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大学卒業後Uターン起業。地元瀬戸の魅力を伝えたい!|LAC瀬戸 コミュニティマネージャー・南慎太郎さんインタビュー

茶碗や皿などのやきもの全般を「せともの」と呼ぶ語源にもなった、愛知県瀬戸市。ここは1000年以上、やきものを作り続けてきた歴史あるまちです。一方、近年はアーティストや若い人の移住も増えているといいます。

そして今回この瀬戸市に、LivingAnywhere Commonsの新拠点が誕生。LAC瀬戸コミュニティマネージャーの南さんにインタビューしました。

南さんは、大学卒業後Uターンし起業。ゲストハウスのオーナーとして地元瀬戸の魅力を発信しています。南さんが就職ではなくなぜ起業を選んだのかその理由と宿としての理念、またLAC瀬戸でのおすすめの過ごし方についてお話を伺いました。

<南 慎太郎さん>
愛知県瀬戸市出身。北海道大学農学部卒。築140年以上の古民家を改装し、2018年に「ゲストハウスますきち」をオープン。その後2022年4月に「ますきち ~宿泊・喫茶・土産・案内~」としてリニューアル。現在オーナー兼、自身の経験を活かしキャンプファイヤー公認サポーターとしてクラウドファンディングの起案支援やホームページ制作に携わる。ライターの奥さんと夫婦で、“火と土のまちで、人をつなぐ”をテーマに活動するPRチーム「ヒトツチ」を立ち上げ、地元瀬戸市に暮らす人々やまちの魅力を伝えている。2022年にはヒトツチ出版をつくり、まちの案内本『まちをあるく、瀬戸でつながる』を出版。

瀬戸の魅力を発信し、人と人とを繋ぐお宿「ますきち」

ーー南さんが運営される「ますきち ~宿泊・喫茶・土産・案内~」についてご紹介ください。

「ますきち ~宿泊・喫茶・土産・案内~」は、宿としての機能だけでなく、カフェや地元で作られた商品の販売、観光案内を行う複合型の宿泊施設です。

オープン時は、ゲストハウスとして出発しましたが、ゲストハウスという枠組みにとらわれず、いろんなことに挑戦していきたい! という想いから、2022年4月に名前を変え、リニューアルオープンしました。

2階建ての館内には、宿泊用のドミトリー2部屋と個室6部屋のほか、カフェスペースやキッチン、庭があります。

カフェスペースでは、地元の作家さんとコラボし作っていただいたオリジナルコーヒーカップのお土産や、妻が出版した瀬戸の案内本を販売しています。

また、近隣のおすすめのお店を集めたオリジナルマップを制作し、ディープな瀬戸のまちを案内しています。

ーー庭も広く、玄関もとても解放感があり、なんだかホッと落ちつく雰囲がありますね。

もともとこの建物は、日本で初めて型を使ってコーヒーカップを製造することに成功した、陶工、川本桝吉が暮らしていた邸宅です。築約140年、敷地面積は約300坪(平均的な一戸建ての敷地約10倍)あります。

玄関から入ってすぐに広い和室があり、よくおばあちゃんの家にきたみたい、と言っていただけます。できるだけ建物の良さをそのまま残して、改装することを心がけたので、どこか懐かしさも感じられるのかもしれませんね。

▲「ますきち」の全体イメージ画
▲開放的な玄関には瀬戸焼のタイルが使われています。
▲瀬戸焼で作られたルームプレートも味のある雰囲気。

ーー敷地300坪とは驚きの広さですね!この大邸宅をどうやってリノベーションされたのですか。

一番最初のゲストハウスとしてのオープン時は、お金がなかったこともあって、できるだけ自分で改装を進めました。

もちろんキッチンやお風呂、トイレなどの水回りや天井など、専門的な知識が必要な部分は、専門業者にお願いしました。リフォームやDIYの知識も全くなかったので、知り合った大工さんに週1回、2時間ほどレクチャーを受けながら改装していきました。

また、床貼りなど大がかりな作業は、SNSでボランティアを募集し、8ヵ月の間に約300名の方がお手伝いに来ていただきました。そうして地元瀬戸の人、外から来る人とのつながりも増え、少しずつ自分が理想とする宿の形にすることができました。

