「AIxBIxヒューマノイド 30年後のリアル」第15話 新しい部屋
施設を出たぼくは、ひとり未来の街へと歩き出した。荷物はVRゴーグルと腕時計型のデバイス。これは今の生活に欠かせないものらしい。それに加えてバッグが二つ。一つはバックパックで、歯ブラシやひげ剃り、タオルなど日常の小物が詰まっている。もう一つには圧縮された布団が入っていた。
施設から出て数分ほど歩いたところで、街の景色は様変わりし始めた。ビルが並び、商店が見える。行き交う人々の姿はあるが、よく見ると人間型のロボットも普通に歩いているのに気づく。あっちにも、こっちにも。ぼくの目に映るその景色は、まさにSF映画で見たような「未来の風景」だった。
道路も昔とは違う。信号機は見当たらず、歩道は広いのに、車道は驚くほど狭い。主に走っているのは一人乗り用の小さな電動モビリティだ。交差点には標識が立ったポールがあり、その周りを車両がラウンドアバウト形式で進んでいる。信号がない代わりに、道が自然と整理されているのだ。ここにも未来らしさを感じた。
だが、ふと視線を周囲に移すと、目に入るのは年配の人々ばかりだった。アーティに尋ねると、このあたりに住む人はほとんどがぼくと同年代か、それ以上の年齢層らしい。若い世代は他所のコロニーで共同生活をしているのだという。お年寄りが街に残り、若者が集団生活をする。世代ごとに生活様式が分かれていることに興味を持った。
そんなことを考えながら進んでいくと、やがてぼくの新しい住まいがあるビルについた。築20年ということだが、最近リフォームが行われたと聞いている。8階建ての建物の6階がぼくの部屋だ。ドアの前に立つと、腕時計型のデバイスで鍵を解錠する仕組みになっていて、生体認証が併用されている。
部屋に入ると、シンプルなワンルームが目に入る。窓には電子的に動作するブラインドが入っていた。天井の照明はプロジェクターが内蔵されたシーリングライトで、壁に映像を投影することができた。これは未来的でかっこいい。ぼくの心はこの「新しい一歩」に踊っていた。
ふと、急にトイレに行きたくなった。ここではトイレも共有である。意外なことに、ここのトイレ清掃は当番制だった。
「えっ、ロボットじゃなくて、人間が掃除をするんだ。」
アーティの話では、この建物のオーナーは、できるだけ共用施設にロボットを使いたくないという方針を掲げているらしい。そのため、住人が交代で掃除を行うようになっているということだった。未来の暮らしは自動化されたことも多いが、「セルフ化」されたこともまた多いのだと知った瞬間だった。
(続く)
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