保育園の時は園内で人気の男の子トップ2の二人が大好きだったし小学生の時は可愛い友達と同じ男子を好きになったりクラスで一番足が速い転校生を好きになったり中学校では同じグループの女の子の友達を好きになったり既婚者の先生に憧れてみたり
ミーハー女ここに極まれり、という感じで当時は自称恋多き女と思いつつ今考えてみれば”ちゃんと”学生をしていた時は本当に人を好きになったことはなかった。
そんな私の初恋は16歳の夏、もう高校にほとんど通えていなかった時期の話だ。
当時の私は家出をし援助交際で日銭を稼いで暮らしていた。
ファーストキスも初めても40代の白髪混じりのゲームセンターのアルバイト店員で済ませたのがこの少し前だ。
死ぬほど辛い思いをして毎日体を売っていたかというとそうではない。
むしろ、今まで時給790円で働いていて食事すらまともに食べられていなかった私にとって「こんなに簡単に毎日数万円が手に入るなんて楽だなぁ」
くらいにしか思えない毎日だった。
彼にあった日、私はいつものように勝手に姉の保険証で登録した出会い系サイトで”仕事”の募集をしていた。
「30代後半/自営業」というプロフィールの彼は丁寧ながらもさっぱりとした文章を送ってくる男だった。特にそれ以上の印象もなくいつものように淡々と”仕事”の約束を取り付けた。
当時私はスナイデルというファッションブランドにハマっていてそこで買った水色の花柄のミニワンピースにハーフアップという自分にとっての勝負服で行った。毎日毎日自分の体に数万円支払う男たちが溢れかえっていたため今では考えられないくらい自分の容姿に自信があり「今日の私もほんとにかわいいな〜」くらいの気分で出かけたのも今でも覚えている。
「”ユキ”ちゃんだよね?」
待ち合わせのコンビニの駐車場で白のプリウスからそう話しかけてきた男はやり取りの文章の丁寧さとは真反対の印象だった。
金髪で真っ黒な肌に大きめのサングラス。
私はラッキーと思っていた。なぜなら若い女特有の”悪っぽい男”に憧れている時期真っ只中だったからだ。
普通出会い系サイトのようなもので募集に乗ってくる男はオタクのような見た目のナヨナヨした奴か薄らハゲでお腹が出たいわゆるおじさんばかりだからだ。
こんなにかっこいい人と行為をしてお金がもらえる、と私はホテルに向かう助手席で心を躍らせていた。
周辺で一番値段が高くて綺麗な部屋で彼は言った。
「av女優からもらった興奮する薬があるんだけど試してみない?」
続く