play room第七期募集にあたり

こんにちは。野村です。
"やまだのむら"と"room42"という演劇ユニットを2つ主宰しているフリーの俳優で、play roomという演劇を学べる場所も運営しています。

今回は主宰する演劇レッスンplay roomの第七期を開催するにあたり、改めて今考えていることを書かせていただきます。
ちょっと長文になりますが、気になるところだけでも読んでいただけると嬉しいです。


play roomってなに?

play roomとは、「安価で継続的に演劇を学べる場」として、2019年に作った演劇レッスンを受ける場になります。
講師に黒澤世莉さん(@serikurosawa)をお招きし、4ヶ月ほどかけてマイズナーテクニックをベースに演劇を学んでいただきます。
年に一度開催し、今年で7年目になり、延べ200名以上の方にご参加いただいております。

マイズナーテクニックって?

”マイズナーテクニック”はアメリカのアクティングコーチ、サンフォード・マイズナーが開発した演技テクニックです。
自分の役柄をどうする、形をどうするということよりも、自分の身体、楽器をどうなっているかを知っていくことをスタートにする。人のことを観察していく、知っていく、そして関わっていく。そこから演技を深めていく、という考え方。まずは自分のこと、自分の身体を掘り下げて、そこから役柄を演じるというところに展開していくテクニックです。

play roomをなぜ作ったのか

最初の成り立ちとしては、フリーの俳優として活動していた僕自身が、技術アップを望むも、なかなか自分の理想的なレッスンの場を見つけられず「ないなら自分で作っちゃえ」と思って作った場所になります。

自分にとって理想的なレッスンの場というのは、
・安い
・連続して学べる


この二つが叶えられる場所です。

・安い
特に小劇場の俳優にとって、金銭的な部分は結構シビアだと考えています。
舞台に出演するとなると、バイト時間は稽古時間に消えていき、本番期間中もバイトが出来るわけではない。かといって、出演のギャランティはとてもじゃないが1ヶ月の生活費にも満たない。

自分自身学ぼうとした際、内容に興味があっても高額なレッスン費用を目の当たりにし「あ、これ無理だ」と金銭的な理由で諦めたことが多々あります。

・連続して学べる
では高額なレッスン代を避けて、自分でも通えそうな1000円~3000円/回ぐらいのレッスンを受け、その時はとても満足して「きっとうまくいく!」となっても、実際の現場になると「いや、このケースだとどう使ったらいいんだ・・・?」と感じたり、時間が経つことで学んだこと自体が曖昧になっていき、結局いつも通りになってしまうということもありました。

講師には講師の生活があり、適切なギャランティがあると思います。

しかし、当時の自分は出演機会を減らしてでも学ぶ、ということはあまり考えておらず、バイトを頑張ってレッスン代を稼ぐ、ということも考えていませんでした。

ただ僕は演技が上手くなりたかったし、お金はなかったので、
「自分で作ろう」となりました。

そのあたり、当時の僕の勢いみたいなものが感じられる文章があるので、もし興味あるよという方は読んでみてください。


クラスの風景(2023年開催)

現在思ってること

と、成り立ちについては書かせていただきましたが、6年ほど開催している中でコロナ禍があったり、自身の生活環境が変わったりと色々な事がありました。

その中で、play roomを続けるべきかどうかということを考えては「今回でおしまいにしようかな・・・」と考える事が何回かありました。
これは、費用を最小限にするというこの場のコンセプト的にどうしても収益が上がりにくく、労力に対して金銭的なリターンが少なくなりがちですし、安全性の向上のために外部講師を招きカリキュラムの充実を図ったりする中で、参加者からの参加費だけではほとんど手元にお金が残らないという実情が悩みの比率としては大きいです。

が、とはいえここまで続けてきたのはいくつか理由があります。

・やっぱり安価で継続的に学べる場ってあった方がいいよなぁ・・・。
・演劇をするのって楽しいよね。でも楽しくない現場もあるんだよなぁ・・・。


というようなことを感じています。

結局のところ、小劇場を取り巻く環境は大きくは変わっておらず、
主宰も劇場もスタッフも俳優もみんな金銭的に苦しんでいるのが実情だと思っています。(そうじゃない人たちもいるけども!)
夢がないですが、それはそれとして現実を受け入れています。

つまり、自身が感じていた「お金はない!でも学びたい!」という気持ちはなかなか満たされづらいという環境自体は大きくは変わってないんじゃないかと考えています。
(とはいえ、ここ数年で魅力的なワークショップやレッスンもたくさん増えてきて、とても良い流れだなぁとは感じております。)

特に20代を中心とした若い世代にとって、やる気はあるけど金銭的にな理由で学ぶことを諦めてしまう、という問題はまだまだ全然あると思います。
自分自身が30代中盤になり、そういった方々に学びの場の提案をさせていただくというのは、参加者の感想を聞きながら改めてやっていきたいなと感じた事でもあります。

また、こういう場を運営していると若い俳優から現場の相談を受けることもあります。
話を聞いていると、現場でとても辛い思いをした方がたくさんいるな、と感じています。
楽しくて始めた演劇だったはずが、いつの間にか自信を失い、「経験の少ない・若い自分は何を言われても仕方がない」と考えてしまい、演劇をすること自体がストレスになってしまうのは、とても悲しいことだと思います。

