伊豆の旅を快適にする新型交通網サービス「Izuko」を体験してみた
今回私は、静岡県の下田市にある「LivingAnywhere Commons伊豆下田」を拠点にしたワーケーションに参加しました。ワーケーションでは、下田で事業を営む企業の課題を解決すべく、フリーランスがそれぞれの知恵を出し合います。
とはいえ、今回お伝えするのはそのことではありません。
実は今回は、私が個人的に気になった伊豆の新型交通システム「Izuko」についての体験レポートをお伝えさせていただきます。
下田で筆者が自ら体験!AI活用の新型交通システム「Izuko」
Izukoとは伊豆地方で2020年12月1日〜3月10日まで実証実験中のサービスで、ITを使った新型の交通網のことです。
伊豆地方は車で訪れる人が8割を占めており、駅に着いた後の交通手段の少なさが問題でした。そのため今回、駅から観光地などの目的地までをつなぐバスやタクシーなど二次交通の不便さを解消すべく、鉄道会社やバス会社、タクシー協会が協力し、Izukoが誕生したのです。
Izukoのようなサービスを「MaaS(マース)」と呼び、新しいインフラの形として最近注目を集めています。
そもそもMaaS(マース)とは何か
MaaS(マース)とは「Mobility as a Service」の略。既存の交通網を1つのサービスとして捉え、IT技術でそれらをつなぎ、利用者の利便性を高める仕組みです。
MaaSを使う1番のメリットは、これまで交通手段ごとに別々だった予約と決済を、オンライン上でまとめてできるようになる点。
加えてIzukoに関しては、
・エリア内での乗り放題
・観光施設での割引サービス
などのメリットもあります。
また、MaaSは乗客の需要に応じて交通網を運用できるのでムダがなく、環境にも優しいことは言うまでもありません。
MaaSの事例
ここで少し、MaaSの事例をいくつかご紹介しますね。
MaaSの代表格とも言えるのが「Uber(ウーバー)」。Uberはブラウザやアプリを使って車を手配できるサービスです。
Uberはその利便性の高さからタクシーに代わるサービスとして世界70カ国でシェアを拡大。日本では現在、東京をはじめとした9都市で「Uber Taxi」というサービスを展開しています。
Uber以外にも、日本で実用化されつつあるMaaSの事例はいくつかあります。
【日本で実用化されつつあるMaaSの事例】
Whim(ウィム):フィンランド発のMaaS。2020年に三井不動産との提携事業として日本でも導入が決定
moovel(ムーベル):ドイツのダイムラー社の子会社のMaaS。Izukoの実験フェーズ1ではmoovelのシステムを使用
滴滴(ディディ):中国発のMaaS。日本では一部エリアでの運用がスタート
このように、MaaSは日本でも徐々に利用され始めているサービスなのです。
「Izuko」のさまざまなデジタルフリーパス
ここからいよいよ本題の「Izuko」の説明に入りますね。
Izukoには、伊豆地方の行きたいエリアに合わせて選べるデジタルフリーパスがあります。
フリーパスは伊豆観光の名所、熱海、伊東、伊豆高原、下田、三島、修善寺エリアをカバー。旅のプランに合わせて好きなパスを選ぶことが可能です。
大きく分類すると「電車と二次交通のフリーパス」と「駅周辺の二次交通のみのフリーパス」があります。
【電車と二次交通のフリーパス(2日間有効)】
東伊豆をもれなくエリア「Izukoイースト」
伊豆地方を広くカバー「Izukoワイド」
熱海、伊豆高原間は「Izukoプチ」
中伊豆をカバー「Izukoグリーン」
【駅周辺の二次交通のみのフリーパス(1日乗り放題)】
東海バス熱海エリア「湯〜遊〜バス」
伊豆箱根バス熱海エリア「一日フリーパス」
乗り合いタクシー「下田オンデマンド交通」
レンタサイクル「伊豆ぽた」
Izukoと通常の切符の料金を比較
私が下田に行く時に利用した「Izukoイースト」は、熱海から伊豆急下田までの区間が「大人3,700円で2日間乗り放題」になるパスでした。
通常、熱海〜伊豆急下田間の片道運賃は、
・普通列車:1,975円
・急行列車:2,905円
です。単純に往復するだけでも、Izukoを使うと少し運賃がお得になります。
熱海から伊豆急下田までの間にもたくさん見どころがあるので、乗り降り自由な切符だとつい途中下車して観光を楽しみたくなりますよね。
Izukoの詳しい情報については、Izuko公式ホームページをご覧ください。
https://www.izuko.info/
Izuko「下田オンデマンド交通」の登録方法と使い方
下田に着いてから、Izukoの「下田オンデマンド交通」も体験してみました。このサービスを利用すると、下田の市街地にある27のスポットから、乗り合いタクシーを1日乗り放題できます。
【登録はスマホから】
Izukoを利用するには伊豆急公式サイトより新規登録が必要です。登録は無料で、スマホからメールアドレスを入力すると認証キーが届きます。
