「AI×BI×ヒューマノイド 30年後のリアル」第18話 イベント会場
午前8時、朝の陽射しを浴びながら、ぼくはアーティの案内で中央広場へと向かった。空は澄み渡り、心地よい風が頬を撫でる。こんなにも穏やかな朝を迎えたのは久しぶりだ。アーティが「今日の天気は最高です。きっと良い一日になりますよ」と言う。
公園が近づくと、早くも音楽が聞こえてきた。リズムに合わせて軽快な足取りになる。中央広場は運動場のように広く、地面は滑らかに舗装されていて、舞台、キッチンカー、テント、そして賑やかな人々で溢れている。踊る人、楽器を演奏する人、座っておしゃべりを楽しむ人々…。ざっと数百人はいるだろうか。
ただし、多くの人がVRゴーグルやマスクを着用していて表情が見えないのが少し寂しい。それでも、活気ある空間にいるだけでなんだか嬉しかった。
「タツヤさん、地域通貨『シジミペイ』をご利用になるといいですよ。」
突然アーティが提案してきた。
「シジミペイ?」
「市がイベント用に発行するデジタル通貨です。当日限定ですが、5000円分が無料でチャージできます。ベーシックインカムを節約したい方には最適です。」
「それ、いいね!チャージしてくれる?」
「もちろんです。少々お待ちください…完了しました。」
ゴーグルの画面に表示された「5000シジミペイ」の文字を見て、少し心が弾む。なんだか祭りでお小遣いをもらった子どもみたいだ。
舞台ではゴーグルを外した女性シンガーが登場し、透き通るような声で観客を魅了する。バックでの楽器の生演奏もすばらしい。彼らはきっと日々努力してこの舞台に立っているのだろう。拍手が自然と湧き上がる。
しばらく賑やかな空間を歩いていると、アーティが話しかけてきた。
「タツヤさん、今日は交流の場もたくさん用意されています。どのように過ごされますか?」
「そうだな、まずは雰囲気を楽しむよ。それにしても、こんなイベントで使える通貨まであるなんて面白いね。」
「人々の交流や地域経済の活性化が目的です。加えて、タツヤさんのように新たな生活を始めた方にも馴染みやすい仕組みなんですよ。自由に出店できるので新事業を試されている方もいます。」
誰かに話しかけてみたいが、皆ゴーグルだし、マスクの人も多くて少し躊躇する。
「誰かに話しかけてみたいけど、どうしたらいいかな」
「それならあちらに『初心者テーブル』があります。あそこに行ってみてはどうでしょう。」
ゴーグルに「初心者テーブル」の位置が表示された。見ると数人が椅子に腰かけている。
ぼくは少しだけ勇気を出して、そのテーブルに向かっていった。
(続く)
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