【イベントレポート】LivingAnywhere Commons 八ヶ岳北杜×モリウミアス / 食育&ワーケーションイベント
こんにちは、トラベルライターの俵谷です!
2021年4月1日から2日にかけて、LivingAnywhere Commons八ヶ岳北杜(以下、LAC八ヶ岳北杜)で開催されたアクティビティに参加してきました。
アクティビティのテーマは「食育」。
食育とは、「旬の食材を通して、季節と食のつながりや食材についての理解を深める取り組み」のことです。
今回は、石巻市雄勝町にある複合体験施設「モリウミアス」代表の油井 元太郎さん協力のもと、イベントが開催されました。
ワーケーションで、大人も子どもも実りある時間を
今回のイベントは、親子で参加するワーケーションイベント。
イベントの目的は、八ヶ岳を感じ、循環する暮らしを体感してもらうこと。そして、旬の食材を通じて季節と食のつながりや食材についての理解を深めてもらうことです。
子どもはただ遊ぶだけでなく、体験をとおして学びある時間を過ごしてもらえるような内容になっています。
また最近は「ワーケーション」という働き方がブームになっていますが、ワーケーション施設は託児所がない場所も多く、お子さんを持つママ・パパが置いてけぼりになってしまっているのが現状です。
今回のイベントでは、子どもたちにはアクティビティに参加してもらう間、保護者には別室で仕事に集中してもらいます。
そうすることで「子供を留守番させて、自分だけ旅先で仕事をするのも気が引ける」という罪悪感を感じずに、仕事に没頭できるはず。
果たして今回のイベントは狙い通りに行くのでしょうか?
【1日目】大人は「職」に、子どもは「食」と向き合う
子どもたちが食堂に集まり、早速イベント開始です。まずは子どもたち同士で自己紹介&ニックネームを決めます。
しかし子どもたちも緊張しているからか、なかなか自己紹介が進みません(笑)。
その後なんとか自己紹介を終え、LAC八ヶ岳北杜の施設探検へ。
施設を巡りながら、危険な場所や入ってはいけない場所を教えてもらいます。
再び、食堂に戻ってきました。いよいよ最初のプログラムである「わかめプログラム」に移ります。
ここでモリウミアスの油井さんから、モリウミアスのこと、東北のこと、わかめのこと、自然のことについて説明がありました。
子どもたちも少しずつ興味が出てきたようです。
▲モリウミアスさんが、石巻市雄勝町から運んできたわかめ。子どもたちもテンションアップ。
わかめって出荷前はこんなに大きくこんな形をしているんですね。僕も知りませんでした。
子どもたちは「くさい」「ぬるぬるする」と言いながら触れていきます。
食べ物にくさいなんて失礼と思ってしまいますが、これも子どもたちから出た純粋な感覚・感性です。
▲わかめに付いた小さなエビを発見した子も。
包丁の使い方を教わりながら、子どもたちがわかめを食べやすい大きさにカットしていきます。ここで調理したわかめは夜ご飯の材料になります。
一旦ここでわかめプログラムは終了。
つづいてお米を炊くため、燃料にする木を裏山から集めます。
裏山に流れている川の水で、お米を研ぎます。
セットした鍋にお米を入れて、集めた木に点火。炊けているか適宜確認しながら火を調整していきます。
そして待つこと数十分…炊けたお米がこちら!
夕食までしばし時間があるので、ここで働いているパパ・ママにお話しを聞いてみました。
お話しをしてくれたのは、諸星(もろほし)さん。
諸星さんの会社は完全在宅だそうです。しかし、住んでいる区域の保育園は校庭と屋上が利用禁止で、室内でしか遊べないことから、預けることに罪悪感を抱いていたそう。
「今回のように子供の面倒を見てくれる人がいると、罪悪感を抱かずに仕事に集中できるし、子供は自由に遊べて良いですね。八ヶ岳の空気はとても澄んでいて、景色もきれいで、リフレッシュできました。」
とても良い感想をいただきました。
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気がつけば日が暮れて夕食の時間です。さきほど子どもたちがカットしたわかめを使って、モリウミアスの松永さんが料理してくださいました。
▲写真右側に写っているわかめの「くき」を使ったサラダが絶品。コリコリしていて箸が止まらないおいしさで、ビールや日本酒との相性もバツグン!
