【アートのミカタ30】シャガール Marc Chagall
【概要】100年前のアバンギャルド
絵画にイラスト、舞台デザインに陶芸、タペストリー、版画、ステンドグラス。さらには絵本まで。ジャンル問わずに活躍したロシア出身の画家。
さらにアウトプットが多彩なだけでなく、影響を受けたスタイル(インプット)も多彩です。
キュビズムにフォービズム、表現主義、シュルレアリズム…。
様々な前衛芸術に触発され、独自解釈から展開していたシャガールの作品は、どれも独創的でまさにアバンギャルドと言えるのではないでしょうか。
時代的にはエコール・ド・パリ(パリ派)*1)と呼ばれ、このような奇抜(古典的でない)な作品は度々見かけることとなったようです。
記念すべき(?)第30回目はこの、今からおよそ100年前に活躍した前衛芸術家、シャガールについてお話していこうと思います。
【背景】ユダヤだからと迫害された過去
シャガール本人はとても陽気な性格だったようで、おしゃべり大好きおじさん・お花や紅茶も好き・サーカス大好き(サーカスがテーマの作品も多い)なタイプなのですが、歴史背景を見ると「ユダヤ人」であることは外せないかなと思ったので、この項で特筆しました。
なぜならこの時代、丁度第一次世界大戦です。
ナチスドイツによるユダヤ人の迫害を受け、40歳くらいになるとフランスと脱出しアメリカへ亡命したりしています。40歳と言えば画家からすると結構油ののったいい時期です。そんな折、シャガールは世界情勢の影響で活躍の場を失ったり(*2)同胞の悲劇を描いた作品も残しています。
【核心】実は愛妻家で詩人に愛された陽気なおじちゃん
何故「戦争」やら「ユダヤ」の話をしたかと言えば、こうゆう陽気な話をしたかったらという節もありました。
シャガールの一番いい時期に戦争や、あと妻の死もあったためか、脂ののった時に悲しい題材が多いんです。なのでシャガールの全体像をみた時に、この時期のイメージを残したままにして置くと、全部怖く見えてしまうかもしれないと感じています。
確かに全体的に色使いが強烈ですし、題材も宗教的背景があったりとして、わかりやすく楽しいという画面ではありませんが。
しかしこの悲しい過去をスッキリまとめておけば、あとは彼の「陽気さ」や「面白み」が純粋に楽しめる作品になるかと思うのです。
シャガールの作品は、画家ではなく詩人たちだったそうです。
彼の著書『わが回想』には、作品毎に説明書きや詩的表現がいくつものっています。結構ロマンチストだったのかな?
色使いや画風は、キュビズムやフォービズムなどから影響を受けていますが、そのどこにも所属するものでなく、シャガール独自の芸術性を求めているようです。
晩年になると筆の跡が残るタッチで描くようになりますが、あの不運な時代がもたらした新しさなのでしょうか。
でもシャガールの文献を漁っても、晩年もずっと楽しそうなおじさんで不思議な人です。永遠の20才だーと70過ぎてもそんな感じで。
冒頭で書いた「アヴァンギャルド」な作風は、どんな環境も上手く自分のものにするパワーからきているのかもしれません。
__________________
ランキング
いつもたくさんのご支援・ご声援、ありがとうございます。