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アートのみかた

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図工や美術の授業が少なくなる日本。ですがどうやら世界では、サイエンス重視の意思決定では不十分だと感じ美意識を鍛える上位層がいるようです。このブログは、歴史上の偉大な画家たちをテー…
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#美術鑑賞

明治最後の浮世絵は血だらけで哀しい絵

三島由紀夫が「血みどろ絵」と形容して以来、血みどろ浮世絵と語られた月岡芳年の作品。 初めて見た時はとても怖かった。しかし、当時浮世絵は新聞や雑誌程度の役割しかなかったものに対し、月岡の浮世絵はどこか作品性を感じる。 連作「月百姿」を拝見した時は、その後ろ姿にドラマを感じました。ということで今回日曜美術館を拝見したのがきっかけで、月岡について記述しておこうかと思います🤲 「月百姿」シリーズ 54. 『名月や来てみよかしのひたい際 深見自休』明治18-25 「血まみれの絵」

【アートのミカタ30】シャガール Marc Chagall

【概要】100年前のアバンギャルド 絵画にイラスト、舞台デザインに陶芸、タペストリー、版画、ステンドグラス。さらには絵本まで。ジャンル問わずに活躍したロシア出身の画家。 さらにアウトプットが多彩なだけでなく、影響を受けたスタイル(インプット)も多彩です。 キュビズムにフォービズム、表現主義、シュルレアリズム…。 様々な前衛芸術に触発され、独自解釈から展開していたシャガールの作品は、どれも独創的でまさにアバンギャルドと言えるのではないでしょうか。 時代的にはエコール・ド・パ

【アートのミカタ29】ジョット Giotto di Bondone

【概要】暗黒時代の巨匠 何世紀も失っていた芸術に再び日の目を見せたフィレンツェの輝き。 そう賞賛したのは14世紀の小説家ボカッチィオです。(『デカメロン』というインパクト大のタイトルを書いた人) 現代の私たちにとってもっとも難解な芸術の時代であると言っても過言ではないかもしれません。なにせこの中世時代に描かれた絵画には、現代には見慣れてしまった写実性や内容の意味深さを全く感じられないからでしょう。 しかしこの中世(あえて暗黒時代と使いましたが)において、ジョットの存在はと

【アートのミカタ28】イワン・クラムスコイ Ива́н Никола́евич Крамско́й

【概要】北のモナリザを描いた人彼の名がマイナーなのは、我々日本人がまだロシア美術をあまり知らないからでしょう。 彼の代表作『見知らぬ女 Unknown Lady』を語るだけでも充分一記事かけてしまいそうなほど素敵な作品です。この邦題がとっても素敵ですし、この女性に隠されたストーリも、なんともロマンチック。 見知らぬ女 Unknown Lady 1883 ですがこのストーリーは後半にとっておき、まずはクラムスコイの生きた背景から芸術の軌跡を辿っていきましょう。

【アートのミカタ27】クリムトGustav Klimt

【概要】エロい女と金ピカ装飾前回、モローのという画家の紹介に「ファム・ファタル(悪女)」の話に触れました。今回題材とするグスタフ・クリムト(1862-1918)もまた、ファム・ファタルをテーマに掲げた作品が目立ちます。 クリムトの作品は、女性自身はとっても写実的に描かれている反面、装飾や背景がとっても平面的です。これはモローの時にも似たような感覚がありましたが、クリムトとモローの違いといえば、何と言ってもこの豪華な装飾です。 ユディト(1901) この作風に至ったウ

【アートのミカタ26】モローGustave Moreau

【概要】悪女の達人モローという画家を語るには、「サロメ」について語る必要があります。 何故ならこの神話に登場する、どちらかというと母親にそそのかされた慎ましやかな娘が、モローの手によって悪女へと堂々イメチェンを果たしたからです。 サロメとは(詳しくはリンク先をご覧ください。) 洗練者ヨハネにイビられた女性が、腹立たしさの末に「あいつの首チョンパしたいわ」と娘に告げて。その娘(サロメ)が本当に皿に男の首持ってくるというエピソードがあります。 西洋絵画は得てしてあまり喜怒哀

【アートのミカタ25】ボッティチェリ Sandro Botticelli

【概要】初期ルネサンスの巨匠彼の名は知らなくとも、この代表作に見覚えのある人は多いのではないでしょうか。15世紀前半から16世紀、正にルネサンスがノリに乗ったイタリアで活躍した画家です。ルネサンスといえば、レオナルド・ダ・ビンチより7歳年上ですね。 当時の基準からは珍しく、多彩なジャンルを描いていたマルチな画家だったそうです。宗教画・神話・寓話・肖像画・さらに文学的テーマを描いた作品など。教会や公的機関、王侯の一族など、依頼主も素晴らしいものだったようです。 現在では知ら

