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「AI x BI x ヒューマノイド 30年後のリアル」第5話

ドアの向こうに広がっていたのは、予想外に普通の長い廊下だった。まるでビジネスホテルのような無機質な空間が続いている。

「トイレは廊下の中央にあります」とアーティが案内する。

未来のトイレなんて想像もつかないが、実際に使ってみると大きな変化はない。ただ節水仕様のようで、細かい部分は自動洗浄でまかなわれ、難しい箇所はロボットが行うらしい。未来の設備に少し感心しつつ、再びアーティに案内されながらエレベーターへと乗り込む。

エレベーターを降りると、エントランスの向こうに広がるのは食堂だ。天井が高く、心地よい空間で、四人掛けのテーブルが整然と並んでいる。

「何か食べたいものは?」と尋ねるアーティに、「昔の僕が食べていたもの」と答えると、カウンターから料理がトレイに乗って出てきた。ぼくの名前が記されたプレートも添えられている。

焼き魚っぽい固形物、味噌汁に似た汁物、漬物らしきもの、柔らかめのご飯と、野菜のペーストが並んでいる。スプーンで食べるスタイルだ。流石に食べにくいので、箸を出してもらった。

「本日は和食です。今まで召し上がっていたものをもとに、栄養バランスと消化の良さを考慮して構成しています」とアーティの説明通り、見た目は懐かしいが、食べてみると微妙に違う。焼き魚に見えるが味は少し変だ。味噌汁はとろみがあり、漬物も「ぽい」ものだと感じる。

「この焼き魚、本物の魚じゃないのか?」と尋ねると、アーティは落ち着いた声で答えた。
「魚は高級品です。異常気象と人口増加で動物性タンパク質が不足し、多くは植物性タンパク質で代用されています」

そうだったのか、と腑に落ちない気分のままコーヒーを口にするが、これもどこか違和感がある。
「これも、ひょっとして…?」
「はい、コーヒーも代用品です」
これも未来の一端なのか・・・

何かしらのギャップを感じながらも、ぼくは食堂を見渡した。そこで食事をしている人たちは、ロボットによる介助が必要な人だと聞いたが、みんな普通に生活しているように見える。彼らもまた、ぼくのようにこの施設にいる理由を持っているのだろうか?

(続く)

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