友達よ、さようなら

私は友達が少ない。
連絡をとったり、実際に会ってご飯などに行く頻度で1軍、2軍とランクを付けるとしたら、

1軍(頻繁に連絡もとるし、会う)…1人
2軍(結婚、出産などのタイミングで連絡をとる)…10数人


1軍の友達1人しかいないじゃないか!!



改めて事実を確認すると…ちょっと少なすぎか…?と不安になるが、紛れもない現実なのである(泣)

そもそも年齢も30代に突入すると、遠方へ嫁いだり、旦那さんの転勤やら何やらで各地を転々としたり、そんな友達も多い。

また、子育てをして忙しい毎日を送っている友達には、やはり会う機会が減ってしまうのは避けられないこと。

ただ、ここまでの人生でそっと距離を置いて意図的に疎遠にしてきた友達も少なからずいる。

高校生の頃、クラス替えがなく3年間一緒にお弁当を食べ、ふざけ合って、笑い合った友達ですら大人になれば価値観や考え方が変わってくる。

特にそれが顕著に現れるのが「恋人ができた時」もしくは「結婚をした時」だ。

私には高校生の時に仲良くしていた2人の友達がいた。
高校を卒業してからは一旦それぞれが県外の学校に進学したり、県内の企業に就職したりとバラバラの進路を歩んで行った。

その中でもタイミングが合えば地元で集まり、近況報告などに花を咲かせていた。

もっぱら話題に上がるのは、「恋バナ」や「同級生たちの現在」「学生時代の思い出話」。
まぁ、1回1回の飲み会のタイミングも半年以上空いているので、毎回似たような内容の話になってしまいがち。

20代半ばになった頃、高校の同窓会が開かれるという話が上がった。
私は陰キャなので行く気は毛頭なかったが、2人もそれは同じだったようで。

と、いうのもその頃は同級生たちも早い人は結婚し、子供が2人いるなんてザラだった。そういう人たちから「幸せマウント」を取られそうで嫌だというものだった。

私はそもそも同窓会のような催しが苦手だったのだが、2人はこの「幸せマウント」が許せないようだった。

その頃、2人とも恋人がいたので、別にそんなにマウントを気にすることもないのにな、とも思っていたが、結局私たち3人とも同窓会に出席することはなかった。

その後の飲み会のことだった。
飲み会といってもその日はみんな自家用車で集まっていた為、普通の食事会という形だった。
いつもと同じように近況報告や2人の恋バナ、惚気話を一通り聞いた後、1人の友達が私にこう言った。


「なんで彼氏作らないの?」


確かにその頃の私に恋人はいなかった。
何なら30代手前まで恋人がいたことがなかったのだ。

恋人を作らなかった理由はまぁ、色々あるのだが、当時両親が不仲だった
ということが原因で「結婚=面倒なこと」と思っていたと言うのが1番大きな理由だった。

両親が何度も何度も喧嘩をして、その度に2人の間に入って仲裁をして…仕事も嫌だったが、それ以上に家に帰るのが苦痛な時期があった。

それなのに、両親(特に母)からは結婚を催促されるようなことを言われることがあった。どの口が!と思ってはいたが、のらりくらりかわしていた。

それに容姿は可愛くも美人でもない。ただのゴリラだ。そういうコンプレックスもあって、恋人を作る気が一切なかった。


「んー、今はいらないかな」


などと、適当な返しをした。
私自身、自分のことより人の惚気話を聞いている方が楽しかったので、自分に関心が向かなくていいと思った。

でも、その後に言われた一言で私の中の何かがプツンと切れてしまった。



「えー、いないの?

言えないならいいけど、浮気とか不倫とかはダメだよ?」



…言えないならいいけど?ってなに?
私が嘘ついていると思われてるの?

いや、友達も冗談で言っているだけだ、いつものノリで。

たった一言、いつもなら笑い飛ばせる一言。
なのに、その時の私には軽率でデリカシーのない言葉に感じた。

見ないフリをしていたけど、頭ではわかっていた。
結婚なんてしない、恋人もいらないと思っていた私。

でも両親が私の結婚を期待していること、孫をみたいと思っていること、ひしひしと感じていた。
年齢も当時は25歳くらい。周りは結婚、出産ラッシュ。
両親にも惨めな思いをさせているのではないか、彼氏もおらず、実家に住んでいる長女をどう思っているのだろうか。怖かった。

でも当時の私は自分が誰かと一緒に人生を歩むというビジョンが全く想像できなかった。そもそもそんな人現れるのか。両親と同じように喧嘩の毎日で子供に嫌な思いさせてしまわないだろうか。私と同じ思いは絶対にさせたくなかった。だから子供もいらないと思ったし、結婚も恋人もいらないと思っていた。

そんな漠然とした悩みをずっと抱えていた私には、たった一言。
そのたった一言で、ただそれだけで私は、もうそこにいられなくなった。

次回から飲み会の誘いも何かと理由を付けて断るようになった。
あんなにマウントを嫌っていた2人に、「恋人マウント」を取られた気分になってしまっていた。

人の惚気話を聞くのが楽しいと言いながら、実際は全くそうじゃなかった自分が惨めだった。我ながら拗らせてるなと思ったけど、当時の私は精神も考え方もまだまだ子供だった。

それから2人の友達はどちらも結婚、子供もいる。
結婚式は招待されたけど、断ってしまった。
人の幸せを喜べない、自分は本当に嫌な奴だなと思った。

だけど、今はなぜか心が軽い。
今、連絡を取り合っている友達は少ないけれど、私の心を掻き回すことはない。
会って美味しいご飯を食べながら近況報告やオタク話を楽しむ。

友達は多ければいいものではない。
それより少人数でも心地よいと思えて、気軽に会話ができる友達がいることを感謝しながら生きていきたい。


いいなと思ったら応援しよう!