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その52)BI社会/修理工場の未来

竹芝さんはBIになる以前は車の修理工場を経営していた。車の修理工場はガソリン車ばかりの頃はそれなりに仕事があったが、ハイブリッド車以降、車は部品のブラックボックス化が進み、修理が必要な車が来ると、必要な部品を発注して、部品交換だけで修理することが増えた。昔ながらの職人もガソリン車の衰退とともに消えていく。ただ、それではジリ貧の一途なので、古い車をレストアする仕事を始めた。これは富裕層に人気があり、結構繁盛した。

車の排気ガス規制が厳しくなりガソリン車が禁止になる前に、車に限らずあらゆるものの修理を請け負う会社に変わっていった。自分のところだけでは難しいので、金型やITや電気など、多くの業種でネットワークを組み、事業体を作っている。古い電気製品や電子製品は直せば使えるものも多い。

昔は部品を取り寄せるのが大変だったが、今は設計図を入手して自動工作機(3Dプリンターの上位機種)で多くの部品を自作できるため、修理が可能になっている。万能な地域の修理屋さんと言ったところだ。

ベーシックインカムの時代になると、家、家具、電気製品などは新品よりも古いものを大事に使おうという傾向が強まっていて、何でも直して長く使う文化になっていた。樹脂製品はリサイクルできるプラスチックに変わってきている。電気技術の会社とタッグを組んだことで、ロボットの修理なども行うようになった。

3Dプリンタが普及しているので、簡単なものは個人や自治体で作ってしまうことも多い。竹芝さんの仕事は少し専門の技術が必要なものや、公共の働くロボットなどだ。街の清掃関係で危険な場所はほぼロボットがやっている。自動運転の普及で自動車も壊れにくくなっているが、メンテナンスが必要な箇所は竹芝さんたちが担って直している。

多くの作業はどんどんロボットなどがやるようになっているが、古いものが好きな人がいる限り、人間の手を介したぬくもりのある修理は残っているのだった。世代が変わればこれもまた消える仕事なのかもしれない。

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