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38: 香りの魔法

22時のアロマなコラムAroma Journey
2019年〜2021年まで書き綴っていたコラム(全379記事)使用していたプラットフォームのサービス停止に伴いnoteに移設中です。

自分よりも若い子が
何の前触れもなく亡くなってしまうのは
辛いですね。


若さにかまけて、「また、いつか。」
と思っていた心に痛みが走る。

別れは、いつだって悲しい。
まだ、早いよ。って思うけど、
どうにもしようがない。

命があって、
触れられる体や心があることが、
どれほど幸せか。

何かできることは?と、
探せることがあることも
どれだけ幸せか。

施術者として、
最期まで足掻かせてもらえることが
どれだけ幸せか。と思い知る。

先に、逝っちゃうんだね。
笑顔が素敵だった。
心が綺麗だった。

そういう人が
あっという間に
天に帰ってしまうんだな。

弔いに香りを使う。
今日はそっと香りを捧げたい。


私が香りの世界へ踏み込むことになった一番のきっかけは、
祖祖父の死がきっかけでした。

10歳のとき、
祖祖父が目の前で亡くなった。

初めて人の死を見た。
その衝撃と悲しみのやり場がわからなかった。

葬儀にきてくださった方が、
私たちの悲しみが癒えるようにと、
香木の伽羅を置いていってくださった。

母から伽羅の話を聞きながら、
伽羅を焚き香りを嗅いだ。

香りが悲しみに居場所を
作ってくれたように感じた。
ちゃんと悲しめるようになった。

あの日から、
伽羅の香りを嗅ぐ度に、
祖祖父が頭を撫でてくれているような感覚になった。

初七日や、四十九日、節目節目や悲しくて眠れない時、
悲しい日に使った。
その当時の私には、悲しみという感情の近くにある香りだった。

香りは記憶と共に脳に収納される。
でも、伽羅の香りを嗅ぐと悲しみではなく、
祖祖父との平穏な日々のことをありありと思い出す。

しわくちゃで、柔らかくて、あたたかい手を思い出す。
高下駄を履いて幼稚園にお迎えに来てくれて、
手を繋いで帰った。あの手。
爪の形すら思い出せる。

香りが単に記憶を鮮明に脳に収納するだけなら、
私にとって伽羅は、
悲しみを思い出す香りになっているはずだ。

でも、思い出すのはそれじゃない。
祖祖父との何気ない日常のひとコマや会話や表情だ。

一番鮮明に思い出すのは、
幼稚園の前の桜並木の中を一緒に歩いているときのことだ。

祖祖父と手を繋いで、
指先に小さなちょっと硬いものが触って、
なんだろうと手を目の前に持ってきて見た。

私の実家はレストランをしているのだけど、
その日は多分、家族全員忙しかったのだろう。

祖祖父の指先にちょこっと付いていたのは、
フライもののパン粉で、
「おじいちゃんも駆り出されたんだなぁ。」って思いながら、
私の爪でこすってそれを取った。綺麗になった。

そんな何気ない帰り道のこと。
おじいちゃんと二人だけの帰り道のこと。

なぜ、この記憶が鮮明なのかはわからないけど、
伽羅の香りを嗅ぐと必ず思い出す。指先のパン粉。

伽羅の香りは、私の中に、
悲しい気持ちを刻んだのではなく、
美しい記憶を鮮明に残した。

確かに、祖祖父と一緒に過ごした。
という実感と記憶だ。

悲しみには悲しみの居場所を与え、
癒えていく、昇華する道を残して行った。

香りの魔法だと思う。

香りは魂を救済すると言うけれど、
本当にそうなのだろう。

少なくとも、
私にとってはそうだ。

あれから、人が亡くなる度に
香りを使っている。

香木から始まって、
今は、アロマに変わったけれど。

カバラの勉強をしていた時だろうか。
「人は亡くなると、仏さんになると言われるように、神様の世界の人になるんだよ。」と聞いた。

「人間界での命は落とすけれど、魂は浄められて仏になる。」と。

お葬式でも使われる伽羅やサンダルウッド(白檀)は、
聖木と言われ、精油の中でも聖油と言われる。

古代から神様に捧げられてきた香りで、
色々な儀式に使われてきた。

なぜ、これらの香りが儀式で使われてきたのか、
聖木が聖木と言われ、
聖油が聖油と言われる所以を実感する。

香りが私たちにもたらしてくれるものは様々だ。
働き方も様々だ。

香りは、
この世とあの世を繋ぐという。

天に登る道というのがあるのなら、
蝋燭の光と香りがそれになるのなら、
美しい光の中、香りの道を通って逝ってくれるといいな。

この香りを感じてもらえたりはするのだろうか。
誰かを見送るとき、
いつもそんな風に思いながら、
香りを捧げる。

香りと共に、
その人が心の中に刻まれ、
心の中で命を吹き返す。

そこに到るまで、
やっぱり悲しみを避けていくことはできないのだけど。

だけど、
伽羅の香りが私と祖祖父を
鮮明な記憶で繋いでくれているように、
あなたと私もすぐに繋がれるように、

そんな願いを込めて。
香りを捧げ、香りを吸い込む。

人が亡くなるのはとても悲しい。
生きていられることは
本当に奇跡なんだ。


Today’s Scents:

「伽羅」
今思うと、あの伽羅は相当額のする代物だったのではなかろうか。
なかなかのボリュームであったし、
なんなら三十年以上経った今でも実家にある。


*
愛深く、ピュアに。
あなたが目覚めるアロマテラピー
Awaken Your Sanctuary With Essential Oils
By Holistic Salon scintiller

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