2月9日
午前中まで熱が高めで、しっかり睡眠をとった。
ゾフルーザ錠が即効性を発揮したのか、午後からは起き上がっていても体力を消耗しなくなった。悪寒も完全に消えている。起きる前、血流が悪いのか指先がこわばっていた。薬は必要以上にはとらないように気をつけていて、喉や鼻腔の痛みも辛くなったので、結局夜、炎症を抑える薬も1錠だけ飲んだのだった。副作用が多少あったということだけど、しっかり効いている。
療養中はなかなか「帰り道」がないけど、次の課題を書くときがもう来ないといけない。記憶を辿ったりメモしたいくつかのことを眺め、書こうとすると、今朝の指のこわばりのようにそれぞれのイメージがうまく動いてくれない。日記と自炊はなぜか病んでいる中でもできるのに、どうやったら同じように流れてくれるんだろう。(こういうときに発揮される「別のこと」への集中力は、一体なに?)
それで課題のヒントになるかは別として、松本圭二の『ロング・リリィフ』やフェリックス・ガタリの『リトルネロ』を、読み返す。お守りのように自分の好きな感性。ただもう詩の方へ勘を引き寄せたくて、ひとしきり音読したあと、最近馴染んでいるこの日記の形式の中に、こうして流れ込んできた。
せっかくなので、それぞれ好きな一節をいくつか。
まだ夏至の太陽も薄く残っているから
少し青みがかり
水色に滲みだす部屋で
表れてしまう裸子のもの
まだ夏至の太陽も薄く残っているから
液晶と 水深と 昏い指と 民族と 唾と 地上のかげり
表れてしまう
歯型と 髪型と 体温と 重力に引き込まれて 疼く 腫れ物と 私と
ともに恐ろしく抜け落ちてゆく
卵を食べる いつも食事の音は空虚に触れてしまう
夜更けの谷に水銀燈が浮いて 心なしか少し老けてしまう
沈んでゆくものを数えるのは誰の役目だろう
冷蔵庫の波音に意識が奪われてしまうとき 扇風機の羽根音が眠気を誘うとき
沈んでゆくものたちを正しく数えなさい
いいとも、絶対だめ、保証のかぎりじゃない。型通りの資格取得者。フィラメント。ミネアポリス。鉛による封印。マチュサレム。音色がクリアになる。砂利のなかの赤いドロップ。視線が離れた。初歩的失敗。彼女はヴィラ・ジの魔術的円環の外に出る。
あいまい、狂気、シャッターを閉めてください。荒廃、航跡。すでに煤けた脈絡。裂け目。フィラメント。そんな気がしている。走行圏、あら皮。ピネイロス。友愛性なき兄弟への生成変化。母性愛。ルーシーの部屋。おまえの望みどおり自明の理をめぐって行ったり来たり。フラクタル状の島々。
ジグとザグは旅に出なくては。