美味しすぎない「ミックスフライ」
クリーニング屋の横にある扉を潜ると、メニューの写真が立ち並ぶ。海鮮料理と洋食が混在する阿吽。口を開けた海鮮の阿形と口を閉じた洋食の吽形の一対の像となるのが、ここ「キッチンあおば」だ。
店内は美味すぎない感の少ない明るい空間。ジャングルのように育つ観葉植物。ハワイアンでアロハなファブリック。店内を眺めていると、チャイムが鳴ると慌ただしく女将さんが走る。なんだ、表のクリーニング屋とキッチンあおばは中で繋がっているのか。
今回は揚げものをいただきたいのだが、メニューにはミックスフライ(900円)と7種フライ(900円)が並ぶ。違いが分からないが、なんとなく7種フライの方が色々な種類を楽しめそうな気がする。ミックスフライが8種のフライなのだとしたら、恐らく「8種フライ」と名付けると思うからだ。
よし決めた。7種フライを食べよう。程なくして運ばれてきた皿には、茶色いフライが敷き詰められている。そのレイアウトはスーパーマーケットの折込チラシのように忙しない。
数えてみる。確かに7種類あるようだが、皿にあるフライは9個だ。何かが2個ずつ乗っている。エビ、お前は分かる。おい他の奴ら、お前ら誰だ?その正体が分からぬまま、闇の中を彷徨うようにフライをひたすら食べ続ける。あれこれ詮索せずに、ただ口の周りパン粉だらけにして頬張る。一つひとつは美味い。だがこんなに食えんのよ。この辺りの過剰なおもてなしが美味すぎない店の所以だ。
あ、またチャイムが鳴った。女将さんはレジで会計している。厨房から出てきたオーナーシェフが、小走りでクリーニング屋に向かって行った。
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