プロフィール登録のために必要な情報は
1. お住いの都道府県
2. 生まれた年
の2つです。
【決済はクレジットカード】
チケットの決済はクレジットカードのみ。使えるカードは以下の5種類です。
1. VISA
2. Master
3. AMERICAN EXPRESS
4. JCB
5. Diners
チケットは事前購入できず、利用当日の購入となります。1つのアカウントで最大5名分まで購入可能です。
【Izukoとタクシーの乗車料金を比較】
・タクシー:初乗り700円
・Izuko:大人400円(1日乗り放題)
タクシーが初乗り700円なのに対して、Izukoは1日400円で乗り放題のサブスクリプション(定額制)。タクシーに比べると格安です。
例えば、今回利用した中で1番遠かった「東急下田ホテル」まで、タクシーだと片道およそ1,020円ほどかかりますが、Izukoを使えば400円。
もちろん帰りも追加料金なしで乗ることができるので、かなり経済的ですね。
【Izukoの予約の仕方】
Izukoで車を予約する場合、スマホの画面から
・乗りたい場所
・行きたい場所
を登録、予約します。
予約が完了すると画面上で、あと何分で乗車場所に車が到着するかおおよその時間がわかります。
私が体験したときは、予定時刻よりも早めに到着することの方が多かったので、余裕を持って停留所で待機していた方が良さそうです。
【Izukoのチケットはペーパーレス】
チケットはペーパーレスで、乗車時はスマートフォンの画面を見せればOKです。不正利用への対策も万全。有効なチケットはアニメーションで動くので、スクリーンショットなどで不正に利用しようとしてもすぐわかります。
オンデマンド交通を体験した感想
【Izukoのココがよかった!】
下田の街は駅から徒歩15分ほどにある見どころが多いです。小さなお子さんや高齢の方を伴う場合に、とても頼りになるシステムだと思いました。
現在Izukoのために稼働している車は
・平日:1台
・土日:2台
と少ないものの、予約するとすぐに配車されてストレスなく利用できました。
オンデマンド交通は本来なら乗り合いタクシーですが、今回は平日のためかほぼ貸切状態。大型車両を独り占めするのは気が引けたのですが、ドライバーの方がとても快くサービスしてくださり、地元の話などもお伺いしながら楽しい時間を過ごせました。
【オンデマンド交通のエリア外はバスや自転車がカバー】
「Izukoイースト」を購入すると電車だけでなく、駅周辺の路線バスも乗り放題になります。
とはいえ、バスの本数はそれほど多くありません。バスと時間が合わないときは、レンタル電動自転車サービス「伊豆ぽた」がオススメです。
電動自転車は単なる移動手段というだけでなく、アクティビティとしても十分楽しめますよ。
【伊豆ぽたのレンタル料金】
・2時間:1,100円
・1日券:2,200円
*予約ができるのは前日まで。当日空きがあれば案内所で直接自転車を借りることも可能。
今後のIzukoに期待すること
下田の街には「ペリーロード」など、あえて歩いて見て回る方が良い場所もあるので、散歩のスタート地点にIzukoを使って行けるとうれしいですね。その際、観光情報もセットであるとさらに良いと感じました。
現在、電車や駅にはIzukoをPRするポスターやリーフレットが置かれているのですが、多言語に対応していません。Izukoがカード決済できる点などを考えると、今後アプリを通じて多言語での情報発信などができれば、海外旅行者に対する利便性を大きく高めることが可能ではないでしょうか。
そして今回の実証実験での停留所は、
・観光スポット
・生活に不可欠な場所(役所、銀行、病院など)
が半々です。
今後、実際に運用するのであれば、「観光ルート」と「生活ルート」が別れている方が便利だと感じました。特に夏はビーチまでのルートがあると、渋滞の解消につながりそうな気がします。
運転手さんによれば「下田の夏はタクシーの予約も難しいほど人が集まる」とのこと。電車でやって来た観光客がビーチまでスムーズに移動できれば、新たな客層を取り込めるようになるのではないでしょうか。
Izukoはこれからの地方の在り方にもつながる意義ある実証実験
人口減少が叫ばれている中、従来の交通網システムは見直すべき時期が来ているように思います。特に地方の場合、小型の乗り合いタクシーなどで「コンパクトに」「効率よく」交通インフラを維持することが必要でしょう。
今回私は体験を通じて、Izukoを使って移動することはとても合理的だと感じました。実用化され、車両が増えたらさらに利便性が上がるのではないでしょうか。
地方へ行くと感じる、「バスの本数の少なさ」や「タクシーの捕まりにくさ」の解決策になるに違いありません。
「問題意識がある地方ほど最先端の技術がどんどん導入されていくはず」
そう思うと、スマートシティ化された下田の未来が今からとても楽しみです。
《ライター・あいす まみ》