リニューアルオープンの時には、それまで宿では使っていなかった2階を改装したのですが、法律面の難しさもあり、近所に住む同い年の設計士さんにすべてお願いしました。

▲ボランティアの中には古民家好きな方が遠方から来られたこともあるそう。

「瀬戸の魅力を伝えたい!」クラウドファンディングに挑戦

ーー大学卒業と同時にUターンし、宿のオーナーへの道を選ばれた理由をお聞かせください。

大学在学中の旅がきっかけとなり、土着愛を感じられる地域の人やお店を紹介してみたいという想いがありました。町おこしではなく、自分がただ好きだと思うことや面白いこと、いいなと感じたことを誰かに伝える、そんな仕事がしてみたいと。

当時、就職活動に対して熱心ではなく、唯一興味が持てた一社も面接で落ちてしまっていました。そこで、前からやってみたかった地域の魅力を発信する方法として、ゲストハウスでの住み込みバイトで長期滞在ができることを知り、ゲストハウス探しをしていたところ、あるオーナーさんのブログを発見。調べてみると運営コストもそれほどかからないことがわかり、自分でもゲストハウスを運営できるかも、ととりあえず自分で運営をやってみることにしたんです。

けれど当然、資金も知識もありません。どうやってやろうかと調べていたところ、クラウドファンディングを活用した資金調達方法があることを知り、物件も空き家バンクで探して条件に合うものがすぐに見つかりました。そして大学在学中の夏休み中に契約を交わすというように、トントン拍子に話が進んでいきました。

ーー実際に、クラウドファンディングに挑戦し、資金調達を見事成功できた理由はなんだと考えますか。

ゲストハウスを運営する目的がはっきりと意識できた状態で、クラウドファンディングを活用できた、そのタイミングが良かったのだと思います。

はじめは失敗してもいいという考えもありましたが、改装を続けながら瀬戸の人と交流し、自分がやろうとしていることを打ち明けていくことで徐々に気持ちが整理され具体的になっていった。宿のオーナーとして目的が明確になっていくことで覚悟ができました。

▲ますきちの館内にはクラウドファンディング支援者ボードが飾ってあります。

クラウドファンディングに挑戦すると、次第に相談されることが増え、最近では、クラウドファンディングサポートを仕事として受けるようになりました。
まちでお世話になっている方に相談され、無事に達成できた時は、すこしでもお役に立ててよかった、と心から思いました。

▲南さんがクラウドファンディング立ち上げのサポートに携わったという、瀬戸・ものづくりと暮らしのミュージアム「瀬戸民藝館」では、瀬戸のものづくりと焼き物の魅力を発信。
▲瀬戸民藝館には、陶器を焼くために使われていた登窯「本業窯」がそのまま残されており、窯の中に入って見学もできます。
▲瀬戸民藝館のミュージアムショップでは、運営元の「瀬戸本業窯」の販売も。

熟成されたやきものの文化が派生したまち「瀬戸」

ーー地域でゲストハウスをやってみようと思われ、その場所として瀬戸市を選ばれたのは、どんな理由があったのでしょう。

ゲストハウスをやる条件として、都市部でもなく観光地でもない場所、地域や産業があり独自性のある地域の魅力を伝えたいという思いがありました。

瀬戸市はやきもののまちとして1000年以上の歴史があり、代々やきものを作る職人が中心だった文化が派生しては新たな文化が生まれ、瀬戸というまちが形成されてきました。そういう、土着中心の伝統産業があるところも、想像していた条件にピッタリ当てはまりました。

また来訪しやすさも大切にしていたので、最寄駅から徒歩約8分、名古屋からアクセスが良いこの場所は、まさに理想通りでした。今思えばこの物件に偶然出会ったのも、運命だったかもしれませんね。

ーー奥さんが出版された本からは、瀬戸市独特の文化やこのまちの人々の生き方や暮らし方がとても伝わってきました。

地域の本当の魅力とは、実際に暮らしてみないと分からない部分があると思います。私もUターン後に瀬戸という歴史や文化にじっくりと関わることで、瀬戸はやきものを作る職人の衣食住につながり、今の街並みや文化を生み出しているということがわかりました。

