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「AI×BI×ヒューマノイド 30年後のリアル」第17話 牛丼弁当

未来の一人暮らしが始まった。狭い四畳間の部屋でぼくは考えていた。


「アーティ、なんか物足りないんだよな。」


腕につけた端末からいつもの優しい声が返ってくる。

「何か新しいことを始めてみたいのですか?」
「動画とかゲームとか、最初は面白いんだけど飽きちゃうんだよ。」
「それでしたら、明日、中央広場でイベントがあります。フリーマーケットやライブパフォーマンスが予定されていますが、興味はありますか?」
「へえ、フリーマーケットか。面白そうだな。行ってみようかな。」
「では、明日ご案内します。」

そのとき、ぼくのお腹がぐぅっと鳴った。未来の生活に気を取られていて、食事のことなんてすっかり忘れていた。


「アーティ、この近くで飯を買える場所は?」

「徒歩3分の場所にコンビニがあります。」

その指示に従い、夜の街を歩いてコンビニに向かった。例によって無人のコンビニで買い物を済ませる。
店内で牛丼弁当を手に取る。あっ、これって合成肉だっけ。でもシャケ弁も合成シャケだからそんなに変わらないか。
弁当とお茶をレジ台に置くと、ピッと音がして、瞬時に精算された。

「なあ、アーティ。ここで精算せずに商品を持っていったらどうなるの?」
「心配はいりません。商品にタグが付いていますので、持ち去ったとしても支払いはタツヤさんのアカウントから引き落とされます。」
「おいおい、それ、レジの意味あるの?」ぼくは苦笑いした。

帰り道、ぼくはふと思った。所持金から換算すると、弁当の価格は高いと感じた。ベーシックインカムで生活する時代の暮らしって、どこまで節約すればいいんだろう。


「アーティ、ベーシックインカムだけでやりくりする人は大変じゃないのか?」

「そうですね、生活費の節約については皆さんそれぞれに工夫されています。」
「なるほど、便利な未来の生活にも、それなりの知恵と工夫が必要ってことなんだね。甘くないな。」

それにしても、このAIアシスタントは本当に便利だ。ぼくの質問に即答するし、必要な手続きも瞬時に済ませてくれる。本当は人間と話しているんじゃないかという錯覚さえ覚える。

「アーティ、君は本当に便利だな。でも、ひょっとしてもっと上級のAIとかもいるの?」

「はい。私は個人の生活をサポートするAIですが、上級のAIは企業経営、行政運営、治安維持など、国民がより良い暮らしを送れるよう、それぞれの分野で活躍しています。もし興味がおありでしたら、専門的な情報をお届けします。」
「いや、あんまり難しい話は苦手だから、折に触れて聞くよ。」
「かしこまりました。いつでも聞いてくださいね。」

未来の生活はまだ手探りだ。明日のイベントはどんな人達がやってくるんだろう。
部屋に戻って、ぼくは明日の体験にワクワクしながら牛丼を食べた。
うーん、牛丼だと思って食べるけど、合成肉だと思うと牛丼じゃないような複雑な気分。

(続く)

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