って
それが嬉しいと思うから生まれる言葉だもの。
それってさ
それこそが、愛じゃない?
*
あなたがいってくれた
「ありがとう」という言葉は
私を幸せにする魔法がかかっていると思う。
だって私あなたに言われる
ありがとうで頑張れるんだもん。
私の存在をあなたは認めてくれるのでしょう?
愛も優しさも全部ひっくるめて
「ありがとう」って言ってくれるのでしょう?
どれだけ愛されているかとか
私たちの関係はどうなるの?とか
全部どうでも良くなっちゃうくらいよ。
私、あなたといつまでも、いつまでも。
「ありがとう」を交わせる関係でいたいな。