お嬢様ずんだもんを3DCG化した✨
みなさま、ごきげんよう。ラワイルでございます。私はMarvelous Designer(MD: CLOとコアテクノロジーを同じくするソフト)でロング丈のフレアスカートなどのお洋服を作り、可愛いキャラクターに着せて遊んでいる、いわばお嬢様の被服係でございます。
今回はおもちねぎ様のツイートを発端に話題となりましたお嬢様ずんだもんを3DCGにしました。完成した動画がこちらでございます。
要点
・刺繍を作る際は原画像から直接色域選択するよりもイラスト制作ソフト等でトレースした方がノイズが乗りにくい。
・ピン留めで演算は安定する。
・ピン留めをしてアバターを入れ替えたときはピン留めを外してつけなおす。
・0度と360度でピンタックをつくり、さらに全体にピン留めまですると、陰影がつかなくなる。
・そもそも、ピンタックのような「複数の布が重なる」状態をポリゴンベースの演算で再現するのがコスパが良いかどうかは検討を要する。
・UV展開を忘れると大変。
今回のワークフロー
1.デザイン
1日目
お嬢様ずんだもんの発端のツイートおよび着画が流れてきて可愛いと思っていたところ、急速なトレンド化によりさらに多くの二次創作絵を見ることとなったため、お嬢様ずんだもんの3DCG化を最優先に取り組む課題とした。特に、着画がアップされていたことにより私のお嬢様ずんだもんへの想像が膨らみ、解像度が上がったと思っている。
モーションはグレイ様の「服をお披露目するときのターン」にした。
今回のデザインの目的は「お嬢様ずんだもん」を「動かしてスカートがヒラヒラするのを見たい」という掛け合わせなので、「お嬢様ずんだもん」の部分は本家のaxes femmeの洋服を可能な限り再現することで目的を最大限に達成できると考えた。
2.MDにアニメーションを取り込む
1日目
ずんだもんのモデルをblenderにインポートした。例によって物理で服を着せ付けるので、中身があって本当に助かった。モデラー曰くローポリである。
MMDで目の表情を補正した。いったん髪の物理を先に焼くことにした。
3.MDで洋服を作る
2日目
ずんだもんの採寸をした。比較的等身が小さい。
デザインを捉えるために本家の服を見て平面図を描いた。その際、ずんだもんに合わせた寸法を考えた。
MDでスカートをモデリングした。
3日目
ギャザー分量を増やした。
教科書をもとに身頃原型と身頃のパターンを引いた。
4日目
着せ付けた。
Photoshopでレースのブラシをもとにテクスチャを作った。
5日目
blenderでモデリングしたボタンをMDで使用する方法を調べた。
ボタンをモデリングした。UV展開を忘れていたのであとでめんどうなことになる。
刺繍の作り方について考えた。
6日目
Substance Samplerで刺繍をデカールとして作る動画を見た。
7日目
着画をもとにPhotoshopで色域選択をすることでサスペンダーの刺繍の画像を作った。Substance Samplerでの作業よりもシミュレーションを先にすることにした。
4.MDで服を物理演算(シミュレーション)する
8日目
髪はオミットすることにした。袖と身頃が貫通するのと、襟がビチビチするのと、ピンタックが一度壊れたら二度と戻らなくて強い苛立ちを感じた。右腕捩りの角度を緩和するなど調整をした。
9日目
ブラウスのピンタックが壊れるので、ブラウスの演算をMDでやらない方法を模索した。ブラウスだけボーン・ウエイトで動かしてスカートをその上に着せ付ければよいのではないかと考えた。そのうえにサスペンダーつきスカートを着せ付けてみることにした。ビチビチした。この方法は良くないらしい。
MDアニメーションに勝つ方法を調べた。
10日目
ピンタックを中心に身頃をアバターにピン留めしたらビチビチしないようになった。その代わり、少しフレームが進むとすぐスカートが謎の力で浮き上がるようになった。
11日目
いろいろ試した。
12日目
問題が解決できなかったのでMarvelous Desginer公式Discordで聞いてみた。
13日目
レイヤーを全て0にしてみたが、解決せず。elasticの部分に変な力がかかっているようなので、それをなくすことで切り分けをしてみることにした。
14日目
スカートを削除してブラウスだけで演算した。
モーション修正のためアバターを入れ替えることがたびたびある。その際、ピン留めをそのままにしていると、ピン留め箇所がアバターに追従せずグローバルな位置で固まったまま動かないというわけである。解決策は、アバターを入れ替えたらピン留めの付け外しを行うことである。
一般に、大きな破綻が起きる際にはなんらかの不具合により無理な力がかかっていることは往々にしてあるようである。
