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阿蘇山:中岳、高岳(2022.8.8)②
上り初めから景色は抜群に良く、何度も何度も振り返りながら歩いた。
阿蘇山をコンプリートするのは結局仕事で熊本に行き始めてから1年近く経ってしまったタイミングになったけれど、それもかえってよかったかもしれない、と今になって思う。
1年の間に熊本のいろんなところに行ったおかげで、こうやって山上から街を見下ろすと、大体の位置関係がわかるようになっていて感慨深い。
車で走り抜けたいくつもの道や、いつも仕事で行っている、昨日も行ったし明日も行く、阿蘇の南外輪山。いつもはあそこから阿蘇五岳を眺めているわけで、逆アングルに立っていることが不思議な気分だった。
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山頂エリアに到着すると、仙酔尾根から上がってきた人や草千里からの人(?、火山活動の影響で、もしかするとそちら側は通行止めだったかも)と合流し一気に人が増える。
それでも混雑という感じではなくてとてもちょうどよかった。
天気はピーカンとはいかず夏らしい雲があちこちに浮かぶ天気で、山中にもおそらく雲が浮かびちょうど視界を遮っていた。
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がしかし、中岳山頂に到着するとちょうど、その時を待っていたかのように周囲の雲がすーっと一斉に退き、火口が姿を表した。
まるでそれが演出のようで、あまりにも神がかっていて、こんなことある?!、と思わず声が出た。そうして現れた中岳火口は今まで見たことのあるどの火山よりも火山然としていて、確実に初めて見る光景だった。
登る過程でずっとその姿がチラチラ見えているよりも、この粋な演出のおかげでより素晴らしい光景に映ったことだろう。
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iPhoneXでこの写り、すごい
4月に杵島岳と烏帽子岳に登った際、中岳・高岳の入山規制はまだ解かれておらず、でもまあ解かれなかったとしてもきっと同じような山容、同じような景色だろうから行けなくても構わないかな、と思っていたのだがそれは大きな間違いだった。全然違う。
絶対に、ここに立たなければ見ることのできない景色だ、と思った。
噴煙を上げる中岳の姿は草千里からでも見ることができるが、臨場感が桁違いである。
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どうにかこの凄さを写真や動画に収められないかと試みたが、全然写し取れそうにないなと早々に諦めた。
きっと今私が抱いている感動は、全身を使って体感している感覚込みのことであって、どんなに高性能なカメラでどんなに上手に切り取ったとしても、同じ感動を味わうことは絶対に不可能だな、と思った。
それは、コピーは本物に敵わないとかそういうことが言いたいのではなくて、自分の感覚はどうやったってその場にいる自分だけのものであり、何かを媒介して他人が同じようにそれを感じ取るのは不可能である、だからわたしはどこかに行くことを一生やめないだろう、というのを強く思った。
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それから高岳東峰までをぐるりと歩く。
歩き進めると場所によって大分方面がよく見えたり、根子岳が間近だったり、でもそれら全部がもうすでに行ったことのある場所なのが嬉しい。
ああ、それにしても阿蘇は美しいなあと、そしてこんな素敵な場所に仕事で継続的に行くことができるなんて幸せなことだなあと思う。
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外周をぐるりと周り、鉢の中を突っ切るように歩き、いろんなコースを楽しんだあと、下山は中岳火口に限りなく近づくルートを通って下る。
下山でもう一度廃墟やシェルターの脇を通り『火の鳥』気分を味わう。そして13時ちょっと前に下山完了。
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駐車場では、大阪ナンバーのバンから出てきた男性が洗濯物を干していて、その後後部座席でパソコンを広げて仕事をしていたのがとてもかっこよかった。バンライフに登山を組み込んでいる人は初めて見たかも。
温泉は以前も一度行った道の駅阿蘇の隣の温泉へ。400円なのに広くて綺麗でいいお風呂だ。九州は本当に温泉レベルが高いなぁとつくづく思う。
おわり。