▲八ヶ岳の養鶏牧場ROOSTERの徳光さんが作った卵や、DORO FARMの阿久津さんの野菜もふんだんに使っている。
▲夕食の時間に、こだわりの野菜や卵について説明してくださいました。
子供たちと一緒にアクティビティに参加しましたが、大人でも楽しめて、かつ学びになる内容でした。特に、子どもたちだけで取り組むという点が良かったように感じました。
自分で問題を対処する力や他の子供とうまくやっていく力をつけていく様子が見れて、子どもたちの成長の早さに驚嘆した一日でした。
【2日目】野菜くずや生ゴミを野菜の肥料に。小さな循環を体感する
2日目は、親子で一緒に裏山を散策します。
途中、丸太の橋を渡ったり……道なき道を駆け上がったり……日頃、デスクワークばかりで運動不足な僕には、少しばかしハードな道のりでした。
少しひらけた場所に出たところで、目を閉じて聴覚や嗅覚など五感を研ぎ澄ませます。皆おもいおもいの過ごし方をしていました。
東京だと、道は人で賑わい、空を見上げればビルや高速道路が見え、なかなか自然に触れる機会は少ないですよね。
鳥の声やそびえ立つ木々から差し込む木もれび、風が吹き枝葉がこすれる音……東京にいてはまず見過ごしてしまうような音や光景ばかりでした。
2日目のゴールはコンポスト作りです。
コンポストとは、枯れ葉や家庭で出た生ごみなどの有機物を微生物や菌の力で分解発酵させてできた「堆肥(たいひ)」のこと。土を肥沃にし、おいしい野菜や果物が育ちます。
早速、コンポストに必要な枯れ葉を集めます。
手分けして、こんなにも枯れ葉が集まりました!
集めた枯れ葉を持って滞在場所へ戻ります。
コンポストボックスに食事から出た生ゴミと枯れ葉を一緒に入れて、上から踏んで混ぜます。
コンポストは、数ヶ月ほど熟成させるとできあがるそう。次来たときにどうなっているか楽しみですね。
離れて過ごすことで、親も知らない子供の一面を引き出せる
こうして、イベントが無事終了しました。
今回のイベントを通して多く挙がった声が「子どもと離れることで、家にいるときと違う一面が出るし、伸びる」でした。
子供と一緒にいると、つい「山や川でケガしていないかな」「しっかりとみんなの輪に混ざれているかな」と心配してしまいますが、大人が思っている以上に子どもは多くのことを感じ、気付き学んでいるんですね。
ただし、課題としては以下のようなものが挙げられました。
「子どもが休憩タイムに、親を探しに来てしまい仕事に集中できない」
「完全に分離していなかったので、仕事との両立が難しくなる」
「ミーティングでは子供の声が入ってしまうため、個室で仕事せざるを得なかった」
このあたりは次に実施する際の改善ポイントになるでしょう。
最後に、今回のイベントの主催者の一般社団法人Living Anywhereの越智さん、株式会社LIFULLの星さん、モリウミアス油井さん、LAC八ヶ岳北杜のジョニーさんから、イベントに関してコメントをもらいました。
一般社団法人Living Anywhere・越智さん
「ワーケーションやテレワークという文脈で、子育て世代が置いてけぼりになってしまっている課題があるなかで、今回のイベントを新しい実験の場として作ることができました。イベントの参加者と子ども、滞在者が完全に分離するのではなく、どこかで交わるような多様な空気感を作っていけたらと思います。」
株式会社LIFULL・星さん
「今回、未就学児のケアをしていました。運営まわりのケアや後片付けなど見えない工数もあったように感じました。スキマ時間の子どもの面倒をどう分担して見るかが今後の課題ですね。プロボノをしたい地元のメンバーも巻き込んで仕組み化するなど、なにかしら工夫が必要になりそうです。」
モリウミアス・油井さん
「ひとまず、安全にプログラムを終えられてよかったです。自主的だったこども達が休憩時間に、親と接触することでリセットされてしまったのが少しもったいなかったなと思いました。子どものケアや失踪リスクを考えると、専任のメンバーがあと1、2人欲しいですね。周りの山や川、田畑はもっと活かせそうです。今後は地域のタクシー業者や農家さんと連携していけば、さらに価値が出せるかなと思います。」
LAC八ヶ岳北杜・ジョニーさん
「プログラムの作り方が重要かなと思いました。子ども相手だとまったく通用しないし、想定外のことも多いです。あまり詰め込みすぎずに、ゆるく予定を組むほうが良さそうです。課題として親子の分離が挙がりましたが、見せ方次第ではここが価値になる可能性もあります。引き続き協力して開催していきたいと思います」
今回、1泊2日のアクティビティに同行してみて感じたのは、「とても可能性のあるイベント」だということです。
八ヶ岳の自然を活用して料理を作り、そこで発生した野菜くずや生ゴミをコンポストとして再利用する……まさに、現代の人たちが忘れかけている自然の中で生きるよろこびや尊さを知ることのできる内容でした。
この活動が、地域の人々や拠点に滞在する人と連携できて輪が広がっていけば、もっとおもしろく価値のあるイベントになるのではないでしょうか。
《ライター・俵谷龍佑》