「AI×BI×ヒューマノイド 30年後のリアル」第20話 音声チャット
会場はどこを見ても賑わっている。キッチンカーから漂う美味しそうな匂い、音楽ステージからの陽気なビート、そして人々の楽しそうな声が絶え間なく続く。どうやらこのイベントは毎週開催されているらしい。ぼくはアーティに勧められるまま初心者テーブルに来て、なんとか他の参加者たちと打ち解けようとしていた。
「改めて、ようこそ初心者テーブルへ!」
馬刺しさんは明るい声で言った。彼女のエネルギッシュな雰囲気に圧倒されながら、ぼくは話に耳を傾ける。
「私はここで、皆さんが楽しく交流できるようにファシリテーターとしてお手伝いするボランティアなんです。」
「そうでしたか。市の職員の方かと思いました。」
ぼくがそう言うと、馬刺しさんは笑うように声を弾ませた。
「いえいえ、全然違います。ただの馬刺し好きな一般人です。」
馬刺し好き…そのハンドルネームの由来がなんだか妙に可愛らしく感じた。
テーブルには他にも何人か座っているが、みんなVRゴーグルとマスクを装着しているせいで顔は見えない。音声チャットを通じて話すのがこの場のルールらしい。ぼくの頭上にも「うらしま30Y」のアイコンとハンドルネームが浮かんでいる。他の参加者の頭上にもアイコンと名前が表示されていて、話しかけていい人には「◯」、話しかけられたくない人には「×」のマークがついている。これが未来のコミュニケーションなのか…。
「うらしま30YさんはDIYとか興味ある?」
隣に座る「春雨DX」さんは年齢も性別も不明だが、親しみやすい雰囲気だ。
「正直、やったことはないです。どんなことをしているんですか?」
「俺はDIY動画を参考にして、AIで設計図を作り、共同工房で材料を3D出力して作ったりしてるんだ。例えば家具とかね。いつかは、DYIで家を建てて、それを宿泊施設にして稼ぎたいなんて思ってるんだ。」
「おお、素敵な夢ですね」
ただの趣味を超えて夢に向かって進んでいる春雨DXさんってすごい。
春雨さんの隣に座る「ニワトリと小鳥とワニ」さんは、頭上に「×」マークがついている。しかし、文字チャットで気さくに話しかけてくれた。
「30年の空白はきついと思うけど、今を楽しんでね。」
そうか、こんな方法でも会話ができるんだ。
ぼくが「ありがとう」と文字で返すと、画面にサムアップの絵文字が浮かんだ。こういうやり取りも悪くない。
ただ、ぼくより年上に見えるのは気のせい?と思ってジロジロ見ていたら、それを察したのか「実は私は初心者じゃない。面倒なことは嫌いなので静かに過ごしたい。お構いなく」と文字が。ジロジロ見てごめんなさい。いろいろなスタンスがあるのだなあ。
S
そんな中、会場の奥で騒ぎ声が聞こえた。目をやると、青いボディの人間型ロボットが数人の男たちを連行している。
「うわ、あれは…?何?」
人がロボットに連行される光景は、ぼくにとって衝撃的だった。一体何があったんだろう?
(続く)
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