永遠のソール・ライター京都展、私は、尽きせぬ喜びを追う旅をする。
Saul Leiter(ソウル・ライター)の写真が好きだ。
前年にコロナパニックで中止になった彼の写真展が、JR京都伊勢丹の7階にある「美術館えき」で開催されると知り、平日を狙って足を運んだ。
ソウル・ライターは人生をの大半をニューヨークのマンハッタンで過ごした。彼が写真家として活動を始めたころのニューヨークは治安も悪く、地下鉄車両はグラフィティ(落書き)で埋め尽くされていたような時代である。
2008年頃、マンハッタンに一人旅で2週間程度の滞在をしたことがある。
治安もかつてと比べると劇的に良くなったとは言え、日本の治安とは比較にならない。
到着したその日にアパートメントのテレビをつけると、マンハッタンで殺人があり、捜査中だとのニュースが流れていた。滞在中は何度もけたたましいパトカーのサイレンを聞いたし、中心地を歩けば銃を肩にかけた警察部隊らしきも見かけた。公園にはホームレスが転がっていた。
その時に見たニューヨークを一言で表現するのなら「喧噪」だ。
そんな街を撮り続けたソール・ライターの写真は、なぜか、どの作品からも「静寂」を感じる。
写真は撮影する者が見た「その瞬間」を偽りなく切り取る。彼の心には、人の波が押し寄せては様々な雑音が入り混じるにぎやかな街が、こんな風に映っていたのか。
ソール・ライターの言葉。
I see the world simply, It is a source of endless delight.
私はシンプルに世界を見ている。それは、尽きせぬ喜びの源だ。
要は、それを、どう、見るかだろ?
そう告げられているような気分になる。
「世界」は目で見るのではない。心で見るのだ。
いつの日も、美しいものは、そこにただ、静かに、美しく存在している。
そして、私が見た世界を「カタチ」に残せるのは私しかいない。
人生の残りは、彼のように「endless delight(尽きせぬ喜び)」を追う旅がいい。