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「AI x BI x ヒューマノイド 30年後のリアル」第10話

公園のベンチに腰掛け、ぼくはコーヒーと焼きドーナツをゆっくりと味わった。あたりのベンチにも人はいるが、皆、VRゴーグルにマスク姿で、ほとんどが高齢者のように見える。話しかけにくそうな雰囲気だ。

ふと、さっきのコンビニで使った「ベーシックインカム」という言葉が頭をよぎった。あれについてもっと知りたくなって、アーティに話しかけた。「アーティ、ベーシックインカムってどういう仕組みなの?」

アーティはいつものように端的な説明を始めた。「ベーシックインカムとは、最低所得保証制度の一つで…」

「ちょっと待って。もう少しわかりやすく説明してくれる?」

「はい。ベーシックインカムは、国がすべての国民に毎月一定のお金を配る仕組みです。現在、日本では原則月額11万円が国民一人ひとりに配られています。」

「へえ、国が定期的にお金をくれるのか。なんだか年金みたい。でも、どうしてそんなことになったの?」

アーティは少しの間を置き、丁寧に説明してくれた。

「およそ30年前、私のようなAIや人型ロボットが急速に普及し始めました。10年ほどで、私たちはホワイトカラーの仕事を高速で処理できるようになり、ロボットは人間の形をした労働力として肉体労働も担うようになりました。結果的に、人間のように道具を使い、運転も行うまでに進化したのです。」

ぼくは、さっき見かけたロボットが運転する車を思い出した。「だからロボットが車を運転していたのか。しかも、人間よりも上手く運転できるんだ…」

「はい、今では調理、建設、農業など、あらゆる分野でロボットが働いています。少子高齢化による労働力不足が長らく問題でしたが、10年ほど前から逆に失業率が上昇し、ついに6%を超えました。これはかつてのバブル崩壊時をも上回る水準で、今後も失業者が増え続けることが確実となりました。」

ぼくは一瞬息をのむ。

「なるほど、職を失う人が増えたから、お金を配るようになったんだな」

「はい、ただ導入に至るまでには多くの反対と混乱がありました。」

アーティの声は淡々としているが、その背後に大きな社会的変化の波を感じ取った。

「その混乱って…」

ぼくが質問しようとしたとき、不意に歩道をパトランプをつけた犬型のロボットがゆっくりと横切った。ボディは白黒でPOLICEと書かれている。ぼくは思わず声をあげた。「あ、あれは何?」

「あれは警察犬ロボットです。警察官の代わりに働いています。現在はパトロール中のようですね。」

「リアルな犬のおまわりさんってわけか…」

ふと笑いがこみあげたが、話を元に戻そう。ベーシックインカムがもたらした混乱と、その影響について、ぼくの胸は高鳴っていた。

(続く)

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