偶さか日記２０（暗夜迷宮PC日記）
イラストやスタンプは全て嘉又夢了氏
文中の凌司君は氏のキャラクター。
事前に関係を組んでいます。
主な登場人物
万禮久幸、ヒー、始祖：圭凌司のバンパイアにおける直系始祖。
圭凌司、りゅーし：万禮久幸のバンパイアにおける直系係累。
土果：久幸と凌司二人の伴侶犬。
恵玄：凌司の後天性加護精霊。トゥから贈られたカーボナードの精霊。
６月３日
直系兄弟分（始祖が同じバンパイア。）がちょうど同じ位の知覚増幅期の生徒が居るから心強いだろうと言って特別バンパイア学級に凌司君を捻じ込んで、通学クラスにオンラインで参加させてくれた。コロナ禍を越しても前例ができなかったらしいのに良く思い切ってくれたモンだぜ。感謝しか無ぇよ。
６月４日
やべぇ、タダマサ先公が再現されてる。
タダマサヒロトってのは凌司君が深夜枠のテレビドラマで演じた美術教師なんだが、やんちゃな生徒共を蹴りで躾ける前段階でナイフやら火のついた煙草やら二輪のチェーンやらを掠り喰らって、白衣やワイシャツが破れたり、ニットに穴が開いたり、ボタンが取れたりして、躾け後の休み時間や生徒の制作中に、背付き椅子に立膝で浅く腰掛けて背を丸めた崩れ切った姿勢で裁縫を始めるんだ。
あの姿がタダマサ先公の演技なんかじゃなく、凌司君の素の姿だった事を俺は今知っちまった訳だ！
誰に対しても「さん」付けの礼儀正しい、本を読む姿も絵になる男の、信じられねぇ程行儀の悪い姿勢。ギャップ萌えに吐血しそうだ。ア、鼻血出た…。
６月５日
昨夜は焦った。俺の血の匂いで凌司君の吸血衝動を誘発しかねなかったからな。
九尾のヤロウを型に嵌めるまで、異界がスッキリ消滅するまで、凌司君に血の味を覚えさせる訳にゃゆかねぇ。
異界…だけじゃなかった。俺の結界外に出た途端に凌司君の記憶がすっぽ抜けるのは相変わらずらしい。
それでも土果を散歩に結界外へ凌司君が連れて行きたがるから、俺も一緒に行ってる。
ファッキン！外での凌司君に何も変わった様子が見つけられねぇのが納得いかねぇ。
俺は洞察力のヒーなのに！一体俺は何を見落としてるんだ？
６月６日
一昨日からか。凌司君の足許が覚束なくなってて、俺は無意識の内に凌司君の首根っこを掴んだり肩を掴んだりする為に、凌司君の側を離れないのが癖になってたらしい。
ランチャンの、目はキラキラ輝いてるんだが心配そうな複雑な乙女心的な様子で自覚した。
どうやら俺は過保護になってるらしい。
仕方無ぇよな。大事なモンは大事だし、心配なモンは心配だし。
別に偽るつもりは無ぇよ。
勿論、これがラントゥチャンじゃなくて、久実だったらハナシは変わるが。アイツなら絶対に揶揄しやがるに決まってるからな。
アー、チクショウ…元気かなバカノリ。なまじっか怪異感受性が高くて何に遭ってもおかしくねぇから、凌司君が記憶を無くした日から万禮の家の連中には陽桜市内に入らせねぇようにしてるんだ。
九尾のヤロウ早く出てこねぇかな。
出てきたら皆でフクロにして異界なんざ仕舞わせるのになぁ！
６月７日
凌司君に髪とうなじの匂い嗅がれて、思わずブチ切れた。
死ぬかと思った。ザワッと全身総毛立ってバクッて心臓が跳ねて、何だアレ…ゴフッて喉が詰まってブワッて熱が顔に…集中砲火？
何だアレ何だアレ何だアレ！
凌司君の指が俺の髪に向かってゆっくり伸びた瞬間にやべぇとは思ったんだが…何だアレ…。
見てたラントゥチャンまで真っ赤になってたから、俺の反応は間違ってねぇ筈だ。