【アートのミカタ24】万葉集

【概要】令和で注目の和歌集新元号が決まり、その繋がりから万葉集が注目を集めています。 中国から借りてきた漢字を、自分達が使っていた口語言葉で読まれることで発展しました。その歴史の中で生まれた日本最古の歌集ですね。 「万」とありますが、実際には一万首もあったわけではなく、約4500首(全20巻、当時は巻物)なのだそうです。 さて何故、この「アートのミカタ」で歌集を取り上げるのかと言うと。 「美術」という言葉は元々輸入されたものです。西洋では人々の意識統一のために宗教を使い、

【アートのミカタ22】伊藤若冲

【概要】極彩色の異端絵師2016年の若冲展では7時間待ちだったとされるほど、近年注目を集めていた絵師、伊藤若冲。少し前までは、あまり人気のある絵師だとは思いませんでしたが、日本のブームは凄まじいですね。 王道絵師たちとは打ってかわり、エキゾチックで奇妙な作風が、新しさを感じさせたのでしょうか。描写といい色使いといい、奇想芸術には圧倒されるばかりです。 今回は、そんな若冲についてまとめていきます。 なぜ美的センスをくのか。科学の発展に伴い、心を作る芸術的思考もより広く知っ

【アートのミカタ19】コシノジュンコ Junko Koshino

【人物】パリコレ学のアノ人!世界で活躍する日本人ファッションデザイナー。 林先生が驚く初耳学などでも近年テレビへの露出もされていますね。 何だろう…。あのパリコレ学を見ていると、、私がこうしてブログで毎週、何千字もかけて話している言葉より、ぎゅっと短くつら抜かれた気持ちです。恐れ多いとは理屈ではわかっていても、やっぱり悔しいなあ。 百聞は一見にしかず、かっこいいなあ。 ということで、今回はコシノジュンコさんについて書いていこうと思います。 なぜ美的

【アートのミカタ18】ヘスス・ラファエル・ソト Jesus Rafael SOTO

【概要】素直に感動できるインスタレーションエスパス ルイ・ヴィトン東京にて開催されている彼のインスタレーション「Hors-les-murs(壁を超えて)」が象徴するように、ソトの作品は「美術鑑賞」を超えた感動を与えてくれます。 その大胆な表現は、キネティック・アート作品とも呼ばれていますが、キネティック・アートにはもっと実験的な無機質な印象が私の中ではありました。ソトの作品にはそれが象徴する表現を超えた美しさや強い信念が入れ込まれているように感じます。素直に「綺麗」と思える感

アートのミカタ全集

美術が好きだけど苦手意識のある人に向けて、芸術の本質を書きながら解説していく【アートのミカタ】。 毎週書き溜めていますが、今回は目次としてご活用いただけるような記事を作成します。(随時更新) 年代順:現代 年代順:20世紀 年代順:19世紀 年代順:16~18世紀年代順:~15世紀 年代順:紀元前 ABC順(LastName)A B C DEF G H IJK LM N OPQR S TUV W XYZ

【アートのミカタ17】増田 セバスチャン Sebastian Masuda

【人物】きゃりーちゃんを支える芸術家篠原ともえ、きゃりーぱみゅぱみゅなど、日本独自の「かわいい」を発掘したアーティストです。 1995年に"Sensational Kawaii"がコンセプトのショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン以来、20年以上「かわいい」を追求し続けています。その作品は、どれも蛍光色をボリュームたっぷりに盛り付けたものばかり。 ファッショナブルな分野こそ、アートに苦手意識のある人たちには「これのどこがオシャレなのかさっぱりわからない」との声が大

【アートのミカタ16】五美大展DM

【概要】Twitterバズり案件 毎週書いているブログですが、今回はちょっと異質な題材で行こうと思います。 「五美大展」とは、多摩美術大学、女子美術大学、東京造形大学、日本大学芸術学部、武蔵野美術大学といった、東京の私立美術大学が合同で行う卒業・修了制作展です。 私はデザイン系の学科だったので、ゴビテンは関係なかったのですが。 これまで美大出身者、またはそのご家族にしか恐らく認知されていなかったであろう卒展が、今年は恐ろしく話題に上がっているようでした。 思わず二度見して