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「AI×BI×ヒューマノイド 30年後のリアル」第27話 再開
トーキーさんの父親として画面に現れたのは、なんとタカシだった。30年前、「俺はネギ農家になる」と言い放ち、人生の進路を大きく変えた、あのタカシだ。
VRゴーグル越しに見えたタカシは、少し歳を取ったものの、昔と変わらない若々しい雰囲気だった。
「タツヤじゃないか?」
画面越しに彼の声が響いた。
「俺だ、タカシだよ。お前、意識が戻ったんだな!久しぶりだな。30年ぶりくらいか?お互い歳を取ったなぁ!」
その瞬間、記憶が鮮やかに蘇った。確かに、タカシはネギ農家になると言っていた。それがまさか、トーキーさんの父親だとは。
「タツヤさん、素顔モードに切り替えますか?」
アーティの案内に従い、素顔モードを有効にした。タカシの画面にぼくの顔が表示される。
「ああ、やっぱりタツヤだ!」タカシは笑顔で画面を見つめた。「なんだか話したいことが山ほどあるな。でも今日はこれくらいにしておこう。また会ったときに、じっくり話そうぜ!」
約束を交わし、通話は終了した。ふと周りを見ると、初心者テーブルのメンバーが全員こちらを見ていた。
「今回の初心者テーブル、神回ですね!」馬刺しさんが興奮気味に声を上げた。「奇跡の場面に立ち会えて感激です!」
ぼくにとっても、30年経ったこの世界を生きるための大きな手がかりを得た日だった。新しい知識と出会いが多すぎて、頭がクラクラしている。
次の自己紹介の順番はぼくだった。ぼくは目が覚めてからのことを皆に簡単に話し、時間はあっという間に過ぎた。初心者テーブルは終了の時間を迎えたが、メンバーたちと相互フォローし、再会を約束して解散した。トーキーさんには「お父さんによろしく」と告げて別れた。
その後、イベント内で使用する「シジミペイ」の残高を使い切るため、日用品や保存が効く食品、そしてひと目惚れしたシャツを購入した。
部屋に戻り、戦利品を眺めながら今日の出来事を振り返った。「いい日だったな…」と呟くと、アーティが声をかけてきた。
「SNSにタツヤさんのことと思われる投稿が7件あります。そのうち、ネガティブなものが2件です。すべて確認されますか?」
「全部見てみるよ。」
内容は初心者テーブルのメンバーからの感想がほとんどで、ぼくに好意的なものばかりだった。ネガティブな投稿は、ぼくの服装を批判するものだったが、それでも見知らぬ誰かがぼくを気にしてくれたという事実が少し嬉しかった。
そして、数日後――。
ついにタカシの農場を訪れる日がやってきた。30年ぶりに再会するタカシとどんな話をするのか。胸が高鳴る。
次はどんな未来の風景が広がっているのだろうか。
(続く)
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