「AIxBIxヒューマノイド 30年後のリアル」第16話 動画サイト
部屋の床に寝転びながら、ぼくはこれからの生活をどうしていくか考えていた。ベーシックインカムの支給で最低限の暮らしは保障されているものの、雇用がないのなら暇をどう埋めるかが問題だ。将来への手がかりが欲しいところだが、何をしたらいいのかもいまいち掴めない。
「投稿動画サイトで検索してみてはいかがでしょう?」腕時計型デバイスからアーティの提案が聞こえた。なるほど、内容は思い出せないけど、動画を見て楽しんでいたという記憶はある。
サングラス型のVRゴーグルを装着して、30年後の動画サイトにアクセスする。空中に映像がふわりと浮かび、視界いっぱいに展開する。「クラシック」と呼ばれる縦長の動画もあるが、今はVR専用の立体映像が主流らしい。簡単な指の動作で次々と動画を切り替え、目の前でかっこいいダンスやライフハックが繰り広げられていく。
それにしても、広告が頻繁に入るのは今も昔も変わらない。近所で手に入る食品や日用品の宣伝が多く、ベーシックインカム生活者向けに作られている感じがする。時々出てくるのが宝くじの広告。大当たりすればどこか旅行に行けると聞くと、少し夢があるかもしれない。さらに宇宙開発への協力募集も見かけた。選抜されれば月や火星への移住が夢ではないという。こうした未来感には一瞬、心が躍る。
しかし、気づけばあっという間に夜になっていた。楽しいけれど、なんだか虚しい。ベーシックインカムがあるとはいえ、こんな映像を見続けるだけでは良くないと思った。
そんな時、外から轟音が響いた。驚いて窓から見ると、一台のバイクが爆音を上げて走り去る。「暴走族か?」と思わず口に出してしまう。アーティによると、これは違法な液体燃料バイクで、認証デバイスを外して顔を隠しているらしい。最近では死亡事故も増えているとか。どんな時代でも、規範を破る者は出てくるらしい。
どこかに、そんな彼らにとっての自由が残っているのだろうか。ぼくはそんな思いを抱えながら、未来の社会で自分の立ち位置を探し続けていた。
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