そのため、play roomは出来るだけ「安全で、個々人を尊重する場」として運営しております。もちろんそれは、万人にとって心地よい空間ではないと思いますが、少なくとも、攻撃的な言動が生まれにくく、かつ発生した場合もきちんと対処できる場を目指しております。

願わくば、レッスンを通して「演劇って楽しいな!自分は思ったことを言っていいし、不当な扱いを受けるべきでない」と思ってもらえるととても嬉しく思います。

というようなことを考え、まだまだこの場には価値があると考えもう少し継続して開催してみようと考えました。

play room creations(2024年10-12月開催)

play roomの特徴

大きく3つあると思っています。
①価格が比較的安価
②継続的かつ、学んだことを実際のシーンに活かせるカリキュラム
③安全対策


①価格が比較的安価
1回あたり7時間のレッスンを2000円で受けられる内容です。
月毎のお支払いなので、全回出席した場合の金額にはなりますが、かなり安価な部類かと思います。
費用負担が比較的少ないと思いますので、お金を理由に諦めてきた方々少しでも減ってほしいなと願っております。

ただ、これだけだと運営費用が不足するため、play roomではクラウドファンディングを行なっております。
第一期の時から「出資者と受益者を分ける」ということを実施しており、
出資者=お金を払う人
受益者=レッスンを受ける人
を分けて考え、学びの場の応援をしてくれる方々・俳優の応援をしてくれる方々からご支援いただきここまで運営してこれました。
(ものすごく感謝しております。本当にありがとうございます。)

②継続的かつ、学んだことを実際のシーンに活かせるカリキュラム
play roomでは、マイズナーテクニックを前半に学び、後半には学んだことを実際のシーンで活用するところまでをカリキュラムに含んでおります。

学んだことをどう活かすのか、どう深めていくのかという部分が自身の経験からもとても重要だと考えております。
始めのうちはあまり理解できなかった事が、回数を重ねたり他人を見ているうちに徐々に理解できていく、というのはとても良い経験になると思いますし、何よりトレーニングは実用してこそだと思います。

レッスンを通して、普段の現場でも使える技術として深めていっていただければと思います。

余談にはなりますが、現在play room creationsというplay roomのカリキュラムを終了した方を対象に行うレッスンを行なっております。
こちらはよりシーンスタディにスポットを当てた内容となっており、play roomで学んだことなどを更に深めていける場もございます。

③安全対策
ここ数年で演劇や映画の創作環境の問題がSNSを中心にスポットが当たってきたと感じております。被害に遭った方はとても辛い思いをしたと思います。
同じような思いをする方が現れないように、環境を良い方向に変えていくために自分に出来ることをやっていきたいと思います。

不当な扱いを受けることがなく、一人一人が自由に楽しく創作できる環境がどんどん整っていって欲しいと考えておりますし、声をあげやすい環境にしていくことがとても重要だと思っています。
ただ、それはいきなり変わるのではなく、関わる一人一人が意識することで、少しずつ変わっていくと考えています。

その中で、
・そもそもハラスメントってなんだろう?
・どれがハラスメントなんだろう?
・健全な環境とはなんだろう?


のような「知識」を得ることが第一歩だと思っています。
ただ、そういった知識を得る機会というのはかなり限られておりますし、個人では難しい面もあると思います。

そのためplay roomでは最初の1回は外部から講師をお招きし、ハラスメント対策講習を行なっております。
結構みっちりと行う内容ですので、かなり勉強になりますし、色々なことを考えるきっかけになれば幸いです。

また、ハラスメントガイドラインの策定・対応窓口の事前共有などを行なっております。
最大の問題は、声をあげられないことだと考えておりますので、違和感を感じたり、不快な思いをしたり、モヤモヤした時に声をあげやすい環境になるよう運営させていただきます。

最後に

色々と書きましたが、結局のところどんな場であっても合う人、合わない人というのは出てくると思います。

play roomの初回に毎回参加者の皆さんにお伝えしておりますが、
「やめたくなったらいつでもやめて大丈夫です!」

内容に自信がないとか排他的というわけではなく、僕は自分自身お金も時間も自分が価値があると思えるものに使いたいと思っています。

参加いただく皆さんにも同じように選択していただければと考えております。
皆さんの人生ですので、皆さんに決めていただくのが一番良いと思います。

この場所に居続けるか、残るかはご自身で決めていただいて大丈夫です。
離れることを選んだとしても、その選択を応援します。

play roomは手取り足取りというよりかは「皆さんがどうしたいか・どうなりたいか」を問い、そのための補助をさせていただくことを重要視しています。

皆さんが今まで以上にお芝居を楽しんでいただける手助けができれば、とても嬉しいです。

以上になります。
play room第七期の募集開始は2025年1月19日を予定しております。
もし気になった方はぜひご応募ください!
最後までお読みいただきありがとうございました。

野村亮太

公式HP:

Xアカウント:
https://twitter.com/play_room_info


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