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アートのみかた

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図工や美術の授業が少なくなる日本。ですがどうやら世界では、サイエンス重視の意思決定では不十分だと感じ美意識を鍛える上位層がいるようです。このブログは、歴史上の偉大な画家たちをテー…
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#アート

グランマ・モーゼス展70代から始める素敵な画家人生

田舎のおばあちゃんが描いた絵が驚きの実績!? トルーマン大統領から表彰を受けたり、ドキュメンタリー映画がアカデミー賞ノミネート、TIME誌の表紙を飾るなど、大活躍のおばあちゃんです。 今回のnoteは実際に行った感想&ぶらぶら美術博物館の備忘録です。 アメリカの田舎で暮らす農場の主婦でした。妹の勧めで絵を描き始め、80・90歳と徐々に上達、101歳で亡くなるまでには既に国民画家として活躍するまでになりました。 人気画家になっても暮らしぶりは変わらず、展示では子供服やパッ

【アートのミカタ28】イワン・クラムスコイ Ива́н Никола́евич Крамско́й

【概要】北のモナリザを描いた人彼の名がマイナーなのは、我々日本人がまだロシア美術をあまり知らないからでしょう。 彼の代表作『見知らぬ女 Unknown Lady』を語るだけでも充分一記事かけてしまいそうなほど素敵な作品です。この邦題がとっても素敵ですし、この女性に隠されたストーリも、なんともロマンチック。 見知らぬ女 Unknown Lady 1883 ですがこのストーリーは後半にとっておき、まずはクラムスコイの生きた背景から芸術の軌跡を辿っていきましょう。

【アートのミカタ27】クリムトGustav Klimt

【概要】エロい女と金ピカ装飾前回、モローのという画家の紹介に「ファム・ファタル(悪女)」の話に触れました。今回題材とするグスタフ・クリムト(1862-1918)もまた、ファム・ファタルをテーマに掲げた作品が目立ちます。 クリムトの作品は、女性自身はとっても写実的に描かれている反面、装飾や背景がとっても平面的です。これはモローの時にも似たような感覚がありましたが、クリムトとモローの違いといえば、何と言ってもこの豪華な装飾です。 ユディト(1901) この作風に至ったウ

【アートのミカタ23】野田弘志

【概要】平成天皇の肖像画平成の世も終わりを迎え、令和に向かって期待が膨らむこの頃。 そんな中、先月3月に天皇に収められた肖像画が話題を集めています。 今回は、この写真を超えた美しさを誇る写実画家のお話をしていこうと思います。 なぜ美的センスをくのか。科学の発展に伴い、心を作る芸術的思考もより広く知ってもらいたい。 このブログは、歴史上の偉大な画家たちをテーマに、少しでも多くの人にアート思考を築くきっかけにならないかと書いています。 まずはそれぞれの画家の特徴を左脳で理解し

【アートのミカタ13】フセイン チャラヤン HusseinChalayan

【人物】動く服?光る服?腐る服?斬新で先進的な服を追い求めるファッションデザイナー。 どれもコンセプチュアルな作品ばかりで、衣食住を満たすものという以前にアートであることを強く感じさせられます。 しかし同時に、その服にこめられた思いは自己表現の一端ではなく、社会や環境を投影し訴えかけるようなデザイン思考から形成されているのではないでしょうか。 ブランド「Hussein Chalayan」現在のChalayanを立ち上げ、今もエッジの効いた服を発表し続けています。 これまで

【アートのミカタ12】ジョルジュ・スーラ Georges Seurat

【人物】新印象派の点描画家19世紀の新印象派主義の画家として知られているスーラ。 『グランド・ジャット島の日曜日の午後』が象徴的で、明るい点描画を好んで描いていた画家と言えるでしょう。 とっても若くして(31歳)亡くなってしまったのですが、それを感じさせぬほど大作を世に残してくれました。彼が髄膜炎で倒れなければ、一体どれほど大きなな功績を残していたでしょうか。 「新印象派」と名前からわかる通り、彼は印象派(*1)の影響を大きく受けていました。彼が点描に行き着いた経緯や、これ

【アートのミカタ11】ルノワール Pierre-Auguste Renoir

【人物】後期印象派の紳士的絵画「日本人に愛される歴史的画家」の一人として知られているピエール・オーギュスト・ルノワール。「舟あそびの昼食」や「雨傘」などは、ひとめみてルノワールの作品だとわかるほどに、作品の安定した素晴らしさや彼の知名度は高いと言えるでしょう。 私は彼の風合いにとても紳士的な印象を受けます。 光をいっぱいに浴びた画面に、美しい女性像。人がごった返したような画面でも何故かスッキリと見れてしまうほど配慮された構図。気遣いがスマートで、しつこくないですね。 この

