ブランドリニューアルを通して見えてきた、デザイナーがデザインすることの価値
2022年11月30日。
私は使命感に突き動かされるのを感じながら、パソコンに齧りついていました。
チームメンバーにリモートで指示を出しながら、自らも手を動かす。すべては、期日の差し迫ったクリエイティブの数々を、完成させるために。
私たち株式会社LA BOUSSOLE(ラブソル)は、翌12月1日に、とある発表を控えていました。
ラブソルのものづくり部門が分離独立し、新会社「株式会社Le Plan(ルプラン)」が誕生する。さらに、ものづくり部門の基幹事業であった
「Novelty Cafe(ノベルティカフェ)」のブランドリニューアルを行う。
そんな大事な日が目前に迫っていたのです。
この記事では、ノベルティカフェのブランドリニューアルを担当したデザイナー・アートディレクターの小野寺美穂が、その裏側をご紹介します。
今回のブランドリニューアルは、デザイナーがデザインをすることの価値を改めて考える機会となりました。
デザインのスキルはこの数年で一気に一般化しました。ツールの使い方やデザインのノウハウはYouTubeやネットで十分に学ぶことができるし、無料デザインツールの「Canva」を使えば大抵のものは作れてしまう。AIは日々進化し続けていて、数年前では習得にある程度の時間を要した技もワンクリックでできるようになっている。
そんな中、企業がお金を払ってまでデザイナーに依頼する意味とは。デザイナーの価値とは何なのか。必死に走り抜ける中で、ここ数年考え続けてきたことに、自分の解が見えてきました。
デザイナーとは、限られたリソースで、最大の効果を生み出すプロである
企業における発表のそばには必ず、クリエイティブがあります。発表にはいろんな意味が込められていると思います。「いつもありがとうございます」「これからもよろしくお願いします」「はじめまして」そんなメッセージが届いてほしい人に届くようにデザインをしたい。一度しかない設立や、滅多にないリニューアルのタイミングとなれば尚更です。私も、ノベルティカフェのリニューアルにあたり気合いは十分でした。
しかし、1点だけ問題がありました。それは「納期」。
何を隠そう、設立が決まったのは発表日の1ヶ月前、ノベルティカフェのブランドリニューアルに至っては、1週間前に正式決定したのです。
(そう、1週間、です。)
いつも思うのです。「なぜあと1週間早く依頼をしてくれなかったのだろう」
でも、知っているのです。いろんな事情によって、このタイミングでしか依頼できなかったということを。このような、いかんともし難い状況をなんとかし得るのが「デザイン」だと私は思います。
そもそも、デザインとはなんでしょう?
グッドデザイン賞を運営する団体でもある日本デザイン振興会は、こう定義しています。
「常にヒトを中心に考え、目的を見出し、その目的を達成する計画を行い実現化する。」
一般的にイメージされている、色や形や機能といった言葉は出てきません。あくまでも手段に過ぎないのです。目的を達成するために、限られたリソースで何ができるか。設計して実現までの道筋を考える。今回もここから始まりました。
経営者の目線の先にあるものは何か?
今回の依頼主は、ルプランの代表となった池田実加さんです。(以降、実加さん)
実加さんはこれまで、共同経営者の柴山由香さん(以降、由香さん)と共にラブソルを創り上げてきました。ものづくり部門は創業当初から基幹事業。部門の責任者である実加さんは誰よりも思いを持ってやってきたはずです。
創業から2年後の2016年に始まったサービスサイト「Novelty Cafe」も、今やラブソルにとっての生命線であり、サービスというよりは大切な戦友のような存在です。
「でらみ、1週間後にリリースすることに決めた」(でらみは私の社内での呼び名です。)
実加さんからそう聞かされた時、驚きよりも先に、「さあ、来たぞ」と思っていました。
実加さんという人は、そうなのです。いつも、ギリギリ。ギリギリになって状況がいい感じにととのってしまう、タイミングのいい(?)人であり、ギリギリになって思いついてしまうアイディアマンなのです。
しかしこれまでに何度、ギリギリに付き合わされてきたことか…!!!
愚痴のように言ってみましたが、結局のところ私は、実加さんの「ギリギリ」が好きなのだと思います。最後の最後は絶対にいいものにしてくるし、実加さんはとにかく明るくて楽しい人なので、ギリギリすらも楽しく感じてきてしまう。ちなみに私は、そんな実加さんのことを心の中で「楽しい詐欺師」と呼んでいます。
今回も申し訳なさそうに、しかし可愛げたっぷりに「リリースまでにロゴがあったらうれしいんだけど…」という実加さん。「なんでこんなにギリギリに言うんですか!」と一旦は言ってみる私なのですが、あくまでも一旦であって(笑)本当のところは事前に準備を進めていたり、次に打つべき手を考えていたりします。
ものづくり部門を独立分離して会社をつくりたい、ということは前々から聞いていたので、折に触れて根っこの部分からヒアリングは行ってきました。
リリース1週間前の時点では、クリエイティブのかたちこそないものの、大まかな構想は頭の中にありました。そこから1週間かけて、具体的なロゴをつくり上げ、バナーなどの発信を支えるツールを作っていきます。
実加さんは楽しい提案があるとアイディアがとめどなく湧いてくる方なので、提案ではとにかく、バリエーションの面白さを意識して提案していきました。時間の許す限り、とにかく膨らませて膨らませて…最後に一気に収束させていく。それが実加さんとのものづくりで、もっとも良い結果が出ると、これまでの経験でわかっていたのです。
これまでたくさんの経営者の方を、デザインでお手伝いしてきましたが、本当にタイプは様々です。実加さんのように、わくわくの種をもとにアイディアを広げていく方もいれば、例えば由香さんは横並びでまさに伴走してくださるタイプです。他にも、どーんとお任せするタイプの方、プロセスを大切にしたい方、などなど、百人百様です。その度に提案の仕方や進め方は変えていきます。
経営者がやる気になり、事業が育てば、幸せが増える
今回改めて感じたのですが、私はこの仕事が、心底大好きです。経営者の考えや思想を伝わるかたちにデザインすること。経営者が「これならやっていける!」とやる気になってしまうようなデザインをすること。これこそが私がやっていきたいことであり、デザイナーとして提供できる価値だと感じています
最終的に出来上がったノベルティカフェのロゴはこちら。実加さんにとって、わくわくするものとなったとのことで、ミッションの第一段階はクリアできたのかなと、ほっとしています。
しかし、これで終わりではありません。むしろこれからが本番です。
おそらくこれからも、実加さん以上にノベルティカフェやルプランのことを考えることはできないでしょう。しかし、経営者・池田実加のことを、デザインの力で支えたいと思う気持ちは誰にも負けません。
「事業が育てば、幸せになるひとが絶対に増える」その確信を信じて、これからも「デザイン」をしていきたいと思います。
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<実加さんが設立にあたっての思いをnoteにまとめました。ぜひこちらもお読みいただけたら嬉しいです。>
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