美味しすぎない「ロースカツカレー」にオムレツをトッピング
それにしても暑すぎやしないか?吹き出す汗がマスクの内側を不快に濡らす。そうだ、世の中がこんな風になる前は、オリンピックの暑さ対策が騒がれていたんだった。毎年一年振りに思い出す。日本の夏は不快だったのだと。
汗を拭い、開店直後のドアを開ける。若干臭う風も冷たいから心地よい。A看板の準備を横目に席に深く腰掛けた。この店は光るべきネオンが光らない。ネオンが光る頃合いになると「カレー・ザ・ハウス三多賀」は扉を閉めるのだ。
それにしても「カレー・ザ・ハウス」の名である。アンドレ・ザ・ジャイアントやアブドゥーラ・ザ・ブッチャーを彷彿とさせる強者の印象。ラーメンやら丼物のメニューもあるようだが、当然カレーを食べるべき強者の店だ。奇しくも今日7月17日が命日であるブルーザー・ブロディは、惜しくもブルー・ザ・ブロディではないのだが、それはカレーを食べない理由にはならないだろう。
2021年、ブロディの命日は土曜日だった。そんな週末のカレー店に、お一人様の男性たちが次々と吸い込まれてくる。開店から程なくして席が埋まった。4人席に汗を拭う男たちが一人ずつ試合を待つ。カツカレーのコールが飛び交う店内は、心なしか室温がぬるくなった気さえする。
そこで釣られるように「カツカレー」を頼んでしまうのだが、ギリギリでオムレツのトッピングをコールしたのは彼らと一線を画したかったからなのだろう。
学食のような佇まいで配膳されたカレー。カレーとカツとオムレツが並ぶ様は、まるで夢の6人タッグの赤コーナー。主役のカレーは甘味が強いがスパイスもそれなりの存在感。カツ、オムレツともにメインを張ろうと思えば張れる勢いだ。その後カツカレー、オムカレー、オムカツとツープラトンの時間を楽しみ、最後はオムカツカレーでフィニッシュを決め込む。なかなかに有意義な時間だったじゃないか。
エアコンで引いた汗がカレーのスパイスでぶり返したようだ。よし、アイスコーヒーでも飲んでクールダウンしようじゃないか。満足気にメニューを眺めるも、表裏と目を運ぶも、この店にはドリンクなんて存在しなかった。
「ここはカレー屋だ!喫茶店じゃねえ!!」
そんな叫び声が頭に響く。そっとメニューを置き、よく冷えた水を2杯ほど飲み、猛暑日間近の街へ繰り出すことにした。