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偶さか日記11(暗夜迷宮PC日記)

イラストやスタンプは全て嘉又夢了氏
文中の凌司君は氏のキャラクター。
事前に関係を組んでいます。

4月27日

久実と通った小学中学時代の同級生が、俺の求めてる速いパソコンを作れると探り当てて…山登りしてきた。
比喩じゃねぇ。ガチで登山だ。最短ハイキングコースではあったが。
材料費も工賃も出すし何か望みがあれば一つくらい叶えるから、防犯カメラの映像と顔データの突合ができるパソコンを組んでくれと頼んだら、万禮君と高尾山登りたかったんだよねと言われたんだ。
俺は鬱蒼と樹が生えてれば登山も嫌いじゃないから良いが、この同級生はどう見ても外出からして嫌ってそうなイメージだから道中の楽しみができた。
電車の中では紀藤君の人酔いか何かのせいで会話が続かなかったが、駅を降りてデカい案内地図を前にしたら紀藤君の顔付きが明るくなったから単刀直入に質問してみた。
「紀藤君、高尾山が好きなのか、登山が好きなのかドッチ?」
「ハッキリ言って俺はどっちも大して好きじゃないんだけどさ、小学校の時の自然学級に万禮君来なかったじゃん。
俺、何でか結構楽しみにしてたんだよ、万禮君と同じ班でさ。」
「へぇえええええ!」
「万禮君から連絡きて真っ先に思い出したのがソレでさ。
俺も口に出しちゃってから、何考えてんだ俺って思ったよ。
今はこんなんなのにな。」
紀藤君は85センチはありそうな自分の胴回りを白い手でさすって苦笑した。あの頃の彼は確かにシュッとしてたが、遠足が好きそうには今と同じで見えなかった。
「いや、良いんじゃねぇかな。
でも普段運動してないなら一番歩くのが短いコースにしようぜ。
団子も食えないまでに疲れちまったら勿体ねぇからさ。」
「あー、ソレ助かるよ。
帰る気力まで無くなっちゃ不味いしな。」
「ソレな。そっかー、自然学級どうだった?」
「往きはつまんなかったね。
ウチの班だけ天狗に会ってからは興奮しまくって先生困らせたけど。」
「天狗?」
「その後で行った薬王院に居るのとソックリなのに会ったんだよ。
リフトの真ん中でナカモト居たじゃん?俺一緒にリフト乗ったんだけどあいつがしおり落としてさ。
リフト止めそうになるくらい慌ててたら上から天狗がしおり持って颯爽と現れてナカに渡したんだよ。アレは格好良かった。
ナカが吃驚して口きけなかったから、俺がありがとうございますってやっとのことで言ったら、ニヤッて笑って空を蹴ってビョーンって跳んで消えちまってさ。
万禮君のおじさんだっけ?参観日とか運動会に来てた若い人、あの人に顔が似ててさ、みんな万禮君来れば良かったのになって言ってたんだよ。」
そうだった。義務教育の間はって言って久実の母方の叔父が殆どの家族参観行事に来てくれてたんだった。もう今は久実もデカくなったし、叔父も自分の家庭を持ったから疎遠になってるが、良く可愛がってくれた。叔父は普通のニンゲンだから天狗は他人の空似に違いねぇんだが、運動会に出る家族連中の中では若くて運動神経抜群だったから、ガキ共が抱くイメージ的に納得いく。
俺は日本語話者の小学生になんか擬態するのはあまりにも難し過ぎて同級生とはそんなに親しくできなかった記憶なんだが、紀藤君は俺の事をクラスの人気者だったと言って、多くの小さな想い出や当時の噂を話してくれた。
リフトの真ん中は納得した。中継器に段差があって通る時にゴトッと衝撃があるからガキなんかはビビって何かを取り落としても不思議ない感じだ。
薬王院で無遠慮な視線を感じて振り向いたら件の天狗の像と目が合って思わず噴き出した。
「ブッハ…マジで叔父さんに似てるナ。
つか、すげぇなコレ中身生きてんじゃねぇの!?」
「閉門後とかド暇な時とか自由にしてそうだよな。」
ビアマウントが営業してなかったから薬王院近くで団子を食って山頂でうどんを食ってケーブルカーで下山し、地元に戻ってから開店直後の居酒屋へ入った。
居酒屋では紀藤君が1人呼び、呼ばれたナカモト君がまた1人呼び、呼ばれたシオダ君がまた1人呼び、と最終的に11人の同窓会になった。平日突発なのに良く集まったよなぁ。
だがやっぱり此処でもみんなの記憶から消されてる同級生の存在が1人判明した。
ファッキン!9時に解散して俺はダッシュで探索に出た。
今直ぐ見つからなくても一回一回の探索がいずれ実を結ぶ。焦らねぇぞ。


4月28日

泰市チャンがロケットペンダントの俺に懸想してくれてるらしいと聞いたから、髪を下ろして泰市チャンに会いに行ったが、反応はイマイチだった。
いつもの俺に対してもそこそこは好いてくれてるから良いんだが、やっぱちょっと悔しい。
「久幸さん、もしかすると真ん中分けだから印象が違うんじゃない?」
ランチャンの推理はビンゴだった。
髪を64で分けて下ろしてみせたら、秒で泰市チャンが吸い付いた。
「久幸、ちょうかわいい。
泰市、大好き♡
小さくなったら最高。」だと。まじか。
トゥチャンに小さくなるドリンクミージュースでも作ってもらうか?

4月29日

朝食作りの為に集った厨房で凌司君が心底申し訳なさそうに詫びた。
俺「お早うさん。」
凌司「お早う。
朝から申し訳ないが悪い知らせがあるんだ。」
俺「エリカチャンが此処に同居したがってるとか?」
凌司「縁起でもない!やめてくれ!」
俺「クックック…なら大した事なさそうじゃん。
どうした?」
凌司「西田家のみならず、我が劇団螺笑門内でも君と私は恋人という事になりました。」
俺「俺じゃなくて凌司君がモテ期到来だったか!
良いとも良いとも、しっかり擬態しようぜ!」
凌司「え、いや、そんなに張り切ってもらわなくても結構なんだよ?」
俺「いんや、張り切るね。
来週になるか三十年後になるかは分からんが、いずれ吸血し合うのは確かなんだから外濠は早々に埋めとくのが最適解なんだよ、分かるかね圭凌司君。」
凌司「何キャラ…?」
俺「ま、半分冗談だが半分はガチだぜ。
直系係累に吸血衝動が起きて呼ばれたら始祖はほぼほぼソイツとまぐわう事になるからな。」
凌司「ま?ま、まぐわゥウウ?!」
ア、腰抜かした。
俺「ま、その時が来たら全ての理性が吹っ飛んで男だろーが女だろーが上だろーが下だろーが形振り構わなくなるから…ご希望なら記憶は消してやるよ。」
凌司「いや、そんな失礼な事は望まないよ。」
本当に生真面目な男だなぁ。


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