そんな瀬戸のまちに、最近は若者が集まってくるという変化が起きていて、レトロな雰囲気が漂う商店街に、若者をターゲットにしたお店が次々とオープン。都心部から、陶芸家や若手アーティストが移住し、商店街を歩く若者の姿が増えてきています。

そして妻も私と同じく、地元瀬戸を一度出たことでその魅力にあらためて気づいた一人です。もっとたくさんの人にこの瀬戸という土着のあるまちの魅力を広めたいと、二人で出版社を立ち上げました。この本は、妻がインタビューして回ったお店の人にフォーカスし、実際に体感した瀬戸の魅力を伝える一冊です。

▲商店街には飲食店やカフェ、居酒屋、やきものを販売する昔ながらのお店もあれば、ギャラリーや古着屋、サイクルショップなど新しいお店もあって面白い。
▲ライターである南さんの奥さんが執筆、編集、出版まで担当されたという、せとのまちあるき本。瀬戸の歴史と人の温もりが伝わってくる一冊です。

LACへの加盟によって、宿の入口が拡がり、瀬戸の魅力も広められる

ーー南さんが思われる、理想の宿のかたちについて教えてください。

例えば、旅先やどこか違うまちを訪れたとき、地元の人しか集まらないようなお店は入りにくいですよね。一人では勇気が必要な場所でも、宿側が仲介することで入りやすくなると思うんです。そういうネット上では見つけられない場所を紹介できるのも、個人宿としてできることだと。

またおすすめスポットなど、宿側が一方的に勧めるのもお客様によって肌に合う合わないがあるため、お客様の雰囲気に合った場所をコーディネートするのも宿主の役割だと思っています。今後はそういう案内をもっと増やしていきたいですね。

ーーLAC拠点として、今後はどのような宿を目指されていますか。

もっと多くの人に瀬戸というまちを知ってもらうため、2023年から営業日を増やす予定です。現在、木曜日から日曜日までの営業を、今後は毎日営業していきたいと考えています。

そこで試験的に多拠点移住システムを導入しようと思い、比較検討させていただいたところ、LACは一番条件が合ったのと対応いただいた方の印象も良かったので加盟することに決めました。

LACユーザーさんは平日も利用される方が多いと伺ってますので、今後は各地から来ていただいたユーザーさんに瀬戸の魅力を伝え、全国に発信できると期待しています。

▲LACユーザーは通常プランでドミトリー部屋が利用可能。
▲2022年10月以降、アップグレード料金で個室も利用できます。

ゆっくり暮らすように滞在を楽しんでもらいたい

ーーLAC瀬戸の楽しみ方について、最後にユーザーのみなさまへ一言お願いします。

当館は敷地が広く、フリースペースもいくつかあるため、心地良いと思える空間を見つけて過ごしていただけると思います。1階のカフェスペースは二間続きで広く、軽食や飲み物、アルコール類も注文できます。常連さんがよくいらっしゃるので、地元の人との交流も楽しんでいただけると思います。

▲縁側からの日差しが差し込み、一人でも大勢でもゆったり過ごせるカフェスペース。
▲離れと母屋の間には中庭を望むソファスペースも。足元は、かつて鯉が泳ぐ池だった頃の名残りをいかしたガラスの通路になっています。
▲琉球畳を敷いたのんびりくつろげるスペース「風の間」。
▲カフェでは南さんお手製のオリジナルカレーも食べられます。

また宿のオリジナルマップを片手にお店巡りをされるのも、発見があって面白いと思いますよ。瀬戸の人は若者が日中一人でふらふら歩いてもなにも言ってこないですし、気さくな方が多いので会話も楽しめます。

一人ひとりライフスタイルが違うように、ここでの過ごし方も自由。いつも忙しくされている方も少し余白のある暮らしを満喫していただきながら、瀬戸のまちの古いものと新しいものの不思議なギャップ感を体感してみてください。

南慎太郎さんのTwitterアカウント

《ライター:りりから


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