その41)ベーシックインカムで自殺は減るか
厚生省が発表した2020年の統計によると、日本の自殺者数はG7各国の中でトップを占めています。また、女性よりも男性の自殺者数が多いです。
自殺の背景には精神の保健上の問題のほか、過労や生活困窮、育児や介護疲れ、いじめや孤立など社会的な要因があることが知られています。また、自殺は瞬間的な行為ではなく、自分から命を絶たざるを得ない状況に追い込まれる「プロセス」として捉える必要があるとされています。
ベーシックインカムになった場合、自殺者は減るのでしょうか。
この場合のベーシックインカムは少し先の未来でAIや汎用ヒト型ロボットが人間の多くの仕事を代替し、多くの雇用が失われている世界です。インカムはCBDC(中央銀行デジタル通貨)で、国民は生体認証をうけることでUBI(ユニバーサルベーシックインカム)をもらっています。ベーシックインカム以外に仕事や収入がある人もいます。単純にこのパターンを想定して考えてみました。
・失業→多くの人が失業している状況ですので、改善しそうです。
・連帯保証債務や事業不審→失敗して破産してもベーシックインカムで最低限の暮らしはできそうです。ただ、持ち家など資産は手放さなければならないのが重いストレスになると思います。事業に失敗して多重債務を抱えた場合も同じルートをたどるでしょう。
・病気→医療制度が崩壊していなければ、収入はあるのでなんとか暮らせそうです。
・職場のいじめ→働いている人は程度はありますがすべからく能力者として上級な国民になっていきます。職がない人から攻撃されやすいかもしれません。雇用されている人や、責任が重い仕事をしている人はメンタルケアが必要になってくるのではないでしょうか。
・育児や介護疲れ→ベーシックインカム社会はコミュニティ全体で育児や介護をしていく流れになるので、ここは緩和される可能性が高いと思います。
・人間関係→所属コミュニティがカースト化したりなど、過度のマウントやいじめに合う可能性があります。ただ、昔のムラ社会と違い、新しい人間関係を築けるコミュニティに移るチャンスはあるので、それができるかどうかにかかってくると思います。
・DV→ベーシックインカムによって男は仕事とか女は家庭という概念とか、デートでおごるとか、そういう概念はなくなっていくでしょう。ただ、人間関係はお互いの価値観が大きく影響するので束縛が強い場合に負の要因となる可能性は拭えないと思います。
・犯罪被害→性的暴行など精神的に傷つけられた場合の自殺は防ぎにくいと思います。ベーシックインカム社会での性犯罪は罪が重くなると思われます。
・家族の死→亡くなった家族の分の世帯収入が減ることになります。生活に必要なコミュニティに参加していなかった場合生活のレベルを落とさなければならなくなりかなりのストレスになることが予想されます。これは新たな要因になるかもしれません。
・親子間の不和→ベーシックインカム社会では、子供が親元を巣立った場合、その家庭の世帯収入が減るという問題が出てきます。親が子どもの収入を当てにして、子供はそんな親から離れたいというところから不和が生じる可能性が高いでしょう。
・子供間のいじめ→ここはなかなか難しいと思います。むしろ、大人同士でも似たような問題で自殺する人が増えるかもしれません。
ざっと考えてみましたが、解決しそうな問題もあれば、むしろ悪化しそうなこともあったように思います。これを読んでなにか感じたことがあったら感想やご意見などいただければと思います。