ドラマ「SEX EDUCATION」がノンバイナリー自認のキャラクターを通して伝えたいこと
月額制動画配信サービスの「NETFLIX」は、イギリスで制作されているドラマ「SEX EDUCATION」を配信している。2019年からシーズン1の配信が開始され、シーズン3まで配信されている。
label Xのnoteにて2022年9月4日(日)に公開した記事で同ドラマに登場するノンバイナリー自認のキャラクター2人について紹介した。
NETFLIXは、同ドラマでノンバイナリーなキャラクター「Cal」を演じるDua Salehさんのインタビュー記事を公開している。
今回は、そのインタビュー記事からCalとLaylaがどんなキャラクターなのか紹介し、制作者がノンバイナリー自認のキャラクターで視聴者に伝えたいことは何かを考えたい。
Calを演じたDua Salehさんについて
Cal役に選ばれたDua Salehさんは、俳優をする前からミュージシャンとして活動している。Duaさんは、自身のことをノンバイナリーだと認識している。ご自身のことを説明するTwitterの投稿には、「I'm a sudani non-binary artist based in minneapolis.(私は、ミネアポリスを拠点にするスーダンのノンバイナリーアーティストです)」と書かれている。
Calは、どんなキャラクターか
Calは、SEX EDUCATIONのシーズン3から登場するノンバイナリー自認のキャラクターだ。ノンバイナリーに関するシーンでCalが自分のことを「ノンバイナリー」と生徒会長のVivや校長のHopeに説明している。特にCalは、Hopeから度々制服の着用について体型に合うサイズの制服を着るように注意を受ける。私服のシーンでも体型に対してサイズの大きい服を着用している。
インタビューでDuaさんはCalの服装について、
日本語訳
Calの着こなしはとても重要で、制作陣はCalの描き方にとてもこだわっていました。
ジェンダー・フルイディティ(流動的な性の在り方)を忠実に再現するために彼の人 (Cal)の髪は、複雑な編み込みになっています。
そして彼ら(制作陣)は、Calにバギーな服、自由な形の服、快適な服の格好をさせました。
彼ら(制作陣)は常にジェンダーについて考え、Calがより自由で解放された気持ちになれるよう、配慮していました。
私は、彼ら(制作陣)は素晴らしい仕事をしたと思います。
と、話されている。
もう一人のノンバイナリー自認のキャラクターLayla
SEX EDUCATIONは、ノンバイナリーなキャラクターをCal以外にもう1人登場させた。Robbyn Holdawayさん演じるLaylaだ。Laylaは、Calとは対照的な人物として登場する。Laylaは、性教育の授業で男子生徒の教室と女子生徒の教室のどちらに行けばいいかについてのシーンでは「(自分のジェンダーのことで)問題を起こしたくない」と言う。Calがジェンダーニュートラルな更衣室を用意してほしいと校長のHopeに頼むシーンでは、HopeはLaylaの制服を着た姿のことを「校則を守った上で自分のアイデンティティを表現している」と言う。これらのことからLaylaは、自分自身がノンバイナリーであることを示したいが、制服の着用のことで問題を起こしたくないようだ。
Duaさんは、インタビューでLaylaについて以下のように話している。
日本語訳
今シーズンの注目すべき点は、Laylaというもう一人のノンバイナリのキャラクターを登場させたことです。
CalとLayla、それぞれの性格の違いや、アイデンティティをめぐる旅が描かれています。
彼の人たち(CalとLayla)が縛られることに対処したり、学校での出来事に対処したり、葛藤したり......二人はまったく違うのです。
私は、ノンバイナリーのキャラクターが一枚岩ではない(多様である)ことを示す形で描かれているのは、とても美しいと思います。
Duaさんによると、ノンバイナリー自認のキャラクターを2人(CalとLayla)にすることで、ノンバイナリー自認の人たちの価値観が1枚岩でない、つまり、多様な人たちがいることを視聴者に伝えたいようだ。
SEX EDUCATIONがCalとLaylaを通して視聴者に伝えたいことは何か
ジェンダーやセクシュアリティを扱うドラマでは、これまでセクシュアリティ(特に性的指向の中でも同性愛者)について扱うことが多かった。しかし、筆者が確認できた範囲になるが2021年からノンバイナリー自認のキャラクターが登場するドラマが制作されるようになった。その中でもティーンエイジャーといえる年齢(13歳から19歳)のキャラクターが多く登場するSEX EDUCATIONというドラマは、ノンバイナリー自認のキャラクターを2人登場させた。
10代は、自分自身のジェンダーやセクシュアリティについて考え始める人が多いと言われる年代である。その年代のキャラクターを通して、視聴者に自分自身のジェンダーについて考える機会を持ってほしいという制作陣のメッセージが込められている。
ジェンダーについて悩んだり、葛藤するのは、10代だけでなく大人になってからもあるだろう。ジェンダーに関するシーンで登場するCalとLaylaをそういった視点で見て、様々な年齢の視聴者が自身のジェンダーについて考える機会にしてほしい。
リンク
・NETFLIX「SEX EDUCATION」
https://www.netflix.com/jp/title/80197526
・NETFLIX「SEX EDUCATION」 - Meet the Actor Playing ‘Sex Education’s’ New Non-Binary Character Cal
https://about.netflix.com/en/news/meet-the-actor-playing-sex-educations-non-binary-character
記事執筆者:ハマカワアツキ
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