15日目
肘が壊れたり貫通したりしやすい。原因は不明。
fpsを増やしたうえで、袖の粒子密度を5から10に変更したことで耐えるようになった。最終的に身頃との絡みを減らすために20にしたらちょっと物理がノイジーになったのが今回の妥協点。
16日目
まずはスカートだけ演算を成功させたい。手がスカートにぶつかるととてもめんどくさい。
スカートのみにおける1往復の演算に成功した。
17日目
刺繍に関して方針を立てた。
18日目
ブラウスの演算のためにモーションと粒子間隔を調整した。
19日目
袖とスカートがぶつかるので調整した。
5.blenderで物理をつけてレンダリングする
20日目
2往復するようにMMDで調整したが、手元のバージョン管理で少し混乱した。
MMD tools用に剛体の調整をした。
ブラウスの刺繍はAdobe Fresco→Substance Sampler→Substance Painterでつけた。
21日目
デカールとして刺繍をはりつけた。Substance PainterのUIと和解した。
22日目
照明やカメラの調整をした。
23日目
ピンタックの角度を360度に近くして、かつ全体をピン留めしたために陰影がつかなくなったらしい。まずはAOベイクから試したが、うまくいかないため、テクスチャに陰影を描くことにした。だが、Photoshopに慣れていないため、グラデ陰影を一部に矩形選択でつけるやり方がわからなかった。
24日目
縫い代がついているため、もとのMDの2D pattern windowと見比べながらPhotoshopのマップに陰影をつける必要があり、何度かBlenderでの見え方を試しながら編集する必要があった。
25日目
前立てに関してはメッシュの凹凸すらないわけで、ノーマルマップなしに陰影だけ描き足すので足りるかどうか怪しいと思っていた。描いてみたらなんとかなった。グラデの範囲や濃さを調整した。
マテリアルを割り当てた。
26日目
サブサーフェススキャッタリングとか、いつものPrincipled BSDF設定。いざとなれば顔の法線転写をする構えであったが、今回のずんだもんには要らなかったようである。カメラの調整。
27日目
まずいつも通り横長でレンダリングした。HIP RTのおかげかややレンダリング速度が速くなっていた印象だが、なぜかフレーム数が進むとメモリを大量に食うようになり、急激に遅くなるのはなんなんだろう。
スマホの視聴者用に縦長動画もレンダリングした。ワックスを塗った床が入るように調整。YouTube Shortsでサムネイルを選ぶにはスマホから投稿する必要があるとかいう謎仕様に苦しみながら、投稿。
動画プレビューが正方形トリミングされたため、ずんだもんの可愛いお顔が入っていないこともあり、TLで一見してわかりづらい状況となってしまった。再投稿するにしても、再レンダリングするかトリミングするか、しばし迷った。
28日目
横長動画を正方形にトリミングすればXの720*720解像度における劣化はないようなので、何度もテストをしつつ、再投稿。10,000いいねをいただけたのは私にとって初めてのことである。おもちねぎ様によるRT・引用ツイートをはじめ、多くの皆様に反応をいただけたことに改めて感謝したい。
服のディテールをアップにするとこんな感じ。裏地は透け感を出しました。
私は、服に魂が宿っていると思っています。楽しんで着てもらったり、その様子を見てもらったりすることで、お洋服が喜んでいるのではないかと想像するのです。そのようなことが実現する空間が私は好きです。
クレジット
【本家】おもちねぎ様
【洋服参照】axes femme様
【モーション】グレイ様
【モデル】ずんだもん:東北ずん子・ずんだもんPJ様 、絹井けい様
【ステージ】 古城:ケミリア様 HDRI背景:Poly Haven様
次回以降の課題
・沼らなければ20日くらいで作業が完了した計算になる。作業スピードを速めるには物理を沼らせないことと2Dお絵描き・画像編集ソフトと仲良くなることも大事だと思わされた。
・長い尺の動画を作ることを考えると、髪の衝突判定はなんとかしたいので、blender用の物理をつけられるように、MMD toolsやblenderの勉強をする
・スケーリングについて理解したうえてミク用の原型を作る。身頃のパターンの引き方について復習する。
・ロンスカ映えするモーション集を投稿
・Substance Painterで布のテクスチャを編集する
・MDで出すときに布に厚みをつける or Solidifyモディファイアを試してみる
ひらひらスカートのかわいさ 広まれ広まれ👽
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