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住みたい神戸(2022.2.23-26)①(大阪ワヤン編)

楽しみにしていた大阪出張がなくなってしまった。出張で行ったまま、うまいことテレワークにして関西に居座ろうと思っていたのに。
すでにいくつか楽しみな予定を入れてしまっていたものだから、自腹でもまあいいか、と予定は崩さずプライベート関西行きを決めた。

宿泊地は灘駅と王子公園駅の中間に位置するゲストハウス萬家だ。
ずっと気になっていたところを、先日甲府に泊まりにきたNさんが「おすすめだよ」と教えてくれて3泊することに。この滞在がとてもよかったので、人生でいちばん神戸にゆっくり滞在した日々のこと、プラスアルファを。

■2/23
1日目、今回は新幹線で新大阪へ向かう。最初の予定はガムランの公演である。これにどうしても行きたかったのがいちばんの理由で、関西行きを崩せなかった。
新大阪で御堂筋線に乗り換えて千里中央行きに乗ると、とたんに北摂的な空気に包まれて、帰ってきた〜という気分になる(2年間、豊中市に住んでいた)。かつて自転車でも何度か走っていた新御堂沿いに電車が進んでいく。

立派!

公演が行われる場所、箕面市立文化芸能劇場は千中の駅から2キロくらいの距離があったがこれくらいは歩いてしまうのがいつものパターンである。
わたしが大阪から引っ越した後にできたというこの施設は、駅から少し距離がある以外はよい施設で、市立図書館や、まさかの阪大も付属していた…

今回の公演は、わたしが阪大にいた頃参加させていただいていたガムラングループ「ダルマ・ブダヤ」の、ワヤンと呼ばれる影絵芝居の舞台である。実はワヤンを見たことがなかったわたし、とっても楽しみにしていた。
ダルマの皆さんとも引っ越して以来初めて会う。初めての大阪、初めての一人暮らしをしているわたしをいつも優しく気遣ってくださった皆さんに会えることからして楽しみである。

この公演に行きました

建物に入ると早速、今回の舞台には参加していないというメンバーのおふたりに遭遇する。嬉しい〜!と思いながら数年ぶりゆえのややぎこちない挨拶。お互いご家族と一緒だったのであまり長話はせず。
エントランスホールは人で賑わっていて、集客が万全なことにすごい、と感心する。

さて、ワヤンの開幕である。ワヤンというのはもともと、本場インドネシアでは、お祭りみたいな雰囲気で、夜通し上演されていて、お客さんも一方向ではなくどこに座ってもよくて、長い上演の間、ご飯を食べたり、時に寝そべったりしながら見ているものらしい。本場のワヤンはまた全然雰囲気が違うんだろうなあ。いつか一度、見に行ってみたい。

ガムランセットとワヤン

ステージが明るくなり、壇上にダルマ・ブダヤの皆さんが登場した時、わたしはなんだかそれだけで嬉しくて泣けてきてしまった。
わたしの母親世代や、もしくはもう少し年上の方もいらっしゃり、コロナを経てこうしてお元気で舞台に上がっているだけでもう幸せである。

3年ぶりに聴いたガムランの音色は、ひとつの大きな音のかたまりとなって客席に届き、とても心地よい響き。
今まで演奏者側にいたもので、客席で聴いたことがなかったけれど、こちらに座ってみると、ダイナミクスの差が大きい音楽なのだと気づく。
指揮者のいないオーケストラで、その調和がしっかりと保たれているのがすごいことだなと思う。アイルランド音楽は盛んにアイコンタクトをするけれど、ガムラン奏者たちは目も合わせずに音を合わせていくのが今になってみると不思議だ。
ちいさな音も、大きな音も、全部心地よかった。

曲もどれも素敵だった。後から聞いたところ、代表の山崎さんが作った曲も混ざっているらしい。 
わたしは詳しくないのでどの曲が伝統曲でどの曲が新作曲なのかわからなかったけど、わからないくらいに違和感がないのもすごいことだと思った。山崎さんの作る曲がまたいいのだ。
以前一度、在籍していた時にも、わたしは参加していなかったが彼の曲を演奏する機会があって、わたしは練習中隅で聞いていたのだけど、なんだか胸が熱くなってしまってひとりこっそり涙をぬぐったことがあった。泣くほど感動したことを、恥ずかしくて必死に隠したのがいい思い出だ。

そして肝心のワヤン!影絵人形を操る人のことをダランというのだが、何十個にも及ぶ人形を、たった一人のダランが操る。
人形だけでなく、全体の指揮や、打楽器、語り、歌までもこなしてしまうマルチプレーヤーなのだ。ダランを務めるのはインドネシア人のナナンさん。わたしも何度か会ったことがある。お茶目な良い人だ。この、ダランが本当にすごい!一体どうやって人形を操っているのか全くわからない。

ひらりと人形を翻したり、時には放り投げたり。片手にいくつも人形を持って動かしたり、動きの美しさや見せ方が素晴らしく、2時間半の長丁場を飽きもせずずっとわくわくと見続けた。
特に戦闘シーンの臨場感が凄まじく、思わず前のめりで見てしまった。すごいものを見た、という気分だった。これはきっと、その場でないと味わえない感覚…ぜひまた再演してくれないかと熱望している。
人が行う芸能は素晴らしいなあということ、知らない文化を見る機会は良いものだということを思った。

終演後、興奮冷めやらぬわたしは皆さんに感動の感想を伝えてまわり、最後まで居残ってちゃっかりステージで一緒に写真を撮ってもらった。
また見る機会はないものかと、それからちょうど1年経った今でも期待している。

このシートの色がたまらなく好き

話の流れで、阪急に乗って神戸方面に行くと言うと、出演していないメンバーのIさんが蛍池駅まで車で送ってくださるという。お母様もご一緒の中恐縮しながらもお言葉に甘える。大阪の人は、本当に皆優しい。
蛍池から阪急に乗るといよいよ「帰ってきた」という感覚、阪急は本当に落ち着く。世界一好きな電車だ。

まだ神戸に着いていませんが、普段より長くなりました。
つづく。

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