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その26)タイムリッチとマズローの段階欲求説

雇用がなくなってきてベーシックインカムになると、自分が自由に使える「可処分時間」が増える人ばかりになります。これを私は「タイムリッチ」と呼んでいます。可処分時間、増やしたいですね。

実際にタイムリッチになると何が起こるかは、現在、時間がたくさんある人を観察してみるのがヒントになるでしょう。ベーシックインカムに近い形でいちばん近いのはリタイアした年金ぐらしの人です。資産があれば資産プラス年金の暮らしになりますが、健康な高齢者の暮らしはいろいろなヒントが見えてきます。

体力維持のために運動の習慣をつけたり、旅行に行ったり、畑仕事をしたり、趣味に没頭したり、習い事を始めたり、自治会の役目を引き受けたりといったことをされている人が多いです。ということはベーシックインカムになった場合、ここに体力がある元気な若い世代も入ってくると考えるのが自然です。若い人々は何をするのでしょう。


まずはベーシックインカム社会の人々の欲求を「マズローの欲求5段階説」に当てはめてみようと思います。

『マズローの欲求5段階説』とは、アメリカの心理学者アブハム・マズローによる説です。人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低階層の欲求が満たされるとより高階層の欲求を満たそうとするというものです。

第一段階である睡眠や食事、排泄などの「生理的欲求」は満たされています。第二段階である危険を回避したり住むところがあるなど、身の安全を欲する「安全欲求」も大丈夫でしょう。

第三段階は「社会的欲求」で、社会に帰属したいという欲求です。自治体や趣味仲間など、家族の他に社会的ななにかのコミュニティに帰属して、いっしょに何かをしたいという欲求です。誰かと繋がりたい(つながっていたい)と思うことは精神的な健康維持に大切な要素となります。

第四段階は「承認欲求」です。今、これで悩んでいる人は本当に多いと思います。他者から認められたい。尊敬されたいという欲求です。主にコミュニティの中で発生すると考えられています。自分が何かをしたことが他者に影響を与え、それによって認められる。というのが一般的なプロセスです。社会的に認められるとはどういうことでしょう。

お金はどうでしょうか、お金持ちは羨ましがられるし、社会的地位もあります。庶民でもショッピングはお金で商品を買えるという自己効力感を手軽に味わえる方法の一つです。ただ、お金がなくなると自己の尊厳の消失につながる可能性があります。ベーシックインカムのみで暮らすと最低限の収入になりますから、お金以外の方法でも承認欲求を満たす必要があります。

それには「私は〜ができる」と感じられる自身の無形の財産を増やしていくことが大切と言われています。自分が所属するコミュニテイの中で役割があるということが承認欲求を満たすためにはとても大切なのです。

ベーシックインカム社会ではこの承認欲求をうまく満たそうとすること、所属する社会で自分の立ち位置があり、そこで活躍できることがかなり重要になってくると思われます。

第5段階の「自己実現欲求」は、「私が本当にしたいこと」とも言い換えることができると思います。旅行に行きたい、作家になりたい、ダンサーになりたい・・・など、自分が本当に実現したかったことを叶えようとする欲求です。若さがあれば、この部分はさらに発展するのではと考えられます。この域を楽しめる人は本当に幸せだと思います。

こうして考えていくと、紛争などで安全が保証されていないところがいかにストレスフルなのかも同時に想像できたのではないでしょうか。ベーシックインカムは戦時配給とは全く性質が異なるものです。やはり平和がいちばんですよね。

次回はさらに、タイムリッチになった若者たちがしそうなことを考えていきます。

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