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「AI×BI×ヒューマノイド 30年後のリアル」第29話 野菜工場

3番ゲートで待っていた無人の2人乗りコミューターに乗り込むと、車両は山の方へと静かに動き出した。すると、目の前には商業施設の裏手に広がる広大な温室が現れた。

「この温室は観光者向けの農園で、野菜や果物の収穫を楽しむことができます。」
車内に響くアナウンスの声が、説明を淡々と続ける。

温室の先には森が広がり、道は次第に急な坂道へと変わっていった。その先で、眼下に大きな倉庫のような建物群が広がっている。平たい建物が規則正しく並んでいて、その1つ1つが奥行き100メートルはありそうだ。

「あれは垂直農業を行う施設です。少ない面積で効率的に大量の収穫を実現しています。」
またしてもアナウンスが補足する。その建物群は温度や湿度が高度に管理されており、衛生上の理由で作業はすべてロボットが担っているという。人間がバイキンを持ち込む可能性があるから立ち入り禁止とは、なんとも時代が進んだものだ。隣接する建物は加工工場で、収穫物を食品3Dプリンター用のチューブに加工しているとのことだ。

「この農場では周辺都市で消費される野菜の82%を供給しています。」
効率化された栽培と流通システムに感心するしかなかった。

さらに丘の上には、厳重なセキュリティで守られたドーム型の建物が見えた。そこは種苗センターで、この農場で扱う種や苗を管理しているという。貴重な遺伝子資源が狙われる危険があるため、特に厳重な警備が必要なのだそうだ。

海の方を見下ろすと、これまた巨大な施設が目に入った。タカシの農場と提携している企業の養殖場で、魚介類を生産しているとのことだ。環境保全や食の安全の観点から天然物の魚はもはやほとんど手に入らず、こうした施設が市場を支えている。

「田んぼが見えますね。」
アナウンスの指示で視線を戻すと、下り坂の先に広大な青い田んぼが目に入った。ここも高度な管理システムによって二期作が行われているという。

車両が管理棟と呼ばれる建物へと近づき、やがて中央のゲートをくぐった。ガラス張りのエレベーターに案内され、乗り込むと静かに上昇していく。視界が開け、周囲の広大な景色が一望できた。

そしてエレベーターのドアが開いた。目の前に広がるのは、まるでSF映画の一幕のような管制室だった。テーブルや壁には計器類が整然と並び、数台のロボットがゆっくりと動き回っている。足元から天井までガラス張りの窓が続き、外の景色がくっきりと見渡せた。僕はその光景に息を呑むしかなかった。

「ミライファームへようこそ!」

聞き覚えのある声に振り向くと、そこにはタカシとトーキーさんが立っていた。2人とも満面の笑みを浮かべ、僕を迎えてくれていた。

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