【アートのミカタ10】ルドゥーテ Pierre-Joseph Redouté

【人物】貴婦人に愛されたバラの画家ナポレオンやマリー・アントワネットなど、誰もが一度は聞いたことがある貴族の下で花の絵を描いていたのが、ルドゥーテです。美しさと正確な描写力により、植物学的にも高く評価されている珍しい宮廷画家と言えるでしょう。 また現代では絶滅したとされる品種の花も描いたとされ、その価値は益々価値を高めることでしょう。 最高峰とされる『ばら図鑑』は、ルドゥーテの作風や暮らしぶりをたっぷりと含んでいます。 これまでこのブログは、首都圏中心の企画展に合わせて書

【アートのミカタ】ムンク Edvard Munch

【人物】鬱から生まれる大作 小さい頃は「ムンクの叫び」が作品名なのかと思っていました 笑 その抑圧された苦痛や不安を表現するムンクの作品の数々は、「表現主義」と呼ばれる一つの派閥を作るきっかけにもなったそうです。 しかし最初は「未完成」「薄汚れた絵」など酷評も浴びたようです。 元々精神病を患っていたムンクはどんどん鬱のドツボにはまったようですが、芸術にかける思いは精神病と相反するように大きくなっていったようです。 ムンクがどのような想いで「叫び」などの作品を仕上げたか、書

【アートのミカタ】ヘレニズム美術 Hellenism

【ギリシャ美術のオイシイトコロ】今回は普段の人物フォーカスをお休みして、芸術の起源に迫っていこうと思います。 「芸術家」という感覚は(恐らく)まだなく、哲学者が美の概念・色彩の概念を追求したり彫刻家が理想を立体に示したりした時代です。 およそBC1000年〜BC30年頃続くギリシャ時代の中で、今回は私が美術史的に魅力を感じているヘレニズム時代(ギリシャ後期/ローマにより滅ぼされるまで)の「ヘレニズム美術」を書いていきます。 主な作品として残っているのは「ミロのヴィーナス」「

【アートのミカタ】ブルーノ・ムナーリ Brouno Munari

【人物像】超ユーモアな作品だらけ20世紀に生きたミラノの美術家、ブルーノ・ムナーリ。彼を形容する名は複数に渡ります。 画家、グラフィックデザイナー、プロダクトデザイナー、教育者、研究家、芸術評論家、絵本作家…。 生涯を通じてユーモアな作品を数多く展開しています。 「役に立たない機械」や「読めない本」「時間X」など。 肩書きも多いし、作品もヘンテコなので、全体像が掴みにくい人物かもしれません。 工業デザイナーの深澤直人(無印など)は 「偉大なデザイナーがたくさんいる。しかし

【アートのミカタ】藤田嗣治 Léonard Foujita

【人物像】パリに愛された日本人パリに生きた日本人画家、藤田嗣治(つぐはる)。 おかっぱ頭と面相筆で描いた独自の画風は、フランスで高く評価され、彼の描く裸婦人などは「乳白色の肌」と呼ばれたと言います。晩年にはレオナルド(仏:レオナール)の洗礼名を与えられ、自身をレオナール・フジタと名乗るようになります。 なぜ今、美的センスを磨くのか。どうやら世界では、サイエンス重視の意思決定では不十分だと感じ美意識を鍛える人達がいるそうです。このブログは、歴史上の偉大な画家たちをテーマに、

【アートのミカタ】ジョルジュ・ルオーGeorges Rouault

【人物像】20世紀最大の宗教画家宗教画家と聞くと、無宗教の多い日本ではあまりメジャーな画家ではないかもしれません。 実際、「日本人が好きな画家ベスト5*」では、ルオーとは相反して印象派の名前が多く挙げられていました。 ルオーとは、そんな日本人が好きな印象派と同時期・同地域で活躍したアングラ画家だと思ってください。 キリストを正面から描いた代表作「聖顔」は数十点も残され、また銅版の連作「ミセレーレ」は圧巻です。 19世紀末20世紀初頭は、何と言っても大印象派ブームでした。

【アートのみかた】フェルメール Johannes Vermeer

【人物像】時代を映し撮る「光の画家」「初めて瞳に白い点を入れた画家」「美しいフェルメール・ブルー」「風俗画の価値観をひっくり返した画家」「カメラ技術に魅了された画家」など、フェルメールを説明する言葉は幅広くあります。 フェルメール以前の絵画といえば、「全体的に暗く、蝋燭の光に照らされた人物を描く」が目立っていたと思います。日本画に比べ油絵が暗く重々しいと感じるのは、長らく褐色や灰色に地塗りしたカンバスに描くものだったからという見解があるようです。また西洋が日照時間の短い地域