26最後の夜、少し期待して目を閉じ眠る。27最初の朝、V男。
「僕も全然テレホンカード使ってました」
「テレビ欄で番号見て録画してました」
「VHSの爪折ったとこにテープ貼ってました」
とか言うと、95%の確率でおじさん・おばさんの先輩方が大変嬉しそうにする。それを見て不思議と、こっちもちょっと嬉しかったりするのですが…。
でもそれってなんか目を潤ませて大人にお年玉をせがむような、自分の半端な若さとアザトさを煮詰めた卑怯な行為のようにも思いました。
1月20日、26歳最後の夜です。
※『春日語カレンダー2021』 1月20日「大丈V」
僕の間隔で言えば
26歳は「25歳の延長戦」で、
28歳は「30代の準備運動」。
エアポケットのように見放されて、分かりやすいステータスの岸に寄る辺もなく、少し曖昧だけど、貯金額を忘れて瞼上げて大声で生活を営みたい、就活スーツの黒潮を横目にBBQする「大学3年の夏休み」みたいな1年。が、27歳なんじゃないかと。なんかちょっと特別で、“共感覚”的なニュアンスで言えば、「27」は冷たくて甘い感じがする。アイス。アイスですね。ノーブランド、単色の紫ぶどうキャンディーバー。「27」。あとアナゴさん、27歳らしいですね。アナゴさんというか、アナゴね。
26最後の夜、少し期待して目を閉じ眠る
27最初の朝、何事も無くまた目が覚めた
(Creepy Nuts × 菅田将暉「サントラ」より)
好きな曲の歌詞ですが、なんか分かります。根拠のない期待感も、たった6時間 目をつぶり続けただけでそれが羽化するわけではないということも。分かります。当たり前だけど、ガッカリしちゃう。そりゃ、そうだよね、って。これを書き終わった6時間後の僕も、何事もなくまた目を覚ます予感です。
人生を映画やドラマに例えたこの曲の中で、唯一登場する数字であり、具体的な年齢。26歳から27歳。そういえば、有名なロックスターは27歳で亡くなった方が多いですね。29歳(詩を書いた当時は28歳?)のR-指定さんが、27歳で何を経験したのかは分かりませんが、何かの折り返しのような、火種のような。ロケットの2度目のエンジン切り離しのタイミング。27歳って、そういう間(ま)のような気がしています。
パッと咲き誇り散って行くのか?
じっと枯れ残り腐って行くのか?
26最後の夜、少し期待して目を閉じ眠る
27最初の朝、何事も無くまた目が覚めた
(Creepy Nuts × 菅田将暉「サントラ」より)
直前の歌詞を見てみると、「AかBか」と聞いている割には、ともに花弁をしぼませたBAD ENDです。先行きへの不安に押しつぶされそうで、弱い自分を焚きつけているような。
デカい火花で音を立てて空に溶けていくのか、ただ倉庫の奥で火薬を老けさせていくのか。答えはやっぱり「燃焼し続けたい」。青かったり、オレンジだったり、弱火でコトコトだったりしてもいいから、とにかく灯りをちらつかせて、消えないように、薪を切らさず。
どれだけ売れている芸人でも、みんなラジオで「いつ自分たちも仕事がなくなるか分からない」と言っている。それは意地悪な謙遜ではなくて、彼らが肌をたぎらせて、輝いて見える理由なのだと思います。
エンターテイナーの目線で描かれたこの「サントラ」という曲ですが、裏方の仕事である僕にとっても刺さる歌で、色んな言葉が心の端をかすめます。
大勢の他人を蹴落としてでも自分を認めさせる仕事
(Creepy Nuts × 菅田将暉「サントラ」より)
まだ5年しか仕事をしていない自分ですが、業界の”競争社会”な片鱗を感じることもあります。僕以外の誰かが番組を外れたり、僕以外の誰かにしか声がかからなかったり。業績の少ない若手、口コミや人づての紹介以外の、”選んでもらえる理由”、”選ばせる理由”が必要なのだと思う。
作家一年目の時に先輩に言われた「君のウリは何なの?」という質問の答えが、今になっても出せない現状に焦りを感じます。
「君ら世代はよくYoutubeやってるよね」
「あれ、髙﨑くんはYouTubeやってないの?」
去年だけで10回は言われました。
そのたびに僕は「やってませんね」と。「30前後の周りの人はやってる人多いすね。」と、へらへらと笑います。すると何と言いますか「あ、じゃあコイツはメインストリームに乗れてないのだな」という顔をされることも多いです。"YouTube界隈のこと詳しい"という”若い世代の作家の偶像”が、柔らかい言い方すれば「あるある」が広まっている。「じゃあ始めればいいじゃん」という話ではあるのですが、いざ今抱えている仕事に向かい合ってみると、リソースをそこにフルで割いてしまうため、余力も出会いも無くなってしまいます。「絶対私でLINEの会話終わらせるADマン」と丁寧対決する体力も残っていません。これは課題ですね。
あの日でっち上げた無謀な外側に
追いついてく物語
(Creepy Nuts × 菅田将暉「サントラ」より)
「叶わなかった」が恥ずかしくて、大口をたたかない。堅実で、現実的で寂しいです、こんなの。パンくずみたいな叶いそうな夢を、自分のちょっと先に放っては、ちょっと歩いてそれを拾って「わーやったー」なんて。成長の自作自演です。
夢に賞味期限、タイムリミットは存在します。仕事をしたかった人が亡くなるかもしれないし、憧れのコンテンツが先に終わるかもしれない。
自分の横に、押せば「数十メートル先でバレーボールが落下するボタン」がある。もう踏み入れているのだから、ボタンを押してデケェ乃が美の生食パンが一斤落ちてきているのだから、あとはそれ目がけて走るしかないのです。
そんなアキレス腱に力を入れる1年に。
そうだ!27歳の目標は、「ショットガンタッチ」だ!!
きっと大丈夫だと思います。まだ全然、転んでもいいでしょう。
膝擦りむいて、かさぶたでカチカチにしていこう。
※『春日語カレンダー2021』 1月21日「V男」
V男(お)。
V男じゃん。じゃあそっか、大丈夫だ。